ギルド アレナ共和国
闘技大会が終わり、俺たちはカリノフの屋敷に戻った。
カリノフはヘイアス達を捕らえたり、王城に行って色々準備をしたり大変そうだ。
「まぁ、ここからが私の仕事だからね!」
とか無駄に張り切っていたので頑張って頂きたい。
今俺は応接室にいる。俺の他にはフェリス、エストリー、シェリル、ガルバル、パールがいる。
「で、フェリス。なんでおっさんなんて拾ってきたの?飼うの?」
「い、いや。このおっさんSランク冒険者なんですよ!」
「エストリーから聞いたよ。その実力の程もな… で?お前は俺にこのおっさんをぶつければ俺が喜ぶとでも思ったわけ?」
「そ、そうではありません!このおっさんは悪人じゃないんで殺す必要は無いかなって思いまして…」
「ふーん。ならコイツはお前の管轄だ。好きにしろ。だが、俺を関わらせるな。分かったか?」
「Yes,sir.」
「よし。おっさん、俺はアンタと関わる気はない。俺はアンタをSランクなんて認めない。本来S ランクって言うのは緊急クエの邪神を討伐しないとなれない超名誉な称号なんだよ!」
「この小僧は何言ってんだ?」
「さぁ?」
「おっさんの処遇はこれでいいや。で、エストリーよ」
「なに?お兄ちゃん?」
「お前、これからどうすんの?」
「約束通り、お兄ちゃんの先生になってあげるぅ〜」
「あぁ?」 フェリスが危険な声を発した。
「あ、姐さん。落ち着いて! お兄ちゃんが、私たちの事について色々知りたいらしいからそれを教えてあげるの!」
「本当ですか?ご主人様」
「おう。吸血鬼に関する知識が欲しいからな。コイツこんなナリでも長く生きてるらしい」
「へー。吸血鬼は転生してから歳をとらないんでしたね」
「あと、何で俺の呼び方がお兄さんからお兄ちゃんになってんの?」
「そっちの方が妹キャラっぽいでしょ?」
そんなこんなで俺たちが拾った奴らの処遇が決定。
パールは暫くガルバルと一緒に自警団としてこの国の治安を維持してもらう。ちなみにまた<買い戻し>で片手剣をあげた。
エストリーは俺たちについていって武封国の奥に住むある吸血鬼に会わせてくれるらしい。
シェリルには俺の奴隷になるという夢はあきらめてもらった。
夕食前にカリノフが屋敷に戻ってきた。
ヘイアス一派は捕らえて城の牢に閉じ込めたらしい。当然処刑される。
さすがに明日に戴冠式は不可能なので5日後という事になった。それには俺も参加させられるらしい。
報酬は応相談。この国には金が無いので何か相応しい報酬を考えるとの事だ。
それから4日間は街を回るのに忙しかった。
基本フェリスとエストリーとシェリルで行動した。
最初はエストリーを見てパニックを起こす者が続出したが、段々なれてきたようだ。
話しかけたりはしないが話しかけられるとビクビクしながらも答えている。
シェリルは有名人で最近姿を見なかった事を心配されていた。
カタリナに会った時は軽い修羅場だった。
泣きじゃくりながら抱きついてくるカタリナを優しく抱きしめてやったらフェリスが軽く切れた。
そして戴冠式の日。と言っても王冠などがあるわけではなくカリノフが改めてこの国を国として作り替える!みたいな意気込みを言うだけらしい。
闘技大会が終わってすぐ各街に魔法で知らせがいったようでグラジオラスには多くのヒトが集まっていた。
荒くれ者はさっそく機能している自警団が取り締まっている。ちゃんと法を整備するので無闇に殺すのはナシだ。
ちなみにガルバルが最初の自警団としての仕事を果たしたときに例のアナウンスがなった。
『ステータスが必要量に達した為<潰命>が使用可能になりました』
これであと一つだ… 今回は稼げたけどこれからはそんなうまく行かない気がしてもいるのだった。生きていても改心すれば罪を清算出来るんだなーと知ったのであった。
今俺は王城の一室にいる。アレナの正装をしてカリノフを待っているのだ。
金ピカな装飾を施した派手な衣装で落ち着かない。皆は似合っていると言っていたが嘘だね。
「やぁ、ゼロ君。お待たせ」
そう言ってカリノフが入ってきた。カリノフも俺以上の派手な服に身を包んでいる。
そして王城の広場を見渡せるバルコニーのような場所に来た。
ちなみにシェリルはいない。
このスピーチはアレナ全ての街に聞こえるようになっているそうだ。
カリノフは集まった市民を見渡し一つ息を吐くと力強く語り始めた。
「アレナ共和国の国民よ!この国はゼロ殿に言わせると魔の森以下だそうだ!
愚かな権力者が強権を振るい国の為でなく己の欲望の為だけに生きる国。それがアレナ共和国だった!なにが共和国だ!そんなものは国ですらない!そのような理不尽に命を落とした大切な者も多かっただろう。一権力者として皆に改めてお詫びをさせて欲しい。本当に済まなかった。
しかし、それも今日から変わる!この国は本当の意味で平和を実現する。私ではなく、皆がつくるのだ!そしてその平和は私の代だけではなく、これからずっと続くよう素晴らしい国を皆で作り上げていこう!
