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真理の探究者  作者: しま
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闘技大会の終了

ヘイアス達が屋敷に戻って間もなく、俺はカリノフのいるテントに戻ってきた。


「ちーっす。お届けものでーす」


「その抱きかかえているのは吸血鬼かね! ゼ、ゼロ君! 本当に吸血鬼に勝ったのか!」


「えぇ。中々にエキサイチングな戦いでした! これで貴方が王様です! あの筋肉ダルマどこですか?」


「それが、奴らは自分が勝ったと信じ込んで屋敷に戻った。そうだ!奴らは屋敷に多くの兵を潜ませていたらしい。このままだと負けを認めない奴らが兵を率いて反乱を起こすぞ!」


「あぁ、それは問題ないです。取りあえず、僕とエストリーにお茶を。

あと、中継を復活させてもらえませんか?」


「あ、あぁ… 問題ないとはどういう事だ?」


「フェリスに奴らの屋敷を襲わせています。もう戻ってくるんじゃないですか? 生き残りは一人もいないと思います。それよりトンズラかます前に捕らえないと。彼らには派手に死んでもらいますからねぇ…」


「そ、そんな事までしていたのか…」


カリノフに追撃隊の準備や、国民への宣言などやらせなければならない話も終わり俺はガルバルと気楽に話している。テイニーもこっち側についたようだ。今はガルバルとの会話に混ざってきている。


「そういえば、彼女と戦闘中貴方の髪が赤くなっていませんでしたか?」


ずっと空気だったシェリルが質問してきた。


「あー… あれは、今まで斬ってきた奴らの返り血です… 身長差あるんで首落とすと血が降ってくるんだよー。戦闘が終わって水で流した」


「え… あんな鮮やかに赤くなるんですか?」


「か、角度によってはそう見えたり?」


「それより、ゼロ君! この吸血鬼は拘束しなくて大丈夫なのか?!」


そうテイニーが叫ぶ。


「エストリーはもうお兄ちゃんのモノだから! 服従しているから大丈夫だよ!おじさん!」


服従させたの…? そんなシェリルの呟きが聞こえてきた。横では「おじさん…」とテイニーが呟く。


「ふざけた事ぬかすな年齢詐称。敗者は敗者らしくもう少し小さく丸まってろ」


「やーん! 丸まるー!」


そう言って俺の上に乗ってきやがった。



まだ中継が出来る者が来ないうちにフェリスも戻ってきた。


「ご主人様!フェリス、これ以上無い最高の結果で帰還致しました!これ、お土産です。

はっ! ご主人様が幼女を膝に乗せて…!ま、まさか… そんな。正気に戻って下さい!」


いきなり右手にぶら下げてたおっさんを投げつけてきた。


「危な! おっさんは投げるもんじゃねぇんだぞ! あと、俺はロリコンじゃない!」


「浮気です!まだシェリルさんなら分かりますけど、こんなに幼い子を奴隷になんて!」


「なんか頭の中で色々と飛躍しすぎだ!」


「ふっふっふ… エストリーはもうお兄ちゃんの玩具なんだよ!」


「はぁぁぁあああ! おい!ガキ!表出ろや!」


「しゃー! お兄ちゃんに負けて悔しいからお姉さんボコボコにしてやんよ!」


そう言ってテントを出て行く二人。

エストリー…  また君は敗北を知る事になるよ…


シェリルは「わ、私はゼロさんの奴隷になんて…ならないんだから!」とか言ってるし、足下に転がったおっさんも意味不明。カオス過ぎる。


ここからおっさんについてテイニーに教えてもらったり、ボロ雑巾みたいになったエストリーが戻ってきたり、殺気立ったフェリスを宥めたり、シェリルを現実に戻したり大変だった。


落ち着いて来た所でようやくカリノフが一人の男を連れて戻ってきた。


「ゼロ君お待たせ!おや、フェリスさん。え!Sランク冒険者のパールが何故ここに!?」


「いーから。早く国民を安心させてあげて。今回は声付きで」


「あぁ、では頼むぞ」


そう男に指示を出し勝利会見が始まった。



————————————————————————————————————



私は最初からゼロさんの活躍をみてきた。彼は凄まじく強かった。

私たちを虐げた者が軒並み死体になっていった。さすがにあんなにたくさんの死体を見て気分が悪くなったが私たちの為にやってくれている事に目を逸らす事だけは出来なかった。

