ラストダンジョン 青龍
俺の<轟爆>の音は武封国中に響いていたらしく、軽い騒ぎになってしまった。
当然カリムからお叱りを受け謝罪をする。
他の連中は工場を破壊したりせずに中の物を出して一カ所にまとめ焼くという方法を取る予定だったらしい。
残党狩りや小さな拠点の制圧はカリムの部下がやるそうなので俺たちは青龍の攻略に向かう事にした。
「じゃあ、この国の守り用の奴らを呼びますね。 サモン シャドウ•アサシン」
シャドウ•アサシンは物の影に隠れて移動するモンスターだ。ランクはAくらい。
アサシンなので気配遮断に優れており後ろから一撃で急所を刺してくる。
移動も速く逃げられたら捕まえるのが面倒。光魔法で影を無くし退路を断つのが攻略法か。
それを20体程召還して散らばらせる。
「これで大丈夫です。では、行きましょうか」
武封国で最後になるであろうイベントに全員で出発する。
基本的に俺、フェリス、エストリーは前に出る事無く後ろからサポートすることにした。
前評判通り様々な種類のモンスターが登場してくるので連携が必要になる。
カリム、シルヴァレ、ライデスは真面目な顔しているが俺たちはワイワイやっている。
ボス部屋も基本俺たちは観戦で楽しませてもらい、年配者に疲労が見え始めたら俺たちがサクサク攻略してあげる。
「なんか… ダンジョン攻略ってこんなに簡単だったか?」
「出てくる敵が大したこと無いですからね。ライデスも強くなってくれてますし」
「ライデスの成長は本当に驚きだ。力もそうだが、周りを見る能力が以前とは比較にならない程上がっている」
「シルヴァレさんはライデスの事を昔から知ってるんですか?」
「俺を冒険者にしてくれたのはシルヴァレなのだ… 老いで昔程の力は無いが前は鬼のように強かったのです」
「まぁ、この歳でまだSランクって時点でお察しですもんね」
「君に言われてもな…」
「そうだよ。会話しながら敵倒してんじゃねぇよ。周りの奴らBとAランクのモンスターなんだぞ?」
「まぁまぁ」
ライデスの昔話やカリム達がダンジョンを攻略した時の話を聞きながら進み続ける。
1週間程で最下層に到着した。
「ふぅ… ここが最後か?」
「えぇ。恐らく中には龍がいます」
「龍!Sランクモンスターじゃないか!そんな伝説のモンスターと戦うのか!」
「ワクワクするでしょ?」
そういう事で扉を開ける。
中には予想通り白と薄い青の龍がいた。今までの四神の中で一番強いのが分かる。
「おぉ〜。奇麗ですね〜」
「どんな攻撃してくるんだろ?ちょっと試してみるね!」
エストリーが単身ボスに走っていく。
ボスは自分に向かって来る者に威嚇の声を上げ、口から雷の玉を打ち出した。
「威力はそこそこだな」
「まぁ、エストリーなら素手で弾けるでしょうねー」
「スタン効果とかあるかもしれないから迂闊に触れるのは良くないかもしれないけどな」
「あ、雨降ってきましたよ?」
頭上から少なくない量の水が降ってきた。雨雲のようなものが頭上に現れている。
すると、ボスの放った雷球がエストリーの手前に落ちるのが見えた。
「あ、これエストリー狙った攻撃じゃなくて俺たち全員を狙った攻撃じゃん」
「くそ!!」
カリムとシルヴァレは壁を蹴って水に浸からないようにし、ライデスは剣を突き立てその上に乗っている。俺はいつも通り<下駄>で浮く。ちなみにフェリスは抱えていない。
「ちょ〜!ご主人様!私は?!」
ピョンピョンしながら手を伸ばしてくるフェリス。
「良い機会だ。なんか浮く方法考えなよ」
「この状況で何言ってるんですか! ガルー! 何か無いの?!」
『私は風を纏って飛んでいたぞ?』
「え?!そんな魔法あるの?! つーか、早く教えてよ! ってアバババババ!!」
フェリス。話に気を取られて電気を喰らっている。
アイツのガルーゆずりの魔法防御は相当な物になっているのでダメージはそこまでないはず。でもシビレはするだろうが…
「フェリスー。お前は隅っこで空飛ぶ練習してろー。ほら、年長組!龍と戦える機会なんて中々ないですよ!」
「巫山戯んな!近づきたくねぇよ!お前なに浮いてんだ!下りろ!」
「下りたら攻撃喰らうじゃないですかー。まずは水をどうにかしないと雷で動き制限されますよ?あのケモ耳少女みたいに香ばしい匂いさせたくないなら何とかしては?」
「お前何とかできないのか?!」
「どうにでもできますけど、僕が手を出したらつまらないですよ…」
「こっちは命かかってんだよ!」
「幻想の魔女が龍の周りを飛んで注意を逸らしてくれているぞ!」
「いや。見た目が奇麗だから色んな角度から見たいだけだと思うけど…」
「お前らぁ!やる気出せ!」