改めてアレナに暮らす皆様にお願いしたい!この国の一員としてこの国を共に発展させてはくれないだろうか?!その思いがある者は今、神に誓って貰いたい!」
そう言うとカリノフは何かに祈るように目を閉じた。下を見下ろすと集まった市民も目をつむっている。
(へぇー。神を信仰する文化があるんだなー)
そんな風に思っていると、カリノフの目の前の空間が白く輝きだした。
そして、そこから表れたのは一枚の盾であった。
その輝きに俺は見覚えがあった。
(あれは、ギルド武器だ!!)
「皆!この国は国として正式に神に認められた!!我々は伝説を目にしている!!」
表れた盾を掲げ皆に見せるカリノフ。民衆は大歓声だ。
(え?!ギルド登録が行われたってことだろ?! 誰?心麗さんがやってんの?!
ビックリだわ!あとでどういう認識なのかカリノフに聞こう)
「では!ここでこの国に真の平和をもたらしてくれた冒険者、ゼロ殿にも言葉を頂こう!」
元から一言喋る約束だったので俺は前に出た。
「皆さん。おめでとうございます!皆さんはとうとう自由な国を自分たちで作る権利を得ました。そう、まだ権利を得ただけでこの国の自由を実現するのにはまだまだ時間がかかる。しかし、自由という意味をはき違えないよう注意してくださいね。自由とは何にも縛られずに好き勝手生きる事ではありません。それではあなた方を苦しめた奴らと同じ道をたどる事になってしまいます。多くの種が集まって生活する場所が国ならば、そこには当然決まりが必要です。その決まりを自分たちで考え、議論し、定める、自分が縛られる決まりを自分で作るという事が国で生きる上での自由なのだと思います。階級を作る事無く、皆が平等な国を作るのはとても難しいです。上に立つものが全てを決めるのならば時間もかけず、簡単です。しかし、議会を作り多くの者の議論で何かを決めるのならそこには膨大な時間と労力がかかります。頑固に主張を曲げないヒトが多すぎれば何も決まらず、一人の威圧的なモノが他者を従わせれば以前と同じ未来が待っている。
皆さん。ちゃんと考え、責任と勇気を持ってこれからは行動しましょう。これからの未来はあなた方が作っていくんですから。長くなりましたがこの辺で。あ、後僕は数日中にこの国を経ちます。今度は一冒険者としてひっそりこの街を訪れますので、この国の変化を期待します!」
難しい話だったのか皆考える素振りを見せていたが、俺が街を出ると聞いてまた騒がしくなった。この国に残ると思っている奴も多いだろうからな。
「僕は冒険者です。それこそ何にも縛られず好き勝手に生きる事を望んだ者なんです。
ここには縁があって立ち寄っただけ。仕事が終わればまた旅に出ます。まぁ、またきますから」
そんな感じで俺のスピーチは終わり。
改めてカリノフが喋っている。
(次は武封国か… 今度こそ権力ではなく力がモノを言う世界… 楽しみだ!)
つつがなく戴冠式も終わり、晩餐会だ。しかし、豪華な食事である必要は無いだろうという事でいつも通りの食事を多くの者で囲む。
そんなときカリノフが声をかけてきた。
「ゼロ君。改めて、この国を変えてくれて本当にありがとう。娘だけでなく君はこの国まで救ってくれた」
「いえ。ただ巡り合わせが良かっただけです。でも、戴冠式で貴方が神に認められた時、この出会いは運命なのかなとも思いました。ヘイアスでは神に認められる事は無かったでしょうから」
「そうだな。今後、君に国家レベルで面倒が起こったらアレナ共和国は君の味方をする。つまり、インペラ皇国と敵対するのも辞さない構えという事だ」
「いいんですか?最悪戦争になりますよ?」
「構わん!」
『ギルド アレナが貴方のギルドの傘下に入ることを要望してきました。承認しますか?』
(うお!心麗さん久しぶり! ギルドの傘下に入る?どういうことだってばよ…)
「えーっと、つまりここからは僕と貴方は同盟の様な物を組むって解釈でいいですか?」
「私たちがただ単に君に恩返しをしたいだけさ。そんな政治的な思惑はないよ。
まぁ、一番の理由は君と敵対したくないという事だけどね。君とフェリスさんを敵に回せばアレナは滅ぶ」
「はははー。さすがに二人で国を滅ぼすなんて…」
「いや、出来るだろ」
「無理ですよー。カリノフさんの申し出、ありがたく受けさせていただきます!」
俺はアレナが俺の傘下に入る事を承認した。
「で、報酬の件なんだが…」
「え?!さっきのでいいですよ?」
「いや!そんな起こるか分からないモノを報酬とするなどできないだろう!」
「別に良いですよ。十分稼がしてもらいましたから!」
「いや!何か受け取ってもらうまでこの国から出さん!」
そんな押し問答が晩餐に響くのだった。




