遺跡ツアーと再会
QTの世界のダンジョンは地下に進んでいく遺跡タイプと上に上がる塔タイプがある。
一般的に塔の方が数が少なく敵も強い。塔のダンジョンの一番上が戦闘城と呼ばれるものだ。
そこは過度な装飾のある城ではなく、ただ戦うだけの城。敵も強いが城に様々な仕掛けがある。
ボヘミア城は典型的な戦闘城だった。ボスがボス部屋に留まらないという巫山戯た設定で、ボスが転移魔法を使って俺を強制的に飛ばすのだ。そこは5つのステージに分かれていてそこで中ボスを倒さないと真のボス部屋に入れない、という形だった。RPGにはお決まりのボスとの連戦というヤツだったが本当に辛かった。塔のダンジョンはこんな感じでイレギュラーな設定が施されている。
しかし、遺跡タイプはそのようなイレギュラーはない。
一つの階層には必ずボス部屋があって、そこに必ずボスがいる。ボスは遠出なんてしない。
階層が深くなればボスもモンスターも強くなる。最下層のボスはなんか豪華な扉なので最下層なのが分かるのも嬉しい仕様だったりする。
宝箱もダンジョン内にあるし、罠も常識的な矢とか妨害魔法とかなのだ。
なのである程度パターン化しており対処は何ら難しくない。
俺も遺跡ダンジョンの攻略は最初の方はしていた。
しかし、結構すぐに飽きてしまったのだ。景色が代わり映えしないのと、そんなに強い装備が得られないという理由で。
遺跡で神級装備が手にはいるなんて事は本当に少ない。塔と違ってどこまで続いているのかが分からないのでモチベーションが上がらないのだ。
遺跡をギルドにしても栄えないという理由で俺はある程度強くなってからは遺跡ダンジョンは敬遠していたのだ。
しかし、久しぶりに入ると懐かしさを思い出し少しワクワクしている自分がいる。
「さて、この興奮に水を差す馬鹿を処理しますか…」
一本道から曲がりミドリから見えなくなったので<風纏>を装備し、一気にボス部屋に向かう。
扉が開くのを貧乏ゆすりをして待ち、入れる隙間が出来たので中に入った。
ボスは大きな盾とフレイルを持った。オーガだった。
「オーガかよ… 俺のやる気をとことん奪ってくれるな。最初のボスだから仕方ないか。最下層はそこそこ楽しみたいですな」
そう言い<魔断ち>に武器を換えて一瞬で距離を詰め首を狩る。
オーガは盾を構える暇もなかった。
オーガを殺して1分程でミドリ達の声が聞こえてきた。
「やけに静かだな。もしかしてもう殺されちまったんじゃねぇか?」
「ゲスさん。本当にやるんですか?噂じゃSランクに匹敵する強さだって…」
「馬鹿か!あんなガキがSランクな訳ねぇだろ!通り魔王って連中は他にいてアイツらはそれを騙って詐欺みてぇな事をしようとしてるだけなんだよ!」
「そうっすよね… あんなガキが強いはず無いっすよね…」
「おら!あのガキの死体を拝んでやろうぜ!」
そう言って扉を思い切り開けるミドリ一行。
(名前がゲスって… 英語のguessって発音だが、やっぱ下衆なんだな)
頭を失ったオーガの上に座る俺を見て三人が言葉を失った。
「いらっしゃい。このモンスターが弱すぎて運動不足なんだ。俺をぶっ殺すんだよな?遊んでくれるんだろ?」
「は?ボスモンスターが死んでる?お。おい。一体どんな手を使った…」
「え?普通に、こんな感じで」
俺は冒険者鞄からナイフを取り出し投げた。威力は先ほどと違い強めにして。
相手の眼に留まらない早さで投げられたナイフはゲスの横に立っていた男の頭を粉砕して後ろの壁を砕いた。
突然の轟音に咄嗟に横を見た二人は仲間の頭が消えている事に気付く。
「ば、化物だぁ!」
そう生き残りの一人が叫んで逃げようとしたので<風纏>を装備し扉の前に立つ。
「おいおい、どこ行くんだよ」
「!! え?! 瞬間移動?! た、頼む!俺は後ろの奴にそそのかされただけでアンタに喧嘩を売るつもりなんて無かったんだ!逃がしてくれないか!いや、殺さないで下さい!!」
「ふ、ふざけたこと言ってんじゃねぇぞぉ!」
「ぎゃあぁぁ!!」
ゲスが後ろから命乞いをした奴を切り付けやがった。こいつ、マジでクズだな
「おい… お前仲間を殺したな?」
「うるせぇ!最初に裏切ったのはコイツだろうが!舐めやがって!おい、ガキ!俺を見逃せ!そしたらデルニオーラ様には何も言わないでおいてやる!」
まだ自分はデルニオーラのギルドメンバーと言いたいのか…
「だから、お前がギルドメンバーじゃないのは分かってるんだよ… 野心家ならお前みたいな足枷をいつまでも残しとくとは思えないし、お前は俺の交渉材料になってもらう」
「な、なにする気だ!」
「大丈夫だよ。殺さないから」
そう言って<風纏>で奴の両腕を切り落とす。
「あぁぁぁぁぁ!!!腕が!俺の腕がぁあぁあああ!」
「炎よ 焦がせ」
「ぎゃああああ!!」
炎魔法で焼いて止血してやった。
「よし、帰れ。モンスターは倒してあるから比較的安全に帰れるはずだ。そんで、近いうちにお前の所に話をしにいくとデルニオーラに伝えろ。お前も交えて話をしたい。これがギルドの方針なのかを確かめないといけないからな」
