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真理の探究者  作者: しま
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それぞれの戦争前

大きな戦いの前の色んな側の視点って面白いですよね。

全員が自分の勝ちを疑っていないで、いざ蓋を開けると… みたいな

ゼロと分かれて一週間とちょっとが経った。

今僕は皇国の首都グルガストにある王城にいる。


今は本当の権力者であるマーカスはおらず傀儡の王である教皇が形だけのトップだった。


この国は自分がいたころよりも更に酷くなっていた。マークスがいなくなってから無能な上層部が己の我がままを通しまくって民が虐げられているらしい。

以前と違い人間も身分が低い者は敷いたげられていると言うから驚きだ。


(この国は本当にもうダメかもしれないな… 僕が変えなければ)

そう思いながら会議の席に着く。僕の他は見た目からして無能な連中ばかりだ。


「汚らわしい奴隷の亜人がこの王城に入るなど… マークス様がアレナに連れ去られてからこの国はおかしくなりっぱなしだ!」

そう怒鳴る宰相。


「おい。貴様、国持ちだからといってこの皇国と同等などと勘違いしてはいないだろうな?貴様は我々という最強の盾と矛に隠れ勝ちをかすめ取る盗人だ!」


調子づいて他の連中も絡んでくる。


「対等と言うつもりは無いけれど僕もそれ相応のカードを用意しているんだ。ちゃんと戦えるから約束は守ってよ?」


「ふん!アレナを寄越せ、だったか?あのような枯れた国くれてやるわ!何か利益が出ればこちらにも回せ」


「はいはい」


「それで?このたびの戦争だが、ゼロと言うガキは何なんだ?」


そんな事も知らないのか…


「ふん!ただ歳の割には力を持っただけのガキだ。ホウガンで世話になっておきながらアレナと仲良くなるなどと言う恥知らずよ」


「ホウガンか… あそこの街も不要だな。騎士団長にはイグノーなどという商人の分際で街を仕切っているなどという巫山戯た者を連行するよう命令したが、いっその事滅ぼしてくれないだろうか」


「騎士団には我々の思いを上手く汲み取れる者もおりますのできっと良い結果をもたらしてくれると思いますよ?」


「そうかそうか!それは良い!これでこの国はますます発展し、周辺の汚らわしい国も奇麗になるわ!」


「教皇様。女神様より与えられし力、お使い頂けますね?」


「私がこれを使えるようになった時点でマークス様は亡くなられているのだ… それなのにアレナに戦争を仕掛けるなど…」


なんだと!! マークスが死んでいる?!


