Sランク集結(一欠け)
やりたい事をやったのでカリムの屋敷に行く。
明日行くと言ったが、中に通してくれてカリムも会ってくれた。
「ずいぶん早いお帰りだな。明日の朝来るんじゃなかったのか?」
「やっぱり私と離れるのが嫌だったんですか?!」
「ぶっ殺しますよ?お姫様?」
「いやー。屋敷に関してはスムーズにいったんですが、帰り道で厄介ごとっぽい物に巻き込まれまして。支配者の貴方の意見を聞きたくて戻ってきました」
「厄介事だと?」
カリムの目が鋭くなる。
「机があって座れる所で話したいので場所を移してもいいですか?広い所は話しにくいのでNGです」
「あぁ。構わない。移動しよう」
こうして普通の客間通された。お茶と軽い物を出してもらい話を始める。
「で?何に巻き込まれたんだ?」
俺は御者のおっさんの話から露店での話までして最後に例の薬を置いた。
「中身はまだ確認してませんが恐らくこれが麻薬です。武封国では麻薬の使用が合法、もしくは黙認されていますか?」
「まさか!麻薬を売ったヤツは死刑だ!第一そんなもの冒険者が使ってダンジョン潜ったら逆に生存率を落とすから使うヤツはいないはずだが…」
「疲れを取るってキャッチコピーがいい味出してるんじゃないですか?」
「そうか… それなら手を出す馬鹿もいるかもしれねぇな…」
「やっぱり厄介事ですねー。元締めから潰しちゃいましょう」
「手伝ってくれんのか?」
「頼み事があったら言ってくれって言いましたしね!」
「青龍の攻略はどうすんだ?」
「あんなの片手間で出来ますよ」
「はぁ〜… 麻薬組織壊滅も片手間だろうな」
「いえいえ。残党を一人も残さないってのは中々骨の折れる作業ですから。そっちからも助っ人寄越して下さいね」
「あぁ、もちろんだ。じゃあ、明日の朝ここに来てくれ」
「分かりました。でも、一つお願いがあります」
「なんだ?」
「今日の晩ご飯食べさせて下さい!」
「……」
なんか、武封国でコレばっか言ってる気がするよ。
快く晩ご飯をご馳走して頂き、新たな屋敷に戻る。
執事のおじさんはデルニオーラの元へ行くらしいが俺がいなくなってから移動するという事で、お世話を引き受けてくれた。名前はアルフレッド。
俺たちの寝床を用意してもらい、風呂に案内してもらう。
その間に俺は聞いてみた。
「貴方は俺を恨んでいませんか?貴方の主を殺さなかったとはいえ冒険者に戻れない体にしてしまいました」
「デルニオーラ様から仕掛けられた戦争です。敗者になったから恨むなどおかしな話です。それにデルニオーラは元から冒険者向きの性格ではありませんでした。早く引退して武封国の政に専念して頂きたいと常に思っていましたのでゼロ様があのお方の本当に望まれる仕事を与えて下さった事にむしろ感謝しておりますよ」
「なんというか… 心の広い人なんですね」
「それを言うならゼロ様こそでしょう。教皇の命を奪ったそうですがデルニオーラ様は助命して下さいました」
「そんな褒められた事じゃない。弱者を無意味に殺さないっていう上から目線の行動だよ…」
「それでも生かしてくれたのですから。感謝申し上げます」
そう言って頭を深々と下げてきたのだった。
翌朝。予想以上に美味しい朝食でテンションが上がる。
張り切ってカリムの家に向かうとカリムとカリムのギルドに所属しているSランク冒険者シルヴァレ、そしてライデスがいた。
「おはよう、ゼロ。瓶の中身を調べてみたがお前の言った通り麻薬だった。しかも相当依存度が高いヤツだ。早速だがコレを売っている輩を捕まえたいと思う。主な助っ人はコイツらを用意させてもらった」
「師匠!お久しぶりです!勝利されたようで、おめでとうございます」
「おー!ライデスだー。ありがとな。青龍行く前に少しやる事できちゃって… 手伝ってくれんの?」
