狩り
さて、闘技大会が始まりました。
内容は『子ども探し』
闘技大会じゃないよね。煽りすぎたか? なりふり構わず完全に俺を負けさせる方法を取ってきたな…
国民納得しないだろ… まぁ、映像だけ流してるらしいし、闘技大会の内容も説明して無いんだろう。後で無理矢理黙らせるんだろうな… コスいわー。
神級装備… 使っちゃおうかな… <下駄>ならバレない気がする。
<パーカー&バロウ>も早撃ちすれば問題ないか。 なんかいけそうな気がしてきたぞ!
とりあえず、開幕の皆さんの歓迎に応えなければいけない。
剣を持っている者は闘技場に降りてきて、杖を持つ者は遠くから魔法を使おうとしている。
この懐かしい感じ。PC時代によくやった多対一の構図だ。
ここにいる奴らはそれの劣化板。こんな状況にあった者はこの世界でいないだろう。
取りあえずこれで殺せると思ってるんだろうな…
甘い、甘すぎる。ここにいる奴らはスキルを奪って皆殺しだ。
PCでのQTに意識が変わっていく。コイツらはプレイヤーだ。
世界が俺の中で確実に変わった。
まずは後ろの魔法使いのバフを防ごう。最初から全開だ。
「炎よ 廻れ」 闘技場の観客席に炎が音をあげて燃え盛る。
「ぎゃああああ!」「み、水魔法を!」「威力は大したこと無いぞ!」
などど叫ぶ魔法使いサイド
「こ、こいつ!魔法を使えるのか!」「囲め!」とアタッカーも叫んでいる。
魔法を発動させた俺は不真面目そうな奴から斬っていく。一人も逃がさないからだ。
(もう少し連携とれよ…)
敵は勝手に自分がやりたいように剣を振っているだけ。
俺は同士討ちを誘発し、魔法使いの補助魔法を割り込んで自分で受ける。
そんな感じで20分程。4割は殺したか。そこでようやく実力者とおぼしき男が
「こいつは大人数の戦闘になれている!皆もっと考えて行動しないと俺たち全員屍だ!」
と叫んだ。
(そうそう。そうやって皆で一人を倒すって意識を持たせるだけで良い効果が生まれるんだ。
でも、そうはいかないんだよなー)
連中は無闇に突っ込んでくるのを止めた。また俺を囲んで睨んでいる。
中継しているそうだが、何か頭上で小さい気球のような物が浮かんでいるのを俺は確認していた。おそらく誰かが自分の意志で動かしているタイプのアイテムなのだろう。
(中継も撒くか… こっからはヘイアスの部下の死体を映す仕事をしてもらおう)
「闇よ 隠せ」「風よ 遮断しろ」
そう唱えた俺の足下から黒い霧が発生し、一瞬で闘技場を包み込む。
視界を遮り、音が発生しなくなる。
またしても混乱に陥る連中に俺は駆けていった。
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「ま、魔法をあそこまで使いこなす剣士だと…?」
そう呆然と呟くヘイアス。
私はちらりとカリノフを見ると彼もまた呆然と口を開けて中継を見ていた。
(奴にも隠していたのか… こっちがなりふり構わない手段に出たことによって彼を本気にさせてしまったようだ…)
私テイニーはたった一人の敵にしてしまった少年に今までに感じたことの無い恐怖を抱く。
私は人の顔色をうかがって生きてきたので、ヤバい人の気配には敏感に察知出来る。
最初にあったときと今日あったときの彼の雰囲気は全く違っていた。
今、彼は魔法を使ったのだろう。闘技場が黒い霧に覆われて見えなくなる。
「なにが起こった!」
この中で唯一女性のサボンテが叫ぶ。この人は叫ぶだけで害はないのだが、聞いていて疲れる声だ。
「視界を遮る魔法だろう…」
そうヘイアスが唸る。
「どうする! このままでは… カリノフ! よくもあのガキが魔法を使えることを黙っていたな!」
「落ち着かんか!! カリノフを見よ! こやつもあの子どもが魔法を使えたことは知らなかったのだろう。確かに予想以上の怪物だったことは確かだ! しかし、我々はそれ以上の怪物を用意しているだろう! 少し予想外のことが起こったからといって一々取り乱すな!!」
「っぐ! も、申し訳ありません…」
そう言って座るサボンテ。
数分後霧が晴れた。
しかし、そこにはゼロはいない。
闘技場は血の海だった。生きている者が一人もいない。
闘技場の中央には何故か3人の男女が槍で串刺しにされて吊るされていた。
その3人はヘイアスとその派閥に所属する2人の身内であった…
(何故、彼はあの3人がコイツらの身内であると分かったのだ!? しかも、あんな混戦の中で特定の人間を選んでどうにか出来るモノなのか!?)
