真祖
街の人から賞賛や感謝を受けて待っていると30分程で馬車がきた。
これから例の真祖に会いにいく。
「楽しみだねー」
「そうだな。神国について聞けたら嬉しいんだけどな」
「でも、狂ってしまってるんでしょ?」
「そうらしいんだよなー」
1時間ほど馬車に揺られて付いたのはそこまで広くない洋館だった。
新しく建てられたようで、まだ汚れがない。
御者からはここで待っている、くれぐれも喧嘩を売らないでくれと言われた。
そして屋敷に入る。
一室から強大な力を持つ者の気配を感じる。
一応注意してそっと扉を開けた。
そこにはデルニオーラの話通りお姉さんが足を組んで座っていた。
まず気になる事が一つ。彼女の頭上に鎖で拘束された薄いピンク結晶で出来たハート形の何かが浮かんでいたのだ。まるで罪を犯した者が浮かべるドクロのように…
そして、俺はこのお姉さんを昔にどこかで見た事がある気がしていた。
「挑戦者よ、よくここにたどり着いたわね。私の力を欲する者にはそれ相応の報いを受けてもらうわ。迷い込んだだけならすぐに立ち去りなさい」
「えーっと。こんにちは。我々は貴方と戦う気はないです」
「この屋敷は魔王を倒した者だけが入る資格のある神聖な場所。戦うのは嫌いだけれどそれが定めならば仕方が無いわ」
「だから戦う気はないです。どっかで見た事あるんだよなー。コイツ」
「え?!知り合いですか?」
「いや、なんか記憶にあるような無いような…」
「私は七つの大罪の一つ、色欲を封印する五柱の内の一本、私を殺せばあの災厄が再び起こるわ…」
「この人マジで壊れちゃってるよー…」
「ん?色欲の封印?あぁ!お前、あのイベントの奴か!!」
「もう話し合いは無駄なようですね… 立ち去るか戦うか選びなさい」
「思い出したわ!あんまり強くないくせに色んなとこ行かされるウザいお使いクエでイライラしてたから思い出せたぜ!」
「もう話し合いは無駄なようですね… 立ち去るか戦うか選びなさい」
「何か頭に浮かんでるけど、何か今の貴女の状態と関係あります?」
「もう話し合いは無駄なようですね… 立ち去るか戦うか選びなさい」
「うわー。これ完全にNPCだわ。なんか懐かしいな。まぁ、こっちの方が普通なのか?」
「普通?こんなのおかしいでしょ」
「もう話し合いは無駄なようですね… 立ち去るか戦うか選びなさい」
「よし、一回屋敷を出るぞ」
「え?!何か分かったの?」
「それを確かめる為にもう一回入る」
一度部屋を出て、屋敷からも出てもう一度入った。
ゲーム通りなら一度出れば会話がリセットされているはずだ。
またお姉さんの部屋に入る。するとお姉さんが口を開いた。
「挑戦者よ、よくここにたどり着いたわね。私の力を欲する者にはそれ相応の報いを受けてもらうわ。迷い込んだだけならすぐに立ち去りなさい」
「やっぱり… なんでコイツは自分の意思を持たされてないんだ?」
「この屋敷は魔王を倒した者だけが入る資格のある神聖な場所。戦うのは嫌いだけれどそれが定めならば仕方が無いわ」
「あー、うるさい。一回この部屋出よう。どっかに椅子があるはずだ」
そう言って部屋を出て適当な部屋に移り腰を下ろして考える。
(あの行動はゲームのNPCがやるやつだ。長い間ここにいて忘れてたがそもそもここで現実世界のように振る舞うNPCがいる事が異常なんだ。アイツと俺が今まで出会って来た連中と違うのは奴が神国から来たらしいってことだ。神国は新しく作られたステージなのかと思ってたけど違うのかもしれないな。だって神山と魔境があるなら神も魔神もそこにいるはずだ。あと、頭に浮かんでいたハートも謎だな。何かを封印されてるみたいだった。もしかして、自我を封印されているのか…?)
そこで俺は一つの仮説を思いつく。
(もしかして、プレイヤーが本来いるべき場所が神国なのでは?)
