武封国編 開幕
私の名はロッソ、種族は人間でCランクの冒険者だ。今日も私はいつものメンツで草原に出るモンスターを狩る依頼をこなしていた。
いつものメンツとは回復役のエルフのブラン、攻撃魔法を使う人間のカルミー、そしてパワータイプの剣士の獣人タームだ。私は遊撃手で矢やナイフを使う戦闘を得意にしている。
今日は少し遠出だった。中々モンスターが見つからなかったからだ。
冷静なブランとカルミーは一度戻った方が良いと言っていたのにリーダー気取りの私はそのまま進んだ。そして結果はこのザマだ。
今までに数回しか出会った事の無いウインドレッサーが6匹群れで現れたのだ。名前の通りモンスターのくせに風魔法を纏って攻撃するBランクモンスター。
このとき私は終わったと直感した。逃げても無駄だしこの数ではどうにもならない。
そもそも群れている事が異常なのだ。
互いに背を向けて囲まれる。
「みんな、ごめん。こんな事になるなんて…」
「おいおい。何一人で責任感じてんだよ!俺たちはいつも一緒に戦ってきたんだろ!」
「そうです、ロッソ。皆で生きて帰りましょ」
「今日はロッソさんのおごりですよ!」
そんなことを言って笑ってくれる仲間。あぁ、なんて良い仲間を持ったのだろう。しかし、そんな素晴らしい仲間をここで死なせてしまうなんて。自分はなんて罪深い人間なんだ…
何とか仲間を逃がす事は諦めずに戦おう。そう決意してナイフを抜き、ヘタクソな魔法を剣に付与する。
「さぁ、かかってきなさい!」「来いやぁぁぁ!!」「生きて帰ります!」
そんな叫びを皆がしたとき、場違いな幼い笑い声と馬車の音が聞こえた。
音のする方角を見ると馬車がこちらに向かって走ってくる。
その荷台の上には少年と少女二人がこっちに向かって手を振っていた。
笑っているのは少年のようだ。
「はぁ〜っはっはっは〜!! 正義の味方参上!助けにきたぜ!!」
「ご主人様! 笑い方が悪役っぽいですよ!」
「おじさんが邪魔で見にくいよ〜。お兄ちゃん肩車して〜」
「おい!登ってくるな!カッコつかないだろ!」
そんな緊張感の無い会話をしている。
少しの間あっけにとられたがすぐに気を取り直して叫んだ。
「君たち!何考えてるの!早く逃げなさい!このモンスターはBランクなのよ!」
近づいてくる音に気付いたウインドレッサーが3匹馬車の方に向かった。
しかし、少年と獣人の少女は「馬車にきた方はお前に任せるぞー」と幼女に言って馬車から飛び降りこちらに向かって走ってきた。
私の目でも微かにしか見えない速度で二人は走る。
ウインドレッサーの一瞬の隙をついて少年は一匹を斬り飛ばし、もう一匹を蹴り飛ばす。
少女はどこに行った!?そう思って首を動かすとその少女は右手に動かないウインドレッサーを持って死体を眺めていた。
何が起こった?そう放心している私たちに「怪我はない?」と少年は尋ねてきたのだった。
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俺たちが助けた冒険者はとても礼儀正しい良い人達だった。
助けた事にものすごい感謝され、自分たちに出来る事はなんでも言って欲しいと言われたので武封国について教えてもらう。
「えっと、ゼロさんとフェリスさんとエストリーさんでしたね?」
「さん付けなんてこんな子どもにしなくて良いのに…」
「いえ!あんな桁外れな力を見せられて対等に話なんて出来ません!」
「そうっす!俺を舎弟にしてくださいっす!」
「またその流れ…?」
「相当お強いですが、見た目通りの年齢ではないとお見受けしました」
「いや、この幼女以外は見た目通りの年齢だよ?」
「…え? 15歳にも満たないくらいなのにそんなに強いの?」
「うん」
「世界って広いんだな…」
「で、俺たちは今アレナから旅をしている最中で、武封国のダンジョンに行きたいと思ってるんだ。武封国に関してはあまり知らないんで教えてもらいたいって言うのが貴方達へのお願いになる」
「そんな事でいいんですか?」
「いや、情報って言うのはとても大事なんだよ?状況によっては武器にもなるからねー」
「そんなことを私の長老も仰っていました!やっぱりゼロさんは大変聡明な方なのですね!」
エルフのお姉さんが褒めてくれる。
