VS麻薬組織
例の兄ちゃんとほか6名が潜む小屋の前に俺とフェリスとカリムが到着した。
小屋は真っ暗で、地下があるのが分かる。地上に3人、地下に4人だ。地下には特に通路などはないので上を抑えれば捕獲できるだろう。
相手の配置を教えて動きを指示する。
「カリムさんが戦陣切ってもらってもいいですか?俺は背中を守ります。フェリスはもし逃げたヤツがいた場合は捕まえておいて」
「分かりましたー。 闇よ 覆え」
フェリスの足下から薄い黒い霧が発生し、建物の中に入っていく。中の連中は気付いていない。
「その魔法どんな効果なの?」
「相手の動きを感じ取る魔法です。足に絡み付いて動きを阻害したりもできます。病み魔法にすれば絡み付いた箇所から腐らせる事が出来ますねー」
「えげつねぇ…」
「いつのまにそんなバリエーション広げたんだ… じゃあ突入しますか」
カリムが双剣を出す。俺は<パーカー&バロウ>を出して何かあった時に備える。
「よっしゃ!行くか!」
「あーい」
勢い良くカリムがドアをぶち破って入る。
「何だ!?」
中にいた連中は突然の侵入者にとっさに武器を構えるが入ってきたのが俺とカリムと知って絶望した顔をする。
「ど〜も。昨日のお兄さん。僕がカリムさんとここに来た理由、話す必要あります?」
「ふざけんじゃねぇ!なんでここがバレてんだ!」
兄ちゃんの横にいたおっさんが兄ちゃんに向かってそう叫ぶ。
「Sランクですから。普通の人が出来ない人探しができるんですよ。この兄ちゃんが何かしたわけじゃないっすよ。下の連中も逃がさないんで」
「下の連中まで… おいおい、Sランク冒険者様が何の用だ?人ん家の扉壊してくれやがって。そんな事武封国でも許されねぇだろ?」
力では敵わないとわかっているので言葉による精一杯の抵抗を試みるおっさん。
今バレたとか言ってたよね。
「あぁ。何処の国でもいきなり他人の家を壊す事なんて認められねぇ。でもな、武封国でも麻薬を売るのは許されねぇんだぞぉ?」
双剣を構えてすごむカリム。おっさんは表情を動かさないが兄ちゃんは「ヒッ!」と悲鳴を上げている。
「麻薬?何の事かさっぱりわかんねぇなぁ…」
「あぁ?しらばっくれてんじゃねぇぞ!」
「証拠もねぇのに力で言う事聞かせようってのかぁ?」
「でもおじさん。このお兄さんの露店から買ったのは麻薬でしたよ?」
「そんなのコイツの問題で俺たちは関係ねぇよ!」
「ここで何してたんです?下には何があるんですか?」
「ちょっと金の貸し借りをしてただけだ。下は商売の為の倉庫だ」
「何を溜め込んでるんですかねぇ…」
「疑うんなら調べてもいいぜ!」
何か自信満々で言ってるので下に麻薬はないみたいだ。
「おじさん達は関係ないってことですね?」
「そうだ!」
「でもこのお兄さんは重要参考人なんで連れて行ってもいいですか?」
「あぁ。構わねぇよ」
「ありがとうございまーす。じゃあ下を使わせてもらいますね。一応貴方達の言葉を全部信じられるわけじゃないので兄ちゃんに話を聞く間ここにいてくれます?」
「下… 使う?」
「フェリス!この兄ちゃんから出来る限りの情報を引っ張りだせ!カリムさんの仕事は後なんで、僕とここでくつろいでて下さい」
「は〜い!」
「何する気だ?」
「フェリスの魔法で尋問しますよー」
「じゃあ、お兄さん。こっち来て下さい」
「何すんだこのアマ! 放せ!」
フェリスの力に抵抗できるはずも無く地下に引きずられていく兄ちゃん。
そして下から4人のおっさんが出てきて俺たちを見ると顔を引きつらせた。
「さぁ。逃げないで下さいね?」
両手に<魔断ち>を抜き、背中から<潜蛇>をグネグネ伸ばす。
「おい!一体なんだってんだ!」
下から出てきたおっさんが俺たちに怒鳴る。
「さっき下に連れて行った兄ちゃんが昨日麻薬を売ってましてね。武封国で麻薬を売るのは違法でしょ?だから事情聴取です。で、こんな怪しい所にいる貴方達も信用できないので事情聴取が終わるまでは残って頂こうかと。身にやましい事が無ければ問題ないでしょ?」
おっさんの一人の目が怖くなったな。襲ってくるかもしれん。
「まぁ、あんたらが関係している事は分かってますけどね。あの兄ちゃんが喋らなければ 「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!止めろ!止めてくれぇぇぇ!」 …」
下からけたたましい叫び声が聞こえてくる。
「…… こりゃ話すな…」
「おい!明らかに拷問してんじゃねぇか!」
「いや?そうとは言い切れないんじゃ無いかな?」
「おい!こんなこと許されるわけねぇだろ!」
「…っせーな…」
「あ?!何だ?!」
「うるせぇんだよ! お前ら麻薬売ってんだろ? 吐け。オラ!」
無意味な問答が面倒になったため久しぶりに<王の言葉>を発動する。
「お前!武封国で売られている麻薬について知っている事を全て話せ!」
最初の頃と違いスキルのレベルも上がっているのか抵抗される事無く一番噛み付いてきたおっさんが話し始めた。