3人はその恐ろしい行動に気付かず怒りで肩を震わせる。
(これはタイミングを見てカリノフに寝返るべきだ。ヘイアスが用意したアレも負ける気がする…)
そう思ったのだった。
ちなみに、ここから中継で飛ばした気球はゼロを見失い、ゼロを探す為に彷徨う。これから映す物はゼロの苦しむ姿ではなく、ヘイアスの一派の部下の死体に変わる。
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俺は闘技場でお掃除を終えて<情報開示>で選んだ奴でオブジェを作ったあと<下駄>を装備し、空中に飛んだ。
空から街を見渡し、広さと敵、そしてメインターゲットの位置を<気配察知>を全開にして探す。
「敵はっと… うは! まだ1,000くらいいるじゃん!どんだけ集めたんだよ!
この数全部殺すのは時間がかかるな… 罪が重い奴と身内を殺すか…
で、ターゲットはっと…… あれか?」
ここから北に進んだ教会のような建物に一人の少女がいた。
紛れも無く少女だ。だが…
「まぁ、会って確かめますか! その前に狩りだね」
少女の気配を覚え、俺はこの街の形をある程度記憶し地面に降りる。
街を駆け、殺したい奴の所に向かう。途中で見つけた敵は問答無用で斬る。
ターゲットは見せしめで吊るしたりしてさらす。
街は静かなものだ。俺は一太刀で敵を殺すので俺を発見してもすぐ死ぬ。
皆3、4人で行動しているので混戦になることも無い。
闘技場から離れた所ではもう俺は死んでると油断しきって酒を飲んでいる奴もいたくらいだ。
2時間くらい経っただろうか。もう何人切ったかなんて覚えていない。
途中から身内はオブジェを作らず、中継の気球に向かって首を投げるだけになった。
やるべき奴らをほぼ掃討し終わって、最後の狩りの場に足を運ぶ。
40人程がたむろしている廃墟を見つけた。全員相当な罪を貯めている。
一人は今まで見た中で一番の禍々しさだ。
「あれは… サソリの連中か!?」
そう、シェリルを誘拐したサソリ。その残党っぽい。
フェリスにサソリの構成員っぽい奴を結構殺したと報告は受けている。
「親玉きたー!! ちゃんと参加してくれるなんて。意外と義理堅い奴なんだな!」
俺は廃墟の壁を走って壊れた壁から中に入る。
中では連中がいつ動くか、もう死んでいるのでは?などと話していた。
俺はわざと着地音を立てる。
トンッ!!
全員の目が俺に向く。
「蠍の方々ですか?」
「お前…」
そう言い出した男の前に俺は洞窟で奪った物で特徴的な物をいくつか地面に放る。
「それはっ!! やっぱりお前がぁぁぁ!」
「これは金にならなかった。返すよ」
怒り狂った連中が武器を抜く。
「おい…」
リーダーであろう男が口を開いた。
「なに? 大将」
「てめぇが俺の仲間とアジトをやったのか?」
「あぁ、あのプレゼント見てくれた? ちゃんと埋葬したぜ?」
「そうか。蠍はこの国で恐怖の象徴として君臨し続けてきた。それをコケにしやがったお前は絶対に殺す。自分から来た根性は認めるが、ここにいる連中はアジトにいた奴らとは次元が違うぞ」
「いいねぇ。待ってたんだよ。そういうの! 遊ぼう」
「貴様、狂ってんな… よし、殺せ」
蠍との決着を着けますか…




