二人目の支配者
「え、本当にゼロなのか?」
「はい。お久しぶりですねー。生きてましたか」
「ご主人様、この方は?」
「え?俺の師匠さ!!」
「でもこのおじさん全然強くないよー?なんでそんな人がお兄ちゃんの師匠さんなの?」
「ぐっ!感づいてはいたがこうして幼女にバッサリ言われるとキツいな… つーか、この女の子達はなんだよ」
「僕の仲間です。ホウガンでこっちのフェリスを、アレナでこのエストリーを拾いましてね」
「なんか色々あったみたいだが、とりあえずここを出よう。他に敵が来るからな」
そんな深刻な顔をしているゲイルを無視してその場で冒険者テントを広げる。
「今日のお昼はカレーよー」
「わーい!エストリーはカレーが大好きであります!」
「なんかキャンプみたいでテンション上がって来ました!!」
「おぉい!! 聞いてる?ここはダンジョンでモンスター湧くんだよ!こんな深い層で油断するなよ!」
「腹が減っては戦は出来ぬのです… それに、作ってある物を温めるだけなんで、大丈夫ですよ」
「ここで調理するなんて言ったらさすがにぶん殴ってるわ!ホント相変わらずメチャクチャだな! それに倣ってるお嬢ちゃん達も相当イカレてやがる!」
「大丈夫ですよー。守りは万全ですから!」
そう言ってゲイル達のいる部屋から出る。
「サモン アオアオ」
ゲイルに分からない場所で再びアオアオにご登場頂いた。
「こっちに近づいてくる奴は皆食べていいです」
「アーオ アオー!」
アオアオさんもテンション高くて何よりだ。スキップしてるし。
門番をセットし部屋に戻る。ワーワー言っているゲイルを強引に中に連れ込んだ。ゲイルは長い間ダンジョンに籠っていて汚れているので風呂に入ってもらった。ちなみに乙女共も風呂に入りたいと言っていたので好きにさせる。
全員が風呂から出たので食事を始めた。ゲイルも凄い勢いでカレーを搔き込んでいく。落ち着いたところで話を始めた。
「で、ゲイルさん。こんな所で何してるんですか?」
「ん?俺はちょっと支配者の仲間といざこざ起こしちまって、ダンジョンで名を挙げてやろうと思ったんだ。で、運が良くて予想以上に深く潜れちまってな… ここの敵は物理防御が異常に高くて逃げているうちにここに閉じこもっちまったのさ」
「そのいざこざってミドリ頭ですか?」
「ん?ゲスのことか?そうだ。あいつはこのダンジョンの支配者を気取ってやがる奴でな。一発ぶん殴って入ってやったら追いかけ回されてダンジョンの深くに進んじまったんだ」
「殺しちゃえば良かったじゃないですか」
「相手はあのデルニオーラの国に所属してるんだぞ。アイツは雑魚だが後ろにいる奴がやばい」
「ミドリがデルニオーラのギルドに所属してるって言うのは嘘ですよ」
「そうなのか?!」
「えぇ。ギルドに入るのは色々と手続きみたいなのが必要なんです。彼にはそれをした形跡がありませんでした」
「なんでそんな事知ってんだよ… つーか、お前も会ったのか?」
「えぇ。ミドリ以外は殺して本人も肘から落としてやりました」
「うっわ… デルニオーラが怒ったらどうすんだよ」
「あんなカスを本気でかこってるなら相手の力量も知れたもんです。正々堂々喧嘩買って叩き潰してやりますよ」
「マジかよ… なんか、ホウガンの時と違って好戦的になってるな」
「ここはそういう国でしょ?郷に入っては郷に従えというヤツですよ。さぁ、食事も終わりましたし、一度地上に戻りますか」
「え?戻るんですか?!」
「ゲイルさんを一人で返すわけにもいかないだろ。あ、護衛料は昼飯代と合わせて知り合い割引して大金貨1枚でいいです」
「金とるのかよ!!」
「当たり前です!」
「くそ!でも俺一人で戻れるとも思えないしな… 頼むわ」
「毎度ー」
こうして俺たちは地上に向けて歩きだした。
道中でゲイルのホウガンを出てからの話を聞く。敵は<潜蛇>で近づく事無く斬り飛ばした。
ゲイルが辿った道は俺たちと殆ど同じだった。アレナにいた期間が結構長かったらしく、そこでカリノフにも会ったそうだ。
ちなみに俺が闘技大会で優勝して今はカリノフが王だと話してやると自分が出なくて本当に良かったとげんなりした顔で言った。
「お嬢ちゃんたち、本当に強いな…」
「まぁ、僕が同行を認めている奴らですから」
「そっか、お前は何してんの? 背中から武器が伸びてんだが、魔法か?サイボーグにでもなったの?」
「これはカリノフさんから報酬としてもらった剣です。意思に従って伸びるんですよー」
「なんか、持ってる武器もおかしくなっていってるな」
「楽しいですよ?」
そんなこんなで何の問題も無くダンジョンを出る。もう既に日が落ちかけているな。
「宿引き払っちゃったんで、ゲイルさんとこに泊めて下さいよ」
「いや、俺は行方不明扱いされてるだろうから宿はもう片付けられてるんじゃないか?」
「えぇ!?何してるんですか!」
「なんなんだよ!取りあえず組合にいくぞ。事情を話せば仮眠室くらい貸してくれるだろうよ」
「だったらダンジョンの中でテントはって休んだ方が快適だよぉ!」