皆も同じ思いなようで辛そうな顔をしながら決して目を逸らさない。


しかし、小さな女の子の皮を被った化け物を見たとき私は心臓が締め付けられる思いがした。

物知りなおじいさんがアレは吸血鬼だと言っているのを聞いてしまった。

ヘイアス様は吸血鬼まで使って自分の権力を確固たる物にしようとしているのか!私達の自由は無くなってしまう、そう感じた。

しかし、彼は勇敢に吸血鬼に立ち向かっていった。彼が吸血鬼と交戦を始めてすぐ映像が途絶えてしまった。


一体どのくらい経ったか、誰もが絶望を感じているが今いる場所から動けない。早く結果が知りたい、そんな沈黙で会場は満たされている。


すると突然今まで映像が映っていた空間がぶれた。

皆が騒ぎ始める。決着がついたんだ!どうなったんだろう。彼は無事なのかな…


そんな時声が聞こえた。これはカリノフ様とあの少年の声。


「繋がりました」


「ご苦労。ゼロ君、これで国民に映像と声が届くはずだ」


「おー。凄いっすね!今度やり方教えて下さいよ。おっと、そんな事言ってる場合じゃない。

さ、カリノフ様、国民が待ち望んだ結果を教えて差し上げて下さい」


「う、うむ。アレナ共和国の諸君! 闘技大会は終了した!勝者は、私の戦士であるゼロだ!!」

少しの沈黙の後割れんばかりの歓声が広場を包んだ。

別の会場でも同じだろう。


「遠くからいくつもの歓声が聞こえている。ちゃんと言葉は届いているようだな…

ヘイアス一派は1,000人を超える騎士を使い、さらには吸血鬼をけしかけ何としてでも闘技大会に勝利しようとした。しかし!何とゼロ殿はそれを一人で打ち破ってしまった!吸血鬼は死んではいないが既にゼロ殿の支配下にいるので安心して欲しい!」


そう言い映像が移動した先にはボロボロになった吸血鬼が横たわっていた。


「しかし、ヘイアス一派はまだゼロ殿が戻られる前に自分の勝ちを勝手に信じて自分の屋敷に戻っていった。今私の兵を使ってヘイアス、サボンテ、ヘルトームは捕らえに行っている。

屋敷は既にゼロ殿の仲間が無力化しているそうなので奴らに反乱を起こす事は不可能だ!

これより私は王城に入る!まだ正式な王位継承は行えないが、これだけはいえる!アレナ共和国はこれより平和を主軸に置いた国民を第一に考える国に生まれ変わるのだ!」


「おーい。ちょっと水を差して悪いんだが、僕からも一言良いですか?」


「あ、あぁ。もちろん。頼むよ!」


そう言って登場したゼロを見て先ほどの勝利宣言を超える歓声が上がった。

そんな彼は満面の笑みで言った。


「カタリナちゃーん!見てるー?」


私の名前を彼は呼んだ。何?何なの?

そう混乱していると彼は一つの果物をポケットから出した。


「あ!」

私は彼に渡した事をすっかり忘れていた。


そのまま果物を二つに割ってカリノフ様に手渡す。

そして二人で齧り付いてくれた。


「うん。旨い。自由の味だ!!」


その言葉を聞いて私は泣き崩れた。



—————————————————————————————————————



屋敷の前に戻った私は違和感を覚えた。

誰も私を出迎えに来ない。門番がいないのは何故だ?


疑問に感じながら護衛をつけ剣を抜き屋敷に向かう。近づくと濃い血の匂いが私の鼻を刺した。


「何が起こった!」

そう叫んだ私は屋敷の扉を蹴破る。

中は血の海だった。私が用意した兵は一人残らず死んでいる。拳で殴られたようだ。原型をとどめている者は皆右手が切り取られていた。


ある集団が我々に反旗を翻していたのは以前から報告があった。ソイツらは必ず右手を切り取るのだ。殺し方が様々なので集団の犯行と断定していた。カリノフの手の者だと思うが奴の側にいたのは闘技大会に出ているガキだけだったはずだ。一体誰が?


「いや。以前から蠍はカリノフと繋がっていたのか!!」


そう考えると先ほどのガルバルの行動にもカリノフの娘が無事だったのも合点が行く。

奴は私から仕事を受ける前からカリノフと繋がっていたのだ。

あれだけ甘い蜜を吸わせてやったのに。盗賊とはどこまで頭が悪いのだ。

こちらの勝ちは揺るがないのに目先の利益に釣られたのだろう。


しかしここでおかしな事に気付いた。

ここにはパールがいる。Sランク冒険者の彼がいくら数が多いからと言って蠍にやられるとは思えない。


(なぜ私の兵以外の死体がないのだ…)


取りあえず注意深く屋敷を見て回る。見て気付いたが、侵入者は一人のようだ。では、蠍の犯行ではない…?

一人でこの数の兵を殺すなどそれこそSランク冒険者のような実力だ。


(奴も私を裏切った? いや、まさか。それはあり得ないだろう)


侵入者の痕跡を追うと一つの部屋にたどり着いた。

注意してそっと部屋を開ける。

そこには血の跡とパールの愛刀が二つに折れて転がっていた。パールはどこにもいない。


「パール! どこだ! まさか、パールが拉致された…のか?

 あ、あり得ない… 一体何が起きているのだ… Sランク冒険者を拉致などできてたまるか!

 悪夢だ。こんなモノは夢だぁぁぁぁ!!」


近くで青い顔をしている護衛に怒鳴りつける。


「おい!早くサボンテとヘルトームを呼べ!今の状況を整理するんだ!!」


いつまで待っても二人は表れず、代わりにカリノフの兵が私の屋敷をとり囲んだ。

その時、私は相手にしてはいけない化け物と関わってしまったと心の奥で理解したのだった。


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