(うーん。今まで一切プレイヤーに会ってないからこんな仮説を立てたが、だったらここは何なの?って疑問が湧く… そもそもここがゲームの中なのは俺が勝手に思ってるだけでもしかしたら異世界かもしれないって可能性も無い訳じゃない…
でも、さっきのお姉さんの行動は確実にゲームのNPCだった…
なんてこった。軽くお話しするつもりがこの世界の核心に迫るかもしれない謎を呼ぶとは)
「どうしたんです?難しそうに眉間にしわ寄せて」
「ちょっとこの世界について考えてたんだよ。まぁ、よく分かんないけどな。でも、あのお姉さんに会って一つの方針は立てられた」
「方針〜?」
「そうだ。ここでダンジョン制覇したらやっぱり神国に向かう」
「………冗談でしょ?」
「マジだ。本気と書いてマジ」
「何で神国なんて行くの!」
「あのお姉さんは神国から来たんだろ?なにがあったのか気になって。それにお前らも行った事ないだろ?きっと凄い冒険が待ってるぞ?」
「シャレにならない命がけの冒険になりそうですね」
「まぁ、会えたし。帰ろうか」
こうして真祖との出会いは終わった。
今日は決闘から始まって、謎のNPCと会い疲れる1日だった。
もう少し例の吸血鬼についてはちゃんと考えた方がいいのではと第六感が囁くので色々な可能性を考えているうちに寝落ちした。
翌日。次の目標も決めた事だしさっさとダンジョン攻略をする事にした。次は白虎だ。
近接戦闘が得意なモンスターが多いらしいので防御展開の修行になるはずだ。
街の人から激励を受けてダンジョンに入る。今回は1週間を切れるように頑張ろう。
70層にボス部屋があった。ボスは虎だった。動きは速いがこっちに来るのを待って<潰命>で叩き潰しました。以上。
本当に何も無く3つ目を制覇した。二人も見違えるように強くなっている。
そうそう、俺も物を挟んで向こうの物を燃やす技術を習得した。想像でやるのがコツだったようで、頭に見えないけどそこにある物を思い浮かべると出来たのだ。
財宝を眺めて地上に戻る。再び街の人から祝福され、街中でお祭り騒ぎになった。
その頃にはすでに俺がアレナでやった事が広まっていて、勇者だなんだともてはやされたのだった。
その宴会の席で。なんとライデスが参加していた。誰もが驚き、恐れる中奴は俺に近づきいきなり土下座して言った。
「俺を、弟子にしてください!!」
「はぃ?」
「貴方が白虎に潜っている時、アレナの話を聞いたんです。弱き者の味方となり力を振るう… それが貴方の強さの源なのだと魂で理解したのです!」
後ろでフェリスが笑い転げている。余計な事言ったら埋めよう。
「弟子って… 具体的に何を教えて欲しい訳?」
「戦いに関する心構えを!」
「別に強者と戦いたいって考えはいいと思うよ?ただ、その為なら弱い者はどうなってもいいって考えを改めればいいんだよ」
「な、なるほど!あと、貴方についていったら面白い事になりそうなんで!」
「それは分かる」周りの奴らが一様に頷く。
「じゃあ、入団試験だ!エストリーとフェリスの攻撃を食らって死ななかったら連れてってあげる」
「お兄ちゃん。残念だけど… 死ぬよ?」
「そこは調節してさ。俺と戦ったときのエストリーを倒すくらいの強さで戦ってあげてよフェリス」
「えぇ〜。めんどくさ…」
「ちゃんと付いて来れる奴なら旅のメンツが4人になるぞ?」
「どこでも麻雀できますね!!お兄さん!テストしましょう!弱すぎる奴はいらないので頑張って下さい!」
「ゼ、ゼロには負けたが君たちに負けるつもりは無い」
そして次の日、サンドバックにされたライデスが街の道に転がっていた。
危うく馬車で引く所だったらしい。背中には「合格!」と書かれた紙が張ってあったそうだ。
ムゴい…
青龍で鍛えるか?まずは装備の変更をさせようか。