「ここで麻薬を売っているのはドラッグ•ドールズという組織です」
その言葉を聞いた瞬間周りの連中の顔が真っ青になる。
「あれぇ〜? ドラッグ•ドールズって名前に皆さん心当たりあるみたいですねー。カリムさん。今僕はこのおっさんに<王の言葉>というスキルを使って真実を話させています。なのでここから僕が質問した事に答えた事は真実です。あと<看破>ってスキルも使っているので嘘を言ったら分かります。他の連中もやっぱり色々知ってるみたいですよ?」
「お前… もう何でも出来るんだな…」
「おい!カリム様! このガキの言う事信じるんですか?」
「当たり前だろ。もう何が出来ても驚かねぇ。取りあえず人寄越してコイツら連れて行こう」
「エストリーの情報とすり合わせて敵の規模、拠点、ブツの調達経路とか色々調べないとですねー。フェリスー。お兄ちゃん持って上がってこーい」
「はーい」
フェリスは動かない兄ちゃんを引きずって上がってきた。死んではいないみたいだ。
しかし、それを見て死んだと判断した一人が叫び声をあげて武器を抜いて突っ込んできた。
まっすぐ突っ込んでくるので<潰命>を出し思い切り下から掬い上げるようにスイングする。
突っ込んできたおっさんはそのまま打ち上げられ屋根を壊して飛んでいった。
<潰命>の効果でもう二度と地上には帰って来れないはずだ。
そのまま他の連中の前に<潰命>をドンと置く。見た目が禍々しいので敵の心を挫くのに便利だ。
皆惚けたように上を見て動かない。
「いつ落ちてくるんだ?」
そうカリムが呟いた。
「落ちてきません。永遠に上昇し続けます。そういう武器なんで」
「何だそれ… そんなん見た事ねぇ…」
「魔神を殺して手に入る装備ですからねぇ…」
「ん?何か言ったか?」
「いいえ。こっちの仕事は終わりです。早く合流しましょう。エストリー!そっちはどうなった?」
『はーい!こちらエストリーでーす。もう全員から情報を引っ張りだしたよー。かなり大きな組織みたいで皇国にも手が伸びているみたい』
「へぇ〜。そこまで広がってるのか。意外とやる事多そうだな。一回カリムさんの屋敷に戻ってくれ」
『了解!』
通信を終了する。
「エストリー達もつつがなく終わったようです。一旦戻りましょう。コイツらどうします?」
「一応牢屋があるからそこに入れて情報を引き出すさ」
「分かりました。じゃあ、よろしくお願いします」
屋敷に戻り、合流し、情報を合わせ、さらに収集したところ、この組織はメチャクチャ大きい事が分かった。というよりこの組織が麻薬を一手に扱っているらしく支部があちこちにあるらしい。皇国にも一つあってなんと人間街にあると言うから驚きだ。
「武封国の組織はそこまで広くないから俺たちで潰せると思うぜ。だからお前らは青龍の攻略に向かっても構わん」
カリムがそう言ってシルヴァレが頷く。
「いえいえ。どうせなら皆でやりましょう。青龍攻略もカリムさんやシルヴァレさんも一緒にどうです?」
「マジか?!」
「そ、それは興味深いな!」
「最初からそれを考えてましてね。皆でワイワイやりたいなって」
「四神攻略をピクニックのように捉えるなよ…」
苦笑いでカリムが言う。
「しかし、我々が全員ダンジョンに入ると街の守りや治安維持が…」
「僕の部下を用意しますよ。強力なヤツをね」
「お前が言うならもの凄いのが出てきそうだな…」
「さっさと武封国のアジトを壊滅させましょう。皆殺しでいいんですか?」
「麻薬を売った、作ったヤツは死刑。それが武封国の決まりだ。でも捕らえられたら捕らえたいな」
「製造拠点を潰しちゃえば作れなくなるよね!」
「それもそうだな。片っ端から吹っ飛ばしていこう。中にいる連中を拘束してから工場を跡形も無く吹き飛ばします」
「跡形も無く吹き飛ばすのは止めてくれ」
こうしてアジトの位置を引き出す。製造向上は3つあるようでそれぞれ離れた位置にあるようなので俺達が全部潰すことにした。
残党を拘束するのがカリム達の仕事だ。
「じゃあ、俺たちも3人ずつに分かれるか」
「馬車を用意しよう」
こうして今度は3グループに分かれての移動だ。
じゃんけんという緊張感のかけらも無い方法でチームを分け、俺はシルヴァレと一緒だ。
他にもカリムの部下が何人も一緒についてくる。結構な大所帯だ。
「敵を拘束したら出来るだけ遠くに離れて頂けます?僕らの担当する工場は大きいので大き目の攻撃をしますので」
「あぁ。分かった。そうしよう」
一気に攻め込んで敵を無力化。腕の立つ冒険者が揃っているため少しの負傷者だけで制圧を完了した。工場では麻薬が大量に保管されており原材料とおぼしき草もあった。吸い込むタイプではなく、ある液体に溶かして成分を抽出させる必要があるらしいので燃やしてもラリったりしないらしい。
シルヴァレ達が十分に離れた事を空の上から確認し、工場を吹き飛ばすために今までお蔵入りになっていた<轟爆>を使う事にする。
「派手にいくぜ!」
ッドオォォォォォォォン!!
もの凄い音と衝撃波によって工場があった場所は完全な焼け野原になっていたのであった。




