竹刀の剣士、異世界で無双する 23 村内予選リーグ その1
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23 村内大会 予選リーグその1
領都ベナランからの、ターミルと言う道場破りを打ち破ってから、1か月。村人のほとんどが基本打ちを身につけ、互角稽古も様になってきた。
そこで、村長のコサロさんと相談して、村人の現状を把握するためと、さらなるやる気を促すために、村内リーグ戦を行うことにした。100名ほどの弟子がいるので、総当たりのリーグ戦では、時間がかかりすぎること、また、逆に一発勝負のトーナメント戦では実力を発揮できないことが多いことを考えて、10名ほどのリーグを10組作り、その1位と2位を準決勝リーグで戦わせ、最終的に準決勝リーグの4位までを決勝トーナメントで戦わせることにした。
10組の予選リーグを作るのは俺の仕事。まずは、普段の稽古の様子から上級者とも呼べる10人を選ぶことにした。門番長のグリッツさん、副団長のシラックさん、南子どもグループのティングにリーファ。特にリーファは10歳の女子とは思えないスピードと思い切った技を持ち味にしている。そして東子どもグループのランス。もともと子どもグループでは最年長で、時々門番兵士と練習していただけあって、飲み込みはよく、なかなかの強さだ。ただ、門番兵仕込みの癖が抜けないところが今後の課題だろう。そのほかに、門番グループからは2人。カーリンさんとメセルナさんがいい動きをしている。
驚いたのは、あとから始めた村長のコサロさんと、メイドのメリサさんだ。コサロさんはもともと基礎体力があったが、
「わしも、もう一花咲かせようぞ。」
と稽古を始めた。60過ぎとは思えない体の動きに驚いた。そして、メリサさん。メイドなので荒事は苦手かと思っていたが、仕事での気働きがうまく働いたのか、力は強くないが常に相手の先を読むスタイルで、互角稽古でも頭角を現してきた。メリサさんが稽古着、防具を身につけ竹刀を振る姿は、綾〇は〇かさんを思い出させ、それはそれは、眼福だった。
そして、最後にイシャが立候補してきた。いや、お前は竹刀を持たないだろう、と却下しようとしたが、
「闘技大会でも、剣だけで戦うわけではない。槍術もあれば、弓術もある。素手での攻防を得意としている者もいる。我を外すことは理屈に合わぬと思うが・・・?」
と正論を吐かれてはどうしようもない。牙や爪に皮の防具をつけて、相手をケガさせないことを条件に受け入れた。
この上級者を軸にして、10組の予選リーグを作る。足さばきのうまい者、ひっかけ技のうまい者、後の先を取ることがうまい者、思い切って飛び込んでいける者など、特徴の違う者を組み合わせて1組とした、この辺りは稽古の師範代になっているグリッツさやシラックさんの意見を入れる。
広い集会場を10m四方の5つのコートに分け、審判は、俺とグリッツさん、シラックさん、コサロ村長、門番兵士のカーリンさん・メセルナさんが行う。もちろん自分の試合の時はあらかじめ俺に連絡して、おれが審判をする。記録係は、村の奥さんたちが受けてくれた。
ルールは、基本的に4分三本勝負、先に二本とった方が勝ちだ。現代剣道と違い、ひざ打ちや、袈裟切り、胸突き、左右面、ひじ打ちや脇打ちもありだ。要は、相手が試合続行不可能になればいい。なので、一本目を取られた後、二本目を放棄することも認めた。逆に、現代剣道の面打ち、胴打ちはあまり評価されない。防具で防がれるので、相手がまだ試合ができると主張するためだ。試合では、勝ち負けをわかりやすくするために赤白のたすきをつけてもらう。イシャは首に巻いてもらうことにした。
さて、第一会場の俺の左右にはイシャと門番兵士が対面する。イシャが赤で、兵士が白だ、
「始め!」