「もちろんです! シルヴァレも手を貸してくれるそうですし」
「よろしく頼むぞ。勇者殿」
「相変わらずカッコいいですねー。よろしくお願いします」
「Sランク5人で仕事か!壮観だな!」
「なんでも出来そうですねー」
「相手が少し可哀想に思えるよぉ〜」
「では例の店に行ってみるとしよう。カリムも来るか?」
「おう。俺も行くぜ!」
俺たち含め世界に7人しかいないと言われているSランク冒険者の内6人が一緒に歩いている光景に街の人間は腰を抜かしそうになっている。
「このメンツで追ったらすぐに感付かれて逃げられるんじゃないですか?」
「我々が追いかけて逃げられる実力を持っているか?そんな輩は考えられん」
「確かに…」
「とりあえず、例の麻薬を売ってる店に行くぞ!」
うい〜っす
周りから注目を浴びまくって歩きながら昨日の店に行く。
しかし、予想通り既に例の露店は存在していなかった。
「やっぱり無いな!」 「ですよね〜」
俺たちに絡まれた時点で店を畳むに決まってるよね。
でも<気配察知>があるから逃げられても問題ないので逆にアジトにでも行ってくれたら好都合と泳がせていたのだ。
「で?その店はどこだ?」
「あの空いてるスペースにありました」
「は?!いねぇのか?!」
「そりゃ私たちに絡まれてヤバいもの取られちゃったら逃げるでしょ。おじさん馬鹿なの?」
「おいおい、どうすんだ!追う前に逃げられたら流石にどうしようもないぞ!」
「落ち着けカリム。ゼロの顔を見ろ。何も考えていないわけが無いだろ」
「いや〜。予想外でした。打つ手が無いです」
「えっ!?」
「ってのは冗談で… ちゃんと計画はありますのでご心配なく」
「大人をおちょくるな!」
「つい…」
シルヴァレに怒られちゃったよ…
「俺には<気配察知>というスキルがありまして、対象の気配を覚えて追えるんですよ」
「は?!<気配察知>にそんな能力があるなんて聞いた事ねぇ!」
「神を殺せるくらいまで高めればできるようになります。ちなみに昨日店の近くにいた仲間らしき連中も補足できるんで。ちょっと探してみますね」
そう言って<下駄>で飛ぶ。最早吸血鬼であること意外は隠す必要も無くなったので存分に力を振るう事にした。
「なんだぁ?!」
「落ちてこない… どうなっているんだ?!」
年長者二人が驚いている声を下に聞きながら俺は昨日の連中を探す。
運良く2カ所に纏まっていた。その二つが敵の住処になっているっぽい。
下に降りて場所を教える。取りあえず6人いるので3人ずつに分かれる事にした。
俺とフェリスとカリム。エストリーとシルヴァレとライデスに分かれる。
エストリーには<人形化>があるのでそれで情報を引き出してもらう。
俺達の方はまぁ、どうにかなるだろう。
「じゃあ、ちゃっちゃと片付けますか。あ、エストリーにコレをあげておこう」
「ん?なぁに?」
ずいぶん前にイグノーから貰って忘れていた<心送り>を渡す。イグノーと会うという事で思い出したのだ。
忘れている人が大半だと思うので説明すると、ある程度の距離以内なら通信会話が出来るアイテムである。ちなみにそれにはついでにブラフに頼んで通信距離を飛躍的に向上させ、ボヘミアに一度だけ転移できる魔法を籠めさせた。俺が神国にいてエストリーに何か問題が起こったら転移できるようにこっそり仕掛けてある。
「これは離れた相手と会話が出来るアイテムだ。そっちが片付いたら報告してくれ」
「アイアイサー! 最近小物が増えてお洒落になってきたよ〜」
「ご主人様!私にはくれないんですか?」
「え?お前は俺と離れないから必要ないだろ?」
「えっ?! は、はい!」
「さらっと口説きやがる… いや、意識してやってるわけじゃねぇのか…」
悪党退治が始まる。