「まだそんな事を言っておられるのですか!マークス様は生きておいでです!」


「そうです!憶測で物を言ってはいけません!きっとマークス様は教皇様にご自分を救わせる為に一時的にお力を譲渡されたのです!」


そんな事を言っている。


「で?お前は直接ゼロとかいうガキを見たのだったな?一応お前の目から見た奴の力を話せ」


「えっと、彼は本当に強いよ… 神の武器は与えられていないみたいだけれど国持ちになれる実力があるからね。軽く見るのは良くない」


「貴様ごときが上から意見などするな!」


「では、不届きものの処理は貴様に任せよう。その切り札とやらを使え」


「……分かった」


「では我々の軍は主にアレナに向けて進軍させましょう」


「少しホウガンにも行かせては?完全に滅ぼすのであれば60人は少ないです」


「そうだな。蹂躙する為に200人程送ってやろう!!」


そんな会話がなされる。



———————————————————————————————————


カリノフはゼロからの手紙を見て固まっていた。


神からの御言葉で我々がインペラ皇国から戦争を仕掛けられたのは知っていた。そしてゼロ君のギルドも同様に戦争に巻き込まれている事も…

手紙にはまとめるとこう書かれていた。


『今回の戦争にアレナから兵を出す必要は無い。アレナにはこちらから軍勢を出すので心配するな』


こんな感じだ。


私は晩餐会の時彼のギルドの傘下に入るか、という神からの問いに肯定の意を示した。そう、あの時既に彼は自分のギルドを持っていたのだ。そんな素振りは全くなかったのに。

私はあの時彼の得体の知れない力について少し納得していた。

あの底の知れない力ならギルドくらい持っているだろうと。そして、その者が持つギルドにはどれ程の猛者がいるのかも想像出来る。

恐らくあのエストリーを超える者が多くいるのだ。


今回の戦争はそれほど心配していない。最早皇国を哀れむ気持ちが強い。彼を知らないばかりにあんな化物に喧嘩を売ってしまったのだから…


ノックの後で娘のシェリルが部屋に入ってくる。


「お父様、今回の戦争なのですが… あら?誰からのお手紙ですか?」


「あぁ… ゼロ君からだ」


「ゼロさんから!! 戦争の戦力の分担に関するお話ですか?!」


「まぁ、そうだな…」


「なんと書かれているんです?私たちは何処に兵を配置すれば…」


「彼は我々に兵を出す事は要求していない。全て自分の国の者で対処するそうだ」


「は?ま、また意味の分からない事を言って!!今回は戦争なのに…」


「いや、今回は巫山戯て言っているのでは無いと思う。こちらが無駄に動いて死者を出すのは迷惑とまで書かれているからな。出来れば街から出るな。だそうだ」


「い、一体どんな戦力を用意しているのでしょう…」


「もしかしたら神の軍勢がやってくるのかもしれんぞ?」


「笑えないですよ… そんな事おっしゃるといつぞやのワイバーンのように現実になるかもしれませんよ?」


少し笑いながら言ったのだがシェリルは大真面目でそう返してきた。



——————————————————————————————————


騎士団長のパウエルと騎士60人がホウガンに着いた。

街の門を守る騎士に開門をするように命令を出す。


しかしそこで現れたのはイグノーだった。後ろには多くの者が控えている。


「おぉ。我々の手を煩わせないよう既に待っていたか。結構なことだ。では貴様を犯罪者を匿った罪で首都に移送する」


そう言いイグノーを取り押さえるよう他の兵に命令する。

するとイグノーに近づいた兵が吹き飛んだ。

吹き飛ばしたのはAランク冒険者のゲイル。


「おい。こっちの話も聞かずに連行とはお行儀がなっちゃいないな」


「貴様!冒険者風情が何をする!狂っているのか?!」


剣に手をかける騎士一行。それを遮るようにゲイルが大声を出した。


「おい、イグノー!ちゃんとこの街で決めた事を言ってやんな」


イグノーが少し震えながらも決意を籠めた瞳でパウエルを睨み言った。


「貴様らが犯罪者扱いしているゼロは断じて犯罪者ではない!我々はゼロの味方であり、これ以上彼を貶めるのであれば戦いも辞さない!!」


「それは… 皇国に対する反逆か?街全体で反逆など聞いた事が無い!」


「はっきり言ってマークス様がいなくなってから首都は異常だ!彼はこの街を案じ、この街の本来の守り手であるはずの国の者が凶行に走っている。どちらを信じるかなど明らかだ!!」


「貴様ら… ふふふ。そうかそうか。分かった。貴様らは皇国に弓を引くんだな。今日の所はこれで帰ろう。日を改めてまた伺わせてもらう。次は皆殺しだ!!」


「こっちの守りが固まる前に来ないと皆殺しはそっちになるぜ?」


「ふんっ!こんな愚かな冒険者に唆されるとは!この街の者は馬鹿しかいないのか?」


「こんな腐った国にしがみついている貴様らこそ馬鹿しかいない」


「なんだと、貴様ぁ!!」


煽り耐性のない騎士が一人ゲイルに斬り掛かる。

その瞬間「グルゥゥゥゥゥゥ!!」という威嚇の声が聞こえた。


「ひっ!グリフォンだと?!」 「どうなってやがる!!」


そう狼狽える騎士達。そんな中パウエルは余裕の表情をしている。


「貴様らの頼りはこのグリフォンだな?なるほど。確かに厄介だ。こちらも相応の対応を練って挑まなければ。行くぞ!この反逆者どもを始末する準備だ!」


そう言って騎士は回れ右をして去っていく。


「ゲイル… あの男、グリフォンを見てもそれほど狼狽えなかったぞ?」


「まぁ、そんな事もあるさ。俺の目的はゼロの援軍が来るまで粘る事だからな。思ったより楽しい戦いになりそうだ」


「頼りにしているよ…」


これで皇国に完全に敵対した。もう後戻りは出来ない。

恥ずかしい話ではあるが、ゼロ君の援軍に期待しよう。



———————————————————————————————————


俺はボヘミアの外でこれから戦場に向かう奴らを見送っていた。


「ではご主人様、スーリヤ行って参ります!!」


「あぁ。目立たない仕事だがとても重要な仕事だ。頑張ってくれ」


そう言って肩を叩く。


「はい!」


元気よく返事をし、洗脳した鳥形モンスターに乗って空を飛んでいくスーリヤ。

周りには影のような実体が掴めないモンスターが大量に控えている。




「では我々も出発致します」


そう言ったのはヴァーユだ。彼らにはここからアレナに向けて進んでもらい、その間にいた敵を無力化してもらう。


「いってきます!主様!お友達見つかるかなー?」


「二人とも楽しんで仕事をしてくれ。楽しみすぎて重要な事をおろそかにしないでくれよ?まぁ、ヴァーユがいるから心配はしてないけどな」


「ほっほっほ。期待に応えられるよう頑張りましょう」


「私もやる時はやるんですよー?」


「分かってるよ。じゃあいってらっしゃい」


手を振りながら、いってきまーすと全体が見えない程に長い龍に乗って出発する二人。

その周りにも何匹もの龍や龍人が控えている。壮観だな。



「っしゃあ!!最後は俺らっすね!暴れてきます!」


そう気合いを入れたのはアグニだ。


「やり過ぎんなよ。ラクシャも。とりあえず相手の戦意を折れ。多少残酷な見せしめをしてもかまわない」


「へい!大丈夫です!俺たちの力見せてやります!」


「……ラバナ、お前の魔法はコイツらを止める為に使う事の方が多いかもしれん」


「は、はは…」


「あと連絡係頼むな」


「はい!お任せ下さい!」


ラバナにはホウガンの様子を伝えてもらう係も任せた。ブラフの転移魔法で音声をボヘミアに送り、さらにボヘミアから俺に送ってもらうのだ。

一応ヴァーユにもお願いしている。


「ゼロ様の命を忘れてはいけませんよ!」


そうお小言を言うのはプリトゥだ。


「ホウガンは俺が世話になった大切な街だ。しっかり使命をこなせ」


「「「はっ!」」」


アグニは自らを炎にして飛び立ち、ラクシャはかっこいい黒い馬に乗って走る。ラバナは一反木綿のようなよく分からない物に乗って出発した。


その後ろに着いていくのは百鬼夜行という言葉がピッタリの見るだけで恐怖を覚える異形の集団。これが目に入って敵だと認識した時点で負け確ですわ…



全員を見送ってから俺は再び指示を出す。


「俺たちはこのまま首都のグルガストに向かう。真上から乗り込んでやるんだ!」



神の力が地上に降り注ぐ。そのカウントダウンが始まった。



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