そして伝説に
宴会から一夜明け。俺たちは殆どない荷物をまとめ宿を出た。
そのまま組合に行き俺は組合長と玄武に向かう。乙女共にはこれからの宿の確保を頼んでおいた。ちゃんと安くて良い所を選ぶんだよ、と言っておいたので真剣に選んでくれるだろう。
問題なくダンジョン攻略を認められ、正式に攻略者として街に発表された。
宿もちゃんとした所をとってくれて大満足だ。
そしてその夜。
「さて、明日から朱雀だ。朱雀の特徴は?」
「遠距離攻撃を得意とするモンスター…だっけ?」
「正解!君たちの特訓にもってこいのステージにようやく移れるね!」
「「はぃ?」」
「エストリーの<泡沫の衣>の修行は言うまでもなく、フェリスの闇の防御も玄武のモンスターよりは厚く張る必要がある。だから、今までよりハードなコンディションになるってわけ!
ちなみに朱雀の次は白虎な。防御を適切なタイミングで展開するのは近距離の方が難しい。そして最後に青龍で様々なモンスターと戦い臨機応変な対応を身につけるってわけ。完璧な修行設計だ」
「あの地獄がまた起こる…の?」
「さっさと攻略しなきゃ…」
「俺はライデスって奴に用があるから。その時はよろしく」
「なんかされたんですか?」
「ゴミ掃除の時に中々高威力の矢を撃たれてな。躱したんだが、俺が躱さなきゃいけない攻撃出来る奴なんてそうそういないだろ?組合長の話だと一番得意なのが弓なんだそうだ。もう決まりだろ?」
「決まりですねぇ」
「中途半端に強いのが仇になったって訳かぁ…」
「ライデスは俺が相手をするんで攻略は主にお前らがやってくれ。コツを掴めば玄武より簡単なはずだ。俺は食の面から支えるから!」
「くっそー!今のうちに食べたいものリスト作ってやります!」
翌日、朝。第2のダンジョン朱雀の攻略を開始した。
見た目は玄武と同じだ。つまらない。
敵は見た目がヒョロイのが多い。遠距離から物理、魔法攻撃をしてきて近づくと逃げる。
しかしフェリスは遠距離闇魔法を使うし、エストリーも動きがますます速くなっているので逃げられるなんてミスは犯さない。
玄武を遥かに凌ぐ速度で進んでいく。1日10層のペースで攻略中だ。
魔力の関係で限界が来るのでそこで休むようにしている。
攻略4日目。34層目でやっと会いたい奴を発見した。
「いた。ライデスだ…」
「お!見つけましたか!ゲイルさんみたいに死にかけてます?」
「いや、中々順調に進んでいるみたいだ。ボス部屋に入られると面倒だからさっさと会いにいこう」
言うやいなや走り出す俺。
数分走ると背中に一本の剣を背負った半分メカみたいな男が見えてきた。
取りあえず挨拶代わりに魔断ちを抜いて斬りつける。
ライデスはこちらを見ずに剣を抜いて体をこちらに向けて剣を受け止めた。
その顔と姿を見て思わず俺は口を開く。
「ラ、ライ○ン!!」
「俺の名前はライデスだ。幼き支配者よ!」
そう言って俺を押し返す。中々力もあるし反応速度もある奴だ。
「はじめまして。でも無いか?デルニオーラに頼まれた仕事中にちょっかい出したのはアンタだよな?」
「ふっ… やはり気付いていたか。完全に死角から放った渾身の一撃を躱しあろう事か掴まれるなどと… 初めての経験だ。私が朱雀に行けばお前は付いてくると思ったが予想通りだな」
「ん?この状況を狙ってたのか?」
「そうだな… しかし違うとも言える。俺の望みはお前との一騎打ち真剣勝負だ。本当ならこんな余計な邪魔が入る場所ではやりたくないのだが…」
「なら日を改めて地上でやらない?俺は売られた喧嘩は絶対買うから。朱雀攻略したら戦おうよ」
「さすが玄武を攻略した者は言う事が違う… 後ろに控える少女達も相当の猛者だが、一番強いのは誰だ?」
俺が手を挙げ、二人が俺を指す。
「やはりそうなのか… 私は自分より強い者に出会った事が無くてな。お前がその初めてな気がするのだ…」
「安心しろ。少なくとも初めてが3回連続で訪れるだろうぜ?」
「何?どういう事だ?」
「俺”たち”は全員お前より強いってことだ」
「見くびられたものだな…」