「お前ら、ダンジョンなんだと思ってんの?!」
そんな言い合いをしながら馬車に乗り組合を目指す。
組合に入ると受付のお姉さんがゲイルを見て驚きの声を上げた。
「ゲイルさん!生きていらっしゃったんですか!」
「おう。コイツらに助けてもらったんだ」
「あ、ゼロさん。帰ってきたんですね」
「えぇ。師匠を一人で帰す訳にもいかないですからねー」
「師匠?」
「ゲイルさんはホウガンで僕に冒険者について教えてくれた方なんですよ」
「えぇ!そうなんですか! 世間は狭いんですね。あ!そう言えば、貴方ゲスにとんでもない事したみたいですね!」
「別に?両腕切り落としただけですけど?」
「だけって言わないです。それ。デルニオーラ様が貴方に会いたいと言っていました。さっき組合から出て行ったのはデルニオーラ様の部下です。もうすぐ彼らが来ますよ」
「おぉ!それは都合がいい!じゃあ、待ってます」
「ここは困ります!」
「別に向こうから仕掛けて来ない限りこっちからは何もしません。あのミドリについても何があったかなんて大体想像着くでしょ?」
「ま、まぁ… でもあなた方も要注意人物である事には変わりありませんから」
「デスヨネー。じゃあ… 外で待ってますわ。ゲイルさんどうします?」
「関わりたくないからここの仮眠室借りるわ」
「えっ!きっと楽しいですよ?」
「お前みたいな頭のねじ飛んだ奴の楽しいは俺たちにとっては恐ろしいなんだよ!」
「全く、根性無しの玉無しです!ご主人様、行きましょう」
「エストリーお腹すいたー」
「ヒデぇ連中だな、おい!」
外でぼーっと待っている事10分。1台の馬車が俺たちの前で止まった。
そこから出てきたのは厳つい兄ちゃんだ。
「お前らがゲスをやった奴らで間違いないか?」
「おう。ってことはアンタがデルニオーラの使者か」
「デルニオーラ様を呼び捨てとか本当に恐れを知らないガキだな。狂ってるんじゃないか?」
「別に、まだ相手と話した事も無いんだ。敬える人物かも分からないだろ。俺は権力を敬うんじゃなくて人柄を敬うタイプなんだよ」
「ふむ… 意外といい事言いやがる。まぁ、いい。乗れ」
そう言って馬車に引っ込んでいく兄ちゃん。俺たちも乗る。
「警戒する事も無く素直に乗りやがったか」
「この馬車が爆発しようがお前が何かして来ようが何の問題も無いだけだ。信用してる訳じゃない」
「おじさん!夜ご飯は食べさせてもらえますか!?」
「あと、今夜泊めてくれませんか?」
「朝ご飯も出してくれると嬉しい」
エストリー、フェリス、俺の順で取りあえずの要求を言ってみた。
「……は? お前ら、何言ってんの?」
「夜ご飯食べてなくてお腹ペコペコなんだよー。しかもダンジョン攻略するまで帰らない予定だったから宿を引き払っちゃって泊まるとこがないの!」
「エストリー!そのまま可愛くおねだりだ!!」
「お願い、おじさん。泊めてよぉ〜」
「お前、伝説の吸血鬼だろ!騙されねぇよ!」
「まぁ、とりあえず、お前らんとこの躾のなっていないアホに絡まれた事に対する落とし前はこれでつけてやる」
「なんで俺たちが謝罪する流れになってんだよ!」
「はぁ?先に喧嘩売っといて自分は悪くないとでも言うつもりか?こういうのは素直にごめんなさいって言っとくのが大人だろ!こんな子どもに絡んでる時点でミドリのダメダメっぷりが露呈してんだよ!」
「ゲ、ゲスについてはデルニオーラ様が直接お話しになるそうだからこらえてくれ。それに、宿泊に関しても俺がどうこう言える事じゃない」
「ようは全部デルニオーラに言えってことか。使えないな…」
「お兄さん。何か面白い話して下さいよ」
お兄さんことデルマスはいよいよ目の前の連中が普通とは違うヤバい奴と認識し始めた。
(どうなっちゃうんだろ… 敵対しない方がいい気がするな…)
そう心の中で呟くデルマス。
馬車で10分程。デルニオーラの屋敷に到着する。
「入ってくれ。入ったら使用人がお前らを案内するから」
「あいよ!ありがとうな!」
「なんか、スゲー疲れた…」
屋敷の中に入ると初老の執事さんが俺たちを迎えてくれた。
「ゼロ様、フェリス様、エストリー様ですね?お待ちしておりました。デルニオーラ様が晩餐をご用意してお待ちです。さぁ、こちらにどうぞ」
「なぜ敵になるかもしれない不届きものにそのような丁寧な扱いを?」
「それに関してはデルニオーラ様よりお話があるかと存じます。さぁ、こちらへ」
「「おじゃまします」」「晩ご飯だー!」
一つの扉を開けるとそこには典型的なお金持ちが食事をする場所というスペースだった。
その一番奥に20いくかいかないか男が座っている。
「やぁ、君がゼロかい?初めまして。デルニオーラだ」
「初めまして。デルニオーラ様。ゼロです。お呼びと聞いたので参上しました」
「カリムの言った通り別に狂人って訳じゃなさそうだね。まぁ、座ってよ。食事にしよう」
「では、ご相伴に与らせて頂きましょう」
こうして二人目の支配者デルニオーラとの初対面が叶ったのだった。