俺の声が響く。ほかのコートでも審判の声が上がる。それに合わせて気勢を上げる者、静かに相手を観察する者、色々だ。
イシャは、声を上げることなく、低い姿勢を保ったまま、じりじりと相手との間合いをつぶす。相手の兵士も自分から間合いを詰めているが、足首に咬まれないかと恐れて、竹刀を下段に構えている。間合いが詰まった。仕掛けたのは門番兵士。下段のまま、イシャの眉間を突こうと重心を前にかけた。イシャはそれを狙っていたのだろう、自分も一歩間合いを詰めながら、相手の竹刀を右前足でさばき、空いた手首に、一気に噛みついた。
「小手あり!」
俺は、すかさず赤の旗を揚げる。牙の防具と小手のおかげで、門番兵士はケガをすることはなかったが、今の攻撃は心が折れたのだろう。二本目に入ることなく、この試合はイシャの勝ちになった。
「イシャ、お見事。」
と、声をかける。
「うむ、お主の二段技とやらを試してみたのよ。」
なるほど、確かに二段技だ。それを狼特有の技に昇華している。
「うん、すごい。あれは剣道ではなく、イシャ流闘技術だ!この短期間によくあそこまで練り上げたものだ。」
「前に、お主が言っていたように、狼と人間では条件が違うからな。狼の条件で連続技を出すなら、どうしたらよいか考えたのだ。あのターミルとやらの試合が参考になった。」
なるほど、払い技を覚えたわけだ。
「しかし、竹刀の払い技と、鉄の剣相手の払い技は異なるぞ。一つ間違えば、足を切り落とされる。」
「その通りだ。そこも、お主の攻め方を参考にした。あえて、じりじりと詰め寄ることで、相手を迷わせ、竹刀の動きを見る、だったか・・。今回は見事にはまったよ。」
「流石、イシャだ。そこまで理合いを理解しているなら、言うことはない。」
俺は、イシャから目を離し、ほかの会場を見た。
第二会場ではティングが大人の村人と試合をしている。
大人は、竹刀をまっぐにティングののど元につけ、ティングをけん制している。腕と竹刀の長さの差で、圧倒的に大人が有利に見える。
「あの子どもは強いぞ。次の手をよく見ることだ。」
イシャが話したとき、ティングはかがみこみながら、相手の竹刀の下に体を滑り込ませる。そのまま、ティングの頭か背中をたたけは相手の勝ちだが、ティングは竹刀を担ぐようにして相手の竹刀に滑らせ、相手を封じる。そして、相手の足元に来た時、突然ジャンプして相手の袈裟を打った。
「袈裟あり。勝負あり。」
どうやら、ティングが勝ったようだ。あの足さばきは、よほどの稽古と度胸がないと、できるものではない。大したものだ、と感心した。
第四会場では、ランスが戦っていた。
13歳とは思えない大きな体格で、竹刀を中段に構え、すり足で少しずつ相手を追い詰めている。基本通りの良い攻めだ。間合いが詰まった時、相手が振りかぶって前に出た。やけくそのような面打ちだが、じりじりとランスに間合いを制圧されそうな状況を打開するには、よい一手だ。ランスは相手の動きを見て、足を止めてしまった。そのまま、相手の面打ちを竹刀で受け止める。ここがランスの悪い癖だ。相手が思い切った技に出てくると、思わず足を止めてしまう。鉄の剣を持ち、鎧・兜を身につけていればそれでも良い。むしろ相手に打たせて、その隙を突くこともできる。しかし、竹刀での闘技術では違う。相手が鉄の剣を持っていた場合、足を止めて受け止めた時点で負けなのだ。竹刀ごと腕を斬りとばされてしまう。
相手は、打ち込んだ勢いのまま、鍔迫り合いに持ち込む。このあたりの動きもなめらかになったなあ、と感心する。その直後、今度はランスが相手を体当たりで弾き飛ばし、自分も後ろに跳びながら、相手の袈裟を打った。見事な引き技だ。相手がじりじりと攻められ、起死回生の一発を放って気が緩んだところを見事に打ち切った。第四試合場では、ランスが順当に勝っていった。