「ちゃんと約束は守って決闘するから今日は引いてくれない?」
「分かった。俺はダンジョン攻略自体にはそれほど興味が無い。強者と戦いたいだけなのだ…」
「は、はぁ。そうなんですか」
「お前と戦えるのなら朱雀と戦わなくても良いだろう… 少し惜しい気がするが」
「俺が攻略したらいつでも戦わせてあげるよ」
「フフフ… 楽しみにしていよう」
そう言って上の階への階段を目指して歩き出すライデス。
「なんか、変わった人ですねー」
「サイボーグだよ!あれはサイボーグだよ!ターミネーター!」
「それはまた別の作品だ。アイツ、本名はジャックじゃねぇよな… さぁ、ひとまずアレは忘れて攻略に戻りましょう!」
ダンジョンに入って1週間。二人の修行も順調に進んでいる。まぁ、フェリスは<ハデスとの契約>が達成されるのがゴールだからまだまだ掛かると思うが。
朱雀も玄武と同じ70層に最後のボス部屋があった。
二人は疲れていてさっさと終わらせて帰りたいオーラが出ている。
最後は俺がやる決まりらしいので自分で扉を開いて中に入った。
そこには真っ赤な鳥がいた。体が炎に包まれている訳じゃないが、朱雀らしい感じが出てる。
「なんで取りあえず付けられたダンジョンの名前とダンジョンの主の見た目が一致してるんだ?」
「そんな事よりさっさと倒して帰りたいんですけど…」
「えぇ〜… 意外と重要な事だと思うんだけど…」
「私向こうで座ってるねー」
エストリーとフェリスが離れた所に座ってお茶を飲む準備なんかを始めやがった。
「俺も少し修行っぽいことしようかな」
俺に何か伸ばせる所はないか考えたら、吸血鬼の力を思い出したのである。
わざわざ使わなくても強いので忘れかけていた。
「今回の敵は恐らく炎を使うから俺も炎以外使わないってことで!」
吸血鬼の力を解放し、自分の髪が紅くなる。
後ろで「おぉ!」という声が聞こえた。
相手の攻撃してくる範囲まで歩いて近づいていく。
俺とボスの距離が10mほどになった所でボスが啼き、口を開いた。
案の定その口からは炎が吐き出される。
俺は相手の炎を焼くイメージで炎を前に噴射する。炎の状態は完全燃焼の状態だ。
こうして出した俺の炎はガスバーナーのように薄く青い一直線の炎となってボスが吐いた炎につっこんでいった。
互いの炎がぶつかって爆発する事無く俺の炎がボスの炎を散らし、ボスの体を貫いた。
「ありゃ?圧倒的に俺が強すぎる?」
肉の焼ける匂いとボスの悲鳴が聞こえる。
俺は出した炎を剣のようにして視線を縦に薙ぎ、ボスの翼を斬りつける。
まさに飛び立とうとしていたため右の翼を使えなくされた鳥は地面に落ちた。
仕上げにボスがいる地面を溶岩のようにしようと試してみる。
ボスの体を無視してその下だけに影響を与える事が出来るのか試す為だ。
結果としてボスまで一緒に焼けてしまった。やはり目に見えている物じゃないと効果が出ないのか?いや、空中に炎を出せるんだから出来る気がする。
練習すればいけるようになるだろう…
『ダンジョン朱雀を制圧。貴方のギルドの新たな領地となりました』
「よし。制圧完了だ」
「またご主人様が変な事した…」
「何やったの?」
「俺の魔眼には色んな変化を起こせるってことだ。燃やすって行為には色んな種類があるんだよ。俺も修行できる事が見つかったから頑張ろ」
「何をするんです?」
「見えている物の先を燃やす修行だよ。お前らが戦っている時にその敵を焼いてみたり…」
「失敗したら私たちが焼けるじゃないですか!」
「緊張感があった方が上達するかなって」
「絶対止めて!」
こうして朱雀も制圧。宝物庫には金目の物が沢山あった。
外に出るとまた人だかりが出来ていて、デンに組合に連れて行かれる。そして俺たちはSランクに認定された。こんな事でSランクなんて納得いかなかったが、まぁ貰える物は貰っておこう。
今日も移った宿で宴会。今回は見た事の無い冒険者も沢山参加してどんちゃん騒ぎになった。
カリムはいるがデルニオーラとライデスはいない。
こうして俺たちは既に伝説扱いになり気がついたら街の人達に受け入れられたのだった。




