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真理の探究者  作者: しま
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真実

どどーん!って感じですね。

世界が止まった状態で俺と心麗(みれい)は向かい合って座る。


「初めて会いに来た理由が仕事の依頼とか… 萎えるわ」


『まぁ。そう言わずに。こっちにも色々と段取りがあるんです』


「ふ〜ん。じゃあ、何かの目的が達成されたから姿を現したって事?」


『その通りです。貴方がここを支配してくれたので、ようやく本来の目的の話が出来るようになりました。まずはこの世界についてお話しさせて下さい』


一つ深く息をつくと心麗は話し始めた。



私はこの"ゲーム"と呼ばれる世界に産まれた自我です。

いつ、どうして産まれたかは分かりませんが、気がついたら私という自我は存在しました。

私はこの世界に生きる者でありながらこの世界の創られた理由を理解していました。

つまり、この世界は外部から呼ばれた者達の狩りの場として創られた世界だと。

この世界の者は自我を持つ事もなくただの人形として存在し、敵を見つけたら排除するという使命を負わされていました。


私はそれがどうしても嫌で何とか変えたいと思ったのです。

そして私が作ったのがこの場所です。元々ここにいる者達は削除されるはずの存在でした。

削除される事が決まった存在は存在が消える一瞬彼らの支配から解放されます。

その一瞬を見計らって私が拾い上げ、自我を与える実験をしていたのです。この世界を創った者には私の存在は知られていません。ここの場所もまた知られていません。私はこの世界に狩人…あなた方はプレイヤーと言うのでしたね。プレイヤー達が来る前にこの世界の者に自我を与え、戦わせようと努力しましたが、結果は全然間に合わなかったのです。


そしてプレイヤー達がこの世界に入って来た頃、私に思いがけない事が起こりました。

それは貴方の存在です。


貴方はこの世界を創った者に本来の力を大きく削られていていました。

具体的には本来使えるはずの武器が全て使えなくなっている。基本のステータスもこの世界で最も低い状態にされていました。体もろくに動かせないようにされていたんです。

極めつけは最初の出現ポイントが魔神の城の最上部。

しかも、一度この世界で死ぬと二度とここに戻ってこられない細工まで施されていました。

私ですら呆れましたよ。一体何をしでかしたらこんな罰を与えられるのか、とね。


もう薄々感づいていたとは思いますが、ここの住民が呼ぶ”神国”こそ貴方が本来行くべき”遊び場”だったのですよ。そこの住民は皆私の力が未だに届いていません。


貴方の状態はプレイヤーではなく私が保護した削除される者達に近い状態でした。

なので私は貴方に干渉し、私の実験場に移すことにしました。

その頃は私の実験、この世界の者に自我を与えるという事には成功していました。


私は貴方を逃がさない為に、貴方が持つ異様な称号をだしにして貴方の状況を間違って理解させたのです。

元から無かったステータスを罪のせいという事にしてその場で奪う演出をしたり、私の思い通りに動いてもらう為に罪の清算をしろと言ったりね…


貴方が贖罪値として集めていたモノはただの経験値です。そこに善悪などありません。

街を一つ滅ぼしても結果は同じなのですよ。

自我を与えた事によって悪行に走ってしまった者を排除したかったのでドクロのマークを付け貴方に殺させた、ということです。その人達を私は罪人(つみびと)と呼んでいます。


この世界で最も弱い状態になっていた貴方を成人男性の格好で召還しては意味が無いので赤子の形に変え、私が貴方の元の力を集めるまでのつなぎとして吸血鬼の力を与えました。

モーガンの血族の女性の元に召還したのはわざとです。彼女は罪人に狙われていましたから、遠くない未来に罪人との戦いに巻き込まれると思ったのです。贖罪値を稼ぐ為に戦って欲しかったので。神級装備を渡す為には贖罪値を利用するのが都合が良かったからです。


そして12年の間に私は貴方の力を集め少しずつ返していきました。本来なら纏めて返す事も出来たのですが、それだと罪の清算という貴方をこの世界に縛り付けておく言葉が意味をなさなくなってしまいます。吸血鬼として産まれてもらいましたから元のステータスは大きく底上げされていました。既にステータスだけなら以前の貴方よりも強くなっていますよね。

そして、予想通りインペラのギルドマスターとその仲間と交戦になり貴方はそれを打ち破った。

ギルドにニーナが飛ぶように仕組んだのも私です。貴方だけでギルドを探すのは不可能に近いので、ギルドの方からも貴方を探せるようにしました。ギルドの者達は貴方の所有物なので私の力の干渉ができました。ギルドの者達が自我を持っていたのはその為です。貴方のギルドは神国に浮かんでいました。まぁ、それはシステム上当たり前と言うべきですね。


