竹刀の剣士、異世界で無双する 24 村内大会予選リーグ その2
24 村内大会 予選リーグ戦 その2
第五会場では、メイドのメリサさんが戦っていた。相手は門番兵の一人だ。体格でも、膂力でも相手のほうがはるかに上だ。メリサさんは、二歩攻めては一歩下がるという独特の攻め方をしている。この攻め方は、パターンを読まれるとあっさりと負けるものだ。以前にそう教えたら、次の日から様々なパターンを織り交ぜるようになってきた。なんでも、相手の緊張感を感じ取って、緊張と弛緩のタイミングを計っているそうだ。緊張感を感じ取るなんて、俺でもできないよな・・と思い、とても驚いた。メイドの技術の一つだそうで、主人がお客と会談するときの緊張感に合わせて、お茶やお菓子をすすめて会談の雰囲気を主導するものだそうだ。この世界のメイド術ってすごいな、と素直に感心した。
さて試合のほうだが、メリサさんが前に出たり下がったりするのを繰り返しているため、相手が我慢できなくなったようで、大きく間合いを詰めてきた。すかさず、メリサさんも間合いを詰めながらすくみこみ、ひざを打った。現代剣道にはない技であるが、実に有効な一撃だ。終始間合いを制していたメリサさんが危なげなく勝った。
第三会場で村長の試合が始まった。村長の試合なので、第一会場の試合を止めて俺が審判に入った。赤が村長、相手の白は狩人のヨナスさん。ティングの父親だそうだ。ヨナスさんは狩人らしく、打ち気を見せずに技を出してくるところが上手い人だ。今回も中段に構えた村長に対して、ヨナスさんは脇構えを取り遠間を保っている。間合いが詰まったところで、一気に逆袈裟に仕掛ける様子だ。対して村長は、慎重に間合いを計っている。村長は、稽古を始めたころは、力任せに竹刀をたたきつけるような技が多かったが、最近では無駄に竹刀を振り回すことはせず、間合いの取り方を覚えたらしい。
「竹刀をたたきつけるのも壮快でよいが、間合いを攻めることで相手を動かすことも面白い。」
と話していた。もう、高段者の言い様である。
しかし、今日の相手のヨナスさんは狩人だ。狩人は獲物を確実に仕留めるため、何日でも気配を殺して待つことができる。また、ヨナスさんは剣道の稽古を始めてから毎日熱心に通ってきた。その稽古の中で、足さばきの可能性を感じ、待つだけでなく、いつでも仕掛けられる足の動きと、体軸や重心の取り方を身につけていた。
ヨナスさんは強い!俺は素直に思った。この人が上級者の10人に入っていないところが不思議なくらいの立ち合いだ。
2人の集中力が緊張の糸を結び、ピンと張り詰める中、最初に動いたのは村長だった。一見無造作なように大きく前に出て、両手突きを繰り出す。村長の無造作な打ち気の無さに、ヨナスさんは間合いを狂わされたようで、村長の突きを避けきることができず、竹刀を逆袈裟に斬って村長の竹刀を打ち払う。パシッと打ち合ったかと思うと、村長は右に払われた竹刀を頭上で回し、ヨナスさんの空いた右ひじを打った。
「ひじあり!」
俺は、村長の赤旗を上げた。村長は、手の内を強く締めて打ったようで、ヨナスさんは肘がしびれたのか、竹刀を握ることができないようだ。
「ヨナスさん、どうしますか?二本目を続けますか?」
俺が問いかけると、
「いや、参りました。」
と、ヨナスさんが頭を下げた。
「勝負あり!赤の勝ち!」
と宣言した。
結局予選リーグでは、俺の選んだ上級者が勝ち上がってきた。しかし、ヨナスさんのように個性あふれる技を持っている人を何人か見つけることができ、大きな収穫があった。この大会が終わったら、こういう個性あふれる人たちをさらに伸ばしていこう。村の中での競争が激しくなり、切磋琢磨するようになれば、さらに全体のレベルが上がるだろう。