年長者が武器を取ってボスに向かって走っていく。エストリーに気を取られているので一瞬反応が遅れたボスは懐に侵入を許してしまった。
流石に古くからの付き合いがあるので連携も素晴らしい。
しかし、それでも3人にとってはかなりの強敵であるので危ない場面では俺も手伝う。
と言っても遠くから<P&B>で撃っているだけだが。
フェリスは言われた通り角でガルーの指導のもと飛ぶ訓練をしている。
体に竜巻を纏わせて飛ぶみたいだ。これは攻撃にもなるからかなりいい飛行手段になるだろう。
あ、こけた。
「お兄ちゃん。どうする?私たちが攻撃に加わらなければボス倒せないんじゃない?」
いつのまにか俺の横に来ていたエストリーがそう尋ねる。
「そうかも知れないな… じゃあ俺は<魔断ち>で参戦するからエストリーも行くか?」
「うん! んふふー。こういうのがやりたかったんだよ〜」
俺とエストリーが着地し、僕に向かって走り出す。
「僕たちも参戦しまーす!」
「おぉ!やっとか!遠くからサポートしてもらうだけじゃ倒せねぇんだ!」
最近魔力の流れが見える延長で自分の武器に魔力を纏わせる事が出来るようになってきた。
エストリー先生の指導の賜物だ。そもそもプレイヤーは魔力を見る事は出来ないのでこの世界の住人になった証って感じがする。
というわけで<魔断ち>に魔力を纏わせて切れ味を上昇させて突っ込む。
エストリーも<魔吸の鏃>と<泡沫の衣>を装備して突っ込んでいった。
5人で連携を取りながらボスの体力を奪っていく。
主に俺とカリムの手数の多い武器で翻弄し、ライデスとシルヴァレの一撃が重い武器でダメージを蓄積させる。
エストリーは相手の魔力をじわじわと奪っており魔法防御と回復速度が下がっている。
こうしてワザと長引かせるように30分程戦い続ける。
すると、突然地面にいたボスが天井に向かって飛んだ。
「ある程度ダメージを与えたから行動パターンに変化が出たか!ここで固まってるとマズいな!なにか強力な攻撃が来る気がする!!」
ボスの体が淡い光に包まれる。そして口から光の束が発射される。
「うお!これは他の連中が危ない!エストリー!GO!」
「はぇ?! って!うわぁ〜〜」
エストリーの首根っこを掴んで光の束に投げ込む。
<泡沫の衣>で攻撃を消してもらう為だ。
しかし、エストリーを包み込んだ後もこっちにビームが迫る。
「あれ? あ! <泡沫の衣>は装備者のダメージを消す効果で攻撃その物を打ち消す効果じゃ無かったわ!」
「おい!お前がすげぇことやったから何かしてくれるのかと思って回避してねぇぞ!」
「はぁ… 神級装備使いたくなかったのに…」
仕方なく俺は<閃光>を装備して一閃する。何も存在していなかったかのようにビームが消え去ってエストリーが着地した。
「いきなり攻撃の中に放り込むとか!私を殺したいの?!」
「ごめんごめん。<泡沫の衣>の効果を勘違いしてたんだ。ライデス、弓でなんとかならないかな?」
「俺の弓はデカいので固定してじゃないと撃てないんだが…」
「そうか。ちょっと難しいな」
今度は細かい氷の槍を降らせてくるのでそれを躱し、弾いてどうするか計画を立てる。
「お兄ちゃんのグネグネする剣で切るとか、魔法で落とすとか色々あるじゃん」
「俺だけがやったらつまらないだろ?協力したいじゃん」
「何そのこだわり…」
攻撃を避けながらどうしようかと考えてると、横から最早忘れかけていた声が聞こえてきた。
「うわぁぁぁぁん!! 何?!どうなってんの?地面どっちぃぃ??!」
体に風を纏ったフェリスが体勢メチャクチャでボスに向かって突っ込んでいく。
ボスは俺たちへの攻撃を停止して近づいてくる風達磨の迎撃をしようとする。
俺たちもその光景をぼんやりと見る。
ボスは先ほどの光のビームをフェリスに向かって吐いた。
これは流石に危険か?そう思ったがなんとフェリスが纏っている風が光のビームを斬って散らし、突っ込んでいったのだ。
「あの風って魔法を斬れるんだ…」
「エストリーもミンチになっちゃうね…」
ビームを切り裂いて進み、そのままボスの頭に突っ込んだところボスの頭が消し飛んだ。
「………」
全員が声を上げることが出来ずに呆然と見る。
ボスは手加減していたとはいえそこそこの防御力を持っていた。それを消し飛ばしたのだ。
相当な威力を持っている事は容易に理解できる。
「え〜っと、終わり?」
そうエストリーが言ってすぐに
『ダンジョン青龍を制圧。貴方のギルドの新たな領地となりました』
というアナウンスが聞こえる。
トドメを刺したのがフェリスだから俺の領地になったのだろう。
「えっと… 制圧完了です。エストリー、あそこで目を回してる戦犯引っ張ってこい」
「あいあいさー!」
こうして四神最後のダンジョンは制圧成功したのだった。