「Cランクなら宿も紹介してくれると嬉しいな。俺もCランクなんだ」
「は?! 貴方がCランク?!冗談でしょ?」
「俺はインペラ皇国で冒険者になってね」
「あぁ、あの人間至上主義の糞みたいな国ね!そこにいちゃランクはあがらないわ。安心して、ゼロちゃん!貴方達の強さならあっという間にAランクになれるわ!」
「やっぱり武封国は強さ重視なのか!」
「もちろん。あと、世間的には武封国で認定された冒険者ランクの方が信用されるわ。皇国だと賄賂とか渡してランクを上げる奴がいるくらいだし。貴方もその歳でCランクなら難癖つけて馬鹿にする奴は現れるわよ」
「大丈夫だよ。そこんとこはしっかり理解してもらうから」
「そ、そうね。貴方達ならすぐ有名になれるでしょうね」
「危険人物はいるか?」 そうエルフのお姉さんに聞いてみる。
「少し性格のねじ曲がった奴はいますけど基本的には平和な場所です。でも、ダンジョンの中で殺すという行いはたまにですが起きています。ダンジョンの中なら死人が出るのは当然ですから。あと、支配者の方には歯向かってはいけません。権力を振りかざす事はありませんし、無理な要求をする事も無いのでそこは安心して頂きたいんですが、何と言っても強いんです。カリム様はおおらかな性格でいらっしゃいますが、デルニオーラ様は野心家です。ライデス様は個人で動かれるお方で寡黙でいらっしゃいます」
「その3人が支配者なの?」
「えぇ。実質カリム様とデルニオーラ様のお二人が国を纏めていらっしゃいます」
「ふーん。売られた喧嘩は買うけどこっちから売るまねはしないようにしようか…
二人とも分かった?」
「「あーい!」」
「次は武封国のダンジョンについて教えてくれる?ダンジョン自体の説明は大丈夫だ」
「はい。それは僕が。カルミーと言います!ダンジョン攻略されていないものは大小合わせて10程あります。どれも広くまだ時間がかかると言われていますね。そのうち4つはモンスターが強くて苦戦しています。出てくるモンスターの特徴で朱雀、玄武、白虎、青龍と言われていますよ。帰って来ない冒険者も多く支配者の方が直接赴くこともあるくらいです」
「ダンジョンに入るのに決まりはないの?なんか派閥争いとかで、このダンジョンは我々が攻略するから関係者以外は入るな!みたいな」
「そういう輩もいますが、そんな決まりは無いです。入りたいのに邪魔してきたらそれこそ斬られても文句は言えないですからね」
「なるほどね。ダンジョン絡みは殺しても不問になる事が多いってことだ」
「えぇ。実力も無いのに騒いでも邪魔なだけですから」
「派閥に面倒な奴はいないか?」
「あまり大きな声では言えませんが、デルニオーラ様の派閥は少し強引なところがあります。勝手にデルニオーラ様の名前を使っている輩もいるそうで…
見分けが難しいんですよ。デルニオーラ様と事を構えると確実に死にますので気をつけて下さいね」
「そんな強いの?」
「えぇ、デルニオーラ様は特殊な武器を持ってらっしゃるんです。モンスターと戦う時は使いませんが、デルニオーラ様と敵対したものには使うんですよ」
「へぇ… あ、そうだ! その支配者が攻略したダンジョンには入ってもいいの?」
「え?! えぇ… 禁止されてはいませんが、でもそこは支配者の領域で立ち入るのはタブー扱いされていますよ?」
「やっぱそーか。そのダンジョンに支配者は住んでるの?」
「まさか。街に住んでいますよ。ダンジョン内は重要なものを保管していてモンスターに守らせているようです」
「ほぉ…」
「どうしました?ご主人様?嬉しそうですね」
「意外と楽に動ける気がしてきたぞ… ありがとう。後は街を実際に案内してくれると嬉しいな」
「もちろん!いろんな良いとこ紹介するわ!」
はーい、ガイドゲットー。ちょろいな。
「お!武封国が見えてきたぜ!」
そうタームが言った。
「よし。ここから新しい物語が始まるぞ!」
「私の予想ではデルニオーラって奴と戦う気がします!」
「やめろ!それは俺も薄々思っているが、こっちからは何もしないぞ!」
「エストリーも楽しむね!まずは冒険者登録しなきゃ!」
「はい。早速一つ目のトラブルが決まったぞ」
こうして武封国での戦いが始めるのであった!