「てめぇ… パニッシュに喧嘩売ってタダで済むと思うなよ…」
「だから、ギルドに喧嘩売る時はちゃんと手続きみたいなのが必要なんだよ。それが出てないからお前はパニッシュの一員じゃない。お前はどう思ってるか知らないが、ギルドメンバーになるにはギルマスの承認が必要なんだぜ?」
「意味わかんねぇ事言ってんじゃねぇ!絶対後悔させてやる。楽に死ねると思うな!!」
そう言って部屋を出て行くゲス。元気そうだ。
少し待っていると二人が戻ってきた。
「おかえり。どうだった?」
「なにもありませんでしたよ… ボスはどうだったんです?」
「悲しい気持ちになったな。ちょっと二人でじゃんけんして」
言われるままにじゃんけんをする二人。勝ったのはエストリーだ。
「じゃあ、次はエストリーがボスと戦って。で、3層目はフェリスが戦いなよ」
「えー!またお預けですか?エステリー、譲りなさい」
「ヤダヤダヤダ!! いいじゃん!深い層ならボスも強いよ?!」
「む、確かに… でも、そんなに変わらない気も…」
「変わらないならいいだろ。ちゃんと公平に順番回ってくるんだから」
「そうだよー」
「分かりましたよ…」
俺は目の前に出現した転移クリスタルを握りしめて下に続く階段を下りた。
こうして遺跡型ダンジョン 玄武の制圧が本格的に始まった。
ちなみにボスは一定時間経つと復活する。厳密に言えばボスを倒して10分後。ボス部屋は誰かが開けたら速やかに閉まるが、俺は閉まりきる前にボスを殺したので扉が開いた状態になりゲス達は入れたのだ。普通はそんな早くボスを倒せないので別の奴がボス部屋に着く前には既に扉は閉まっているのである。そして戦闘が終わらなければ再び開く事は無い。開かない時は封印されていて扉の色が黒くなるので外から見て分かるのだ。
転移クリスタルは地上から次の攻略層に転送してくれる便利アイテムだ。見た目がPCの時ののままだったので即座に理解出来た。
しかし、この転移クリスタルは遺跡内から外に出る事が出来ない仕様になっている。
これがダンジョン攻略の辛い所だ。戻りたいと思ったらまた来た道を戻らないといけないのである。しかも、ボスは復活している。内側からなら扉は開くので、ボスの脇を通って扉を開ければ戦わずに逃げられるが、強いボスはそんな甘くはいかない。なので気楽に深く潜ると死ぬのだ。
戻ってる途中で他の奴がボスと戦っている時はどうなるのか。
それは戦闘の中にほっぽり出される。こっちは内側から扉を開けて出られるが、戦闘中の奴は見えない壁に阻まれて出られない。外で待機してる奴も中には入れない仕様になっている。
助けてくれと頼まれることもしばしばあるが、俺は基本無視していた。あまりにうるさい奴はボスと一緒に殺してやった事もある。
つまりQTのダンジョンとは行きは地獄だが帰りはそれ以上の地獄なのだ。
なのでプレイヤーは一度攻略すると決めたら死んで拠点とした場所に飛ばされるか、攻略して自分にとって安全な場所にするかの二択しかない。
この世界で俺は死んだら終わりっぽいので攻略しかないって訳だ。
まぁ、ここ程度なら恐るるに足りんが、今後なにか厄介なダンジョンに遭遇した時は覚悟を決める必要があるんだろうな。
こうして玄武の中を歩き続ける。やっぱり障害になる相手はボス含めていない。
切りのいい数字で強ボスが出るんだが、あー、何となく違う気もするって程度だ。
そんなこんなで27層。半分は過ぎたろうと話して歩く。15層くらいまでは他の冒険者がちらほら見えたが、こっちは凄い速さで走っているので声をかけられたりしない。
乙女共はピクニック気分だ。虫タイプのモンスターは触りたくないので遠距離で殺している。
そして一応<気配察知>で敵を探る。もう通常でも100レベルを超えているので普通の冒険者は生きて出られないくらいになってるな。
すると一人の人間の気配があった。小さな部屋にろう城し、多くのモンスターに部屋の扉を壊されそうになっている。
「おい。人間を見つけた。このままじゃ殺されちまいそうだから一応助けてやろう」
「え?同行させるんですか?」
「いや?勝手に帰ってもらうさ。うざい奴なら死んでもらう」
「お兄ちゃんは本当に優しいね!」
「じゃあ行くぞー この層を突破したらお昼ご飯にしよう!」
「わーい!攻略に夢中になってたけどもう13時過ぎてるよねー」
「お腹すきましたねー」
そんな会話をしながら例の部屋に行く。
たむろしている岩みたいなモンスターを拳で砕きまくって、ついでに部屋の扉もぶち破る。
「くそ!とうとう破られたか!来やがれ!そう簡単に殺されはしないぞ!俺はあのゼロの師匠を名乗ってるんだ!」
そこから聞こえてきたのは懐かしい声。ぶっちゃけ忘れてたわ…
「どーも、師匠… お久しぶりです…」
「え…… はぁ?!」
みっともなく篭城して死にかけていたのは俺の師匠であるゲイルだった。




