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竹刀の剣士、異世界で無双する 22 メリサ

PVが増えてきました。読んでくださった方々、本当にありがとうございます。

22 メリサ


 私は、ダヒトの村の村長、コサロ様のメイドのメリサです。父と母は先年他界しました。このダヒトの村は貧しい村で、若いうちは健康でも、50代になると病気になってしまう人が多いのです。そして、いったん病気になると、あっという間に死んでしまいます。仕方がない、寿命だったのだから。そう思ってはいても、家族に死なれる悲しみが減るわけではありません。幸い、私は多少見目がよいのと、気働きができるということで、コサロ様のメイド見習いになることができました。17歳の時です。でも父母の耕していた畑は、管理する者がいないだろうとのことで、コサロ様がほかの者に与えてしまいました。これからはメイドとして村長屋敷の中で暮らすのだからと言う理由で、今まで住んでいた家も家具ごと売り払われました。私は身の回りの品物と、家や家具の代金を持ってコサロ様の屋敷に部屋を与えられました。

 このような私でも、特に不幸せとは思っていませんでした。何しろダヒトの村は貧しいのです。私より厳しい境遇の村人はたくさんいます。私は、コサロ様に拾っていただいただけでも幸運でした。

 私はメイド見習いとして、メイド長のアーリーさんからお屋敷の掃除を習い、毎日ほうきと雑巾を持って働いていました。そうして1年がたったころ、私はメイド長のアーリーさんに呼ばれて、コサロ様の部屋に行きました。

「稀人が200年ぶりに現れた。屋敷の離れに住んでもらうことにした。稀人はヨウスケ殿と言う。今後はヨウスケ殿の身の回りのお世話をメリサに任せる。」

そんなことをコサロ様から言われました。

 えっ?稀人?たしか、200年ほどの昔に北のギュジリの村に現れて、鉄の使い方を教えたといわれているけど、その稀人?そんな人がここに?私は、あまりのことに混乱しました。あわあわと口をパクパクしていると、アーリーさんが声を掛けてくれました。

「突然のことで、驚いているでしょう。私もコサロ様から聞いたときには、本当に驚きました。でも、稀人と言うのは本当のようです。門番長のグリッツ様が手も足も出なかったほどの強さと聞きました。ヨウスケ様は、この村で戦い方を教えてくださるそうです。

 あなたのことは、この1年間しっかりと見させていただきました。つらい仕事であっても、いいかげんにせず、納得のいくまでやり遂げる姿を見てきました。あなたであれば、ヨウスケ様の身の回りの世話を任せることができると思いました。」

 私は、期待されているんだ。そう思ったら、なぜかやる気が心の底からこみ上げてきました。

「はい。精一杯務めます。」

気が付いたら、そう返事をしていました。


 ヨウスケ様は、とても紳士なお方でした。私は多少見目がよいので、アーリーさんのお使いで市場に行くと、ジロジロと気持ち悪い目で見られることもありました。でも、ヨウスケ様はそういう目で私を見たことはありません。また、とても若々しいお方でした。聞いたところでは、私の倍ほども年上の方のようですが、肌艶もよく、やる気にあふれているような方でした。

 私は、毎日ヨウスケ様について剣道とやらのお稽古に行きました。コサロ様の選抜で村人の100人ほどがお稽古に来ているようです。私は集会場の隅で、皆さんの荷物を片づけたり、履物をそろえたり、汗拭き用の手ぬぐいを洗ったりと色々なお世話をしていました。

 お稽古が終わった後は、ヨウスケ様のお食事を用意したり、工房への使いをしたり、ヨウスケ様の滞在される離れの掃除をしたりと、忙しく働いていました。


 そんなある日、集会場の扉が荒々しくノックされました。あわてて扉を開けたら、大柄の筋骨隆々な男性がいました。

「失礼、それがしは領都ベナランの闘技指南役、ターミルと申す。稀人のうわさを聞いて、こちらに参った次第。お取次ぎを願えるだろうか?」

筋骨隆々の男性がそういいました。

 私は、その方を前から知っていました。忘れもしない10年前、領都大会に出場した父を、一瞬で破った方でした。当時8歳だった私は、そのあまりにも一方的な試合に呆然としたものです。同時に、この人にはどうしてもかなわない、という思いを強くしたものでした。父は試合で死ぬことはなかったといっても、この敗北は大きなものでした。ダヒトの村からの、20年ぶりの領都大会出場だったのです。父への村人の期待は大きく、その分、敗北による幻滅も大きなものでした。父の名誉を奪った相手、村の期待を幻滅に変えた相手が目の前にいるのです。あれから10年たったとはいえ、相変わらず大きく筋骨隆々な体で威圧してきます。私は、一瞬大きく目を開き、ターミル様をまじまじと見てしまいました。ターミル様にとっては、10年前の領都大会での1つの試合に勝っただけでしょう。ましてや、当時8歳だった私のことなど、覚えてもいないでしょう。私の驚いた表情に一瞬首をかしげながらも、話しかけます。

「毎日この時間であれば稀人殿に会えると、村の者に聞いたのだが、取り次いではもらえないだろうか?」

 私は、はっと我に返りました。そうです。私はメイドです。お客様をお迎えするのが仕事です。でも、この方には私にとっても因縁があります。思わず、言ってしまいました。

「稀人のヨウスケ様は、今お稽古の最中です。どのようなご用件でしょうか?」

ターミル様は、私の失礼な態度にもお怒りにならず、ふむと顎を撫でられました。

「それでは、領都から来たものが、立ち合いを望んでいる、とお伝え願おうか。」

ターミル様は、ニヤリとしながらおっしゃいました。ああ、私の無礼に対して、私ではなくヨウスケ様に報復するおつもりなのですね。10年前の圧倒的な試合ぶりが思い返されました。父が、果敢に攻めたにもかかわらず、わずか一振りで首元に大剣を当てられ、父は昏倒したのです。もしも、あのようなことが再び起こったなら・・・、しかも、私の無礼のせいでヨウスケ様がケガをすることになったら・・・。私は自分の愚かさに胸がむかつきそうになりました。


 そのあとのことは、よく覚えていません。

 ヨウスケ様がターミル様と試合をすることになり、今度は圧倒的にヨウスケ様がお勝ちになられました。そのあとの解説の時も、よくわからないまま過ぎていきました。気が付いたら涙が出ていました。

 でも、一つだけはっきりしたことがありました。ヨウスケ様は、父を一瞬で破ったターミル様に何もさせないまま勝ってしまわれたのです。そして、ヨウスケ様はおっしゃいました。

「だれにでも、持ち味がある。それをうまく生かせば、強くなれる。」

と。・・・私でも?戦いの練習をしたことがない私でも、ターミル様と試合ができるようになりますか?

 気が付いたら、私も村人に交じってお稽古に参加していました。コサロ様は、私の事情を知っていてくださっているのか、何も言わず私を見て頷いてくださいました。ヨウスケ様も、少し驚いたようですが、新しい弟子は大歓迎とばかり、私の参加を認めてくださいました。

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