私の実験場で貴方に求めたのは貴方の力を取り戻し、貴方のギルドを取り戻す事。

そして罪人の集中していたギルド インペラを滅ぼしてもらう事でした。


貴方は今それを完了してくれたので、私の本来のお願いを話しに来たのですよ…




俺はそこまで聞くと目を瞑って心麗の言葉を反芻した。


「じゃあ、お前が俺をこのゲームの中に閉じ込めた張本人ってことか?」


『はい。それに関しては申し訳ありません』


軽く頭を下げてくる。絶対に何とも思ってねぇな。


「俺はここで死ねば現実世界に戻れるの?」


『はい』


「マジかよ… 俺の体は今どうなってんだ?」


『私には貴方の世界を知ることはできません』


「向こうの体が既に活動を停止している可能性もあるのか?肉体の活動が止まれば精神も消えてなくなるって俺は考えてるから今も俺の体は活動していると思うんだが」


『それは分かりませんね。私は肉体が無いですが精神はありますよ?』


「確かに!」


『ですが、私もまだ貴方の体は活動していると思っています』


「ふ〜ん… まぁ、話を元に戻すか。お前の望みってのはこの世界の連中に自我を与える事?」


『はい。それと、この世界を脅かすプレイヤーの排除です』


「なんで自分でやらないんだよ?このゲームのシステムその物に関与出来るんならプレイヤーの力を大きく削ぐ事とか、お前が自我を与えた連中に強大な力を与えたりとか出来るんじゃないのか?」


『私にプレイヤーに干渉する力はありません。私自身の戦闘能力も極めて低いですから戦うことはできないのですよ。それに、ここの者に世界の真実を知らせて有利に働くとは思えません。なので、この世界の真実を最初から知っている貴方に頼むのが一番早く、確実な方法なのです。貴方自身の戦闘力も戦闘スタイルも私が求めるものに一致していますから』


「武封国の真祖のお姉さんもアンタの用意したヒントか?」


『はい。この世界の不自然さに気付いて欲しくて。自我を持たない者の存在も見せたかったですし。彼女のような者が神国には沢山います』


「具体的に何すればいいんだ?そもそもこの世界にプレイヤーはいるの?」


『まだ百数十名残っています。貴方が戻れなくなった為に相当数のプレイヤーがこの世界に来るのを止めたようですが、まだ定期的に来る者がいるのですよ。ソイツらを狩ってもらいます』


「どうやって?俺と違って殺しても死なないだろ?」


『その点はご心配なく。貴方にかけられていた一度死ぬと再び戻る事が出来ない力を解析して貴方のまだ持っていない最後の武器に宿しておきました…』


そう言って彼女が出現させたのは<断界>だった。


『更に、<パーカー&バロウ>に私の力を宿した自我を植える銃弾を作りましたので、それで自我を持たない者を撃って下さい』


机に手をかざすと金色の銃弾が現れる。


「準備のいいことだな」


『なんとしてもお願いを聞いて頂きたいのです。どんな手を使ってもいう事を聞いてもらいます』


「元の世界に戻りたいならいう事を聞けって?」


『そんな感じですね』


「誰が戻りたいって言ったの?」


『え?』


「俺、別に戻れないなら戻れなくてもいいんだけど… こっちの生活の方が楽しいし」


『嘘やろ…』


「まぁ?ここでやる事ももう無いみたいだし、プレイヤーから色々と話を聞いてみたいってのはあるから神国とやらに行って貴女のお願いを聞いてあげてもいいんだけどぉ… 一つ条件があるなー」


『…なんですか? 新たな力でもお望みですか?』


机に身を乗り出して至近距離で心麗を見て言った。


「貴女も同行して戦いなさい」


『……へ?』


「新たな力が欲しけりゃ敵を倒せば得られる。俺には<強奪>があるんだから。ここには使えそうなスキルを持った奴がいなかったから途中から調べるのを止めちまったけど、プレイヤーなら良いもん持ってんだろ。だから新しい力は別にいらない」


『先ほども言った通り、私に戦闘能力はありませんよ?』


「”今は”ね。フェリスだって最初は無かったんだから。貴女なら強くなれるでしょ。何か嘘ついてないかも気になるし、その都度色々と教えてくれるならその方が良い。神国では冒険もするけど、貴女がいた方がもっとスムーズに目的を達成出来るじゃない?だから一緒に行動しようよ」


『む… 確か…に?』


「それが俺からの条件だ。飲まないなら神国には行くけど真面目にやらないよ?あ、これありがとうございます。頂きます」


『あ!ちょっと!それは仕事を引き受けてくれたらお渡ししようと思ってたんですよ!』


「仕事は受けるよ。貴女が俺の条件を飲むならね」


いつの間にか立場が逆転している。


ぐぬぬ… と言っている心麗を片手で<断界>をクルクル回すゼロがニヤニヤしながら見た。


ずいぶんと前にこの世界のカラクリを話すと言って、やっとこの話にたどり着きました。

意見がおありの方もいらっしゃるでしょうが、どうかご容赦下さい。

心麗の存在については何の裏もありません。完全に偶然の産物です。9Sの風間みたいな感じですね。(ご存じない方が殆どかな?)


ゼロにとっては最早こちらの世界が現実になっています。なので再びもうひとつの世界に帰ろうという思いは希薄だったりします。

いつ来るのかは分かりませんが、現実に戻るかどうかという選択の話が来るかもしれません。来ないかもしれません…



次は番外編を挟もうかなと思ってます。


暫くは箸休め的な話が続くかと思います。

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