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竹刀の剣士、異世界で無双する 25 村内大会 準決勝リーグ

25 村内大会 準決勝リーグ


 予選リーグが終わった次の日は、準決勝リーグである。予選リーグ各組の1位と2位を組み合わせて、10人のリーグを2つ作る。5つの試合会場をフルに使い、待ち時間を減らしてサクサクと試合を進めることにした。選手によっては、試合場を移動しながら連続で試合をすることもあり、負担は大きい。しかし、村長やグリッツさんから聞いた闘技大会の様子はもっと過酷で、時間制限なしの試合が5つ連続になることもあるという。王都大会になるともっと過酷で、1日中試合をすることもあるそうだ。一応4分と言う時間制限を設けて、引き分けもあるのだから、まだ優しいほうだろう。

 第一試合場では、リーファが防具と白いタスキをつけて準備している。予選リーグでは、リーファの試合を見ることができなかった。シラックさんの話では、力はないが、スピードと意外性を持ち味にしているらしい。どんな試合をするのだろうか。

 審判のグリッツさんが、

「始め!」

と合図する。ちなみに、この世界の闘技大会も「始め!」の合図があり、赤白の旗で勝敗を表すらしい。かなり昔の稀人が伝えたということだ。ひょっとして日本の武道家が稀人になっていたのかな?

 リーファは予選リーグ1位だったので、相手は2位の選手だ。よく見ると、北子どもグループの子らしい。確か13歳とかで、東子どもグループのランスに次いで強いと言われていた子だった。名前は、バレスと言ったか。背丈はリーファのほうが圧倒的に小さい。10歳と13歳だから、当然だろう。

 バレスが中段に構えて前に出ようとしたところ、リーファはスススッとバレスの懐に入り小さく小手を打つ。現代剣道では文句なしの一本だが、この世界では単なる牽制技だ。驚いたバレスが下がって間合いを取り直す。その動きにあわせてリーファも前に出て、もう一度小手を打つ。

「あなたの動きは、見切ったわ。私はいつでも打てるのよ。」

と言わんばかりの技である。バレスは、今度は竹刀を立てて体当たりの姿勢を作る。そして、バレスが体当たりを仕掛けようと踏み込んだとたん、リーファはバレスの右側に変化し、そのままバレスの右ひざ裏を打った。先ほどまでの軽い小手打ちとは違い、かなり強く打ったため、バレスの右ひざがくだけて姿勢が崩れる。

「ひざあり!」

ここで、グリッツさんの白旗が上がった。バレスはひざの痛みがひどいようで、二本目を放棄した。


 ほかの試合でも、上級者達は順調に勝ち進んだようだ。しかし、リーグ戦後半になると、上級者同士の試合が組まれる。ここも見どころが多い。

 最初は、狼のイシャと門番兵士のカーリンさんの試合だ。イシャは赤、カーリンさんは白のたすきをつけている。

 始めの合図の後、カーリンさんが素早く間合いを詰めてきた。そのまま、イシャの頭に竹刀を振り下ろす。しかし、イシャはカーリンさんの左側によけて、左足首を狙うそぶりを見せる。カーリンさんは、素早く左足を引いてイシャに向き直る。その瞬間、カーリンさんの竹刀が大きく左にぶれた。向き直った勢いが強すぎて、竹刀を中心に保つことができなかったのだろう。すかさずイシャは小手に噛みついた。

「小手あり!」

審判の村長が赤旗を上げる。狼が4本足で自在な足さばきを身につけたら本当に強いなあ、と感心した。森の中での戦いのときは、狼が単調な攻撃をしてくれたから何とかなったけど、今のイシャレベルの狼が群れで襲ってきたら、俺でも勝てないなあ、と思った。

 試合は二本目もイシャがとった。


 次は、赤の東子どもグループのランスと白のメイドのメリサさんの試合だ。

 メリサさん相変わらず前に出たかと思うと一歩下がるという、相手の集中力を奪う攻めを展開する。対してランスはメリサさんが前に出たときは竹刀の操作で中心を張り、メリサさんが引いたときに前に詰めるという足さばきを使う。両者ともに中段に構えているため、間合いが詰まることもなく、一足一刀の間合いを保っている。そんな攻防がしばらく続いた後、突然メリサさんが間合いを詰めた。普段なら間合いの攻防の中で、相手に大技を出させて後の先を取るのがメリサさんのスタイルである。そのパターンを破って自分から技をだしてきたのだ。それは、右足を踏み込んでの小手・胴の変形。右小手打ちのようにランスの鍔をたたく、そしてランスの右手が浮いたところをすかさず胴ではなく右脇に逆袈裟を放った。脇の下はたくさんの神経が通っているため、一撃されると手全体がしびれる。その脇の下を狙ったのだ。しかも物打ちではなく、剣先を脇の下に入れている。これにはたまらず、ランスは竹刀の右手を外した。

「脇あり!」

 審判のグリッツさんが白旗を上げた。

 二本目は、右手のしびれが取れていないランスが一発逆転を狙っての片手突きを放ったところを、メリサさんが冷静にいなして相手の右袈裟を打って勝った。


 次は、赤が門番長のグリッツさん白が村長のコサロさんの試合だ。60歳を超えていても、若いころから鍛えた筋肉は衰えていない村長。対するは現在村一番の強者と言われるグリッツさん。事実上の決勝戦のようだ。審判は俺が務めることにした。

「始め!」

と合図したが、両者とも動かない。9歩の間合いを保ったまま、お互いを睨みつけているようだ。いや、お互い動かないのではない。小刻みに前後に動きながら、相手の呼吸を計っている。

 先に動いたのはグリッツさんだ。大きくすり足で間合いを詰め、一足一刀の間合いになる。しかし、村長は相変わらず小刻みに前後に動くままだ。グリッツさんは間合いを詰めた勢いで、技を出そうとしていたのだろう。ひじをわずかに上げた。その、グリッツさんの手元が上がったところを村長は見逃さなかった。すかさず間合いを詰めて、剣先を下からグリッツさんの手元にあて、剣先を支点にして自分の竹刀を右回りに回すことで、グリッツさんの竹刀を吹き飛ばした。巻き上げ技である。こんな技は教えてないよなあ、と思いながらも、得物が無くなったのだから当然一本だ。村長の工夫に頭を下げて、白の旗を上げた。

「巻き込み、あり」

 呆然としていたグリッツさんは竹刀を拾うと、開始戦に戻ってきた。

「二本目!」

 今度は、村長さんが間合いを詰めてきた。剣先は下段を向いている。対するグリッツさんは、中段の構えのまま、少しずつ間合いを詰めている。コート中央よりグリッツさん側のところで間合いが詰まった。グリッツさんは村長の竹刀を警戒して、鍔もとに剣先をつけている。今度はグリッツさんが村長の鍔もとをたたこうと攻めてきた。そのとたん、村長は竹刀を下段のまま、グリッツさんの垂れの中央を突いた。かなり強い突きで、グリッツさんの体勢が崩れた。

「突きあり!」

俺は、白旗を上げた。この短い間の村長さんの工夫はすごいものがある。まさに、変幻自在。相手に合わせていくつもの技を繰り出す形だ。

 でも、グリッツさんもこのままでは終わらないだろう。次の試合にどんな技を出してくるか楽しみだ。



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