2章の始まり的な
ホウガンを出て2日。
俺たちはのんびりとアレナ共和国への道なき道を歩く。
時々<パーカー&バロウ>で空を見上げ、盗賊を狩って贖罪値を貯める生活を送っている。
「大きな〜」 「大きな〜」
「歌だよ〜」 「歌だーよ」
「あの山ーの〜」 「あっの山〜のぉー」
「向こうからー」 「向こうーかーら〜」
「聞こえて」 「聞こえて〜」
「「くぅるぅだろーーーー!」」
「「大きなー! 歌だよぉぉぉぉ〜〜〜〜」」
最近暇で練習してた「大きな歌」を無駄に奇麗にハモりながら歩く。
「はぁ、なんか、馬欲しいわー。歩くの疲れたよ、パトラッシュ。 盗賊の馬奪うか…」
「馬持ってる盗賊ですかー。 逆に待ち伏せして襲います?」
「だったら歩くよなー。 まぁ、運良くエンカウントすることを祈ろう。
モンスター召還して乗る訳にもいかないしなぁ…」
今俺たちは森を歩いているが、進むに連れて太くて長い木が減ってきて見晴らしが良くなってきている。そろそろ平原なのかなー。
「アレナ共和国ってどんな所なんでしょうねー」
「俺の予想は、世紀末都市かゲリラの跋扈する紛争地帯だ。
目出し帽を被って肩にRPG担いでんだ」
「RPGってなんです?」
「武器」
「なんか、最近言葉が少なくないですか?」
「話すことねぇんだもん」
「じゃあ、ご主人様の幼少期とお母様について教えてください!」
「よし!聞け!
俺の母様は一言で言うなら聖女だな。優しくて美しいのだ。常に若々しく気高い!誰に聞いても理想の母親と言うこと間違いなしだぜ! お前にも優しくしてくれるぞー。 あぁ、今どこに浮かんでいるのです…」
「なんか、ただならぬ愛を持ってることは分かりました」
「幼少期は母様の目を盗んで森で狩りをしてたよ。ステータスあげる為にな。村には<詐称>で姿を変えて時々潜り込んでた。一人ステラさんっておばあさんが村から俺たちの様子を見に来てくれたんだよ。まぁ、あの糞魔法使いに殺されちゃったけどな…」
「なんか、楽しそうではありますね… そういえば、お母様を見つけた後の予定を聞いて良いですか?」
「えっと、皇国を支配して、隣国も支配。で、魔境にいって魔神を殺し、神の国も支配して真理の探究者ってのになるんだ」
「………お伽噺かぶれかよっ!!」
「違いますぅ! ちゃんとなれるんですぅ! おい! ガルー!お前の力奪った奴って女だろ?! そいつ、声だけ聞こえて姿を見せなかったとかじゃないか?」
『おぉ! その通りだ。 貴方は削除すべきデータです、とか言われた気がするぞ』
「また核心つくこと言ってくんな、あいつ! なんでガルーを生かしたんだろ… 取りあえず、俺はこの世界の管理者っぽいのと知り合いなんだ。で、そいつから与えられたミッションってのが真理の探究者になることっぽいんだよ」
「………へー」
「何だ!その目は! やめろ!そんな目で見るなよ! 見てろよ。どーせ俺と行動してりゃいつかお前も会うよ!」
「タノシミニシテマス… あ!あともう一つ! ギルドって何ですか?」
「ギルドってのはなー 話せば長いんだよ…」
ギルドの作成方法だが、普通は一人のプレイヤーがギルドマスターになり10人以上のプレイヤーがギルドメンバー(ギルメン)になり、拠点となるエリアを持っている、という3つの条件が必要になる。
では、俺はどうやって一人だけでギルドを立ち上げたのか。それは後で話すが、これにも「称号」が関係している。
ギルドが作られるとギルマスはギルド武器というちょっと特殊な武器がゲットできる。ギルド武器は領地を広げたり、攻略困難な場所を支配したり、メンバーを増やすと強化される。デザインは課金をすれば自分でできる。俺はもちろん課金してカッチョ良い武器を作ってやった。
巨大なギルドのギルド武器はぶっ壊れ性能を持っている。俺のギルド武器もかなり壊れた性能があったり…
ギルドを作ってもギルマスにはギルメンに対する強制権は得られない。
つまり、ギルメンは裏切りOKなのである。
俺はこの裏切りはよく使った。
それが原因でギルドメンバーの選抜方法が細かく設定された程の事件を起こしてしまった。
なので、ギルマスは裏切りが怖いなら闇魔法のギアスをかける必要がある。
ちなみにこのゲームではギアスをプレイヤーにかける場合は命令内容を相手が受諾する必要がある。
ギルド同士での戦いもする事ができる。「戦争」と呼ばれ、相手のギルド武器を破壊したら勝利。勝つと相手のギルドを奪える。
負けたメンバーは「敗者」という称号が付きペナルティが負わされる。
ギルドの増築や改装はゲーム通貨の「マネー」と鍛治師のスキルを使えば行うことが可能。トラップの設置は罠師というスキルが必要だったりする。俺は持っていない。NPCに与えたんだよね。
NPCは普通はギルドの大きさに比例したポイントが与えられ、そのポイントを上手く使ってレベルや人数を決める。レベルは最大で999まで。種族は自分たちが今まで倒した事のあるモンスター(ボスなどの特殊なモンスターをNPCにする場合は追加でポイントが必要)レベル999はどんなに大きなギルドでも原則10体まで。ボスモンスターは原則各階層に2体まで、なんていう感じだ。
また、ギルドメンバーが多い程作れるNPCの数は減る。
しかし、命令通りにしか動かないNPCは所詮壁だ。だったら自分で考えてくれるプレイヤーが多い方が良い。
そんな当たり前の理由でNPCがギルド戦で重要視される事はなかった。
ここで大きく話は戻るが、何故俺が個人でギルドを作る事ができたのかという理由について説明しようと思う。
それは[ギルド狩り]、[特権所有者]、[絶対支配者]という称号が関係している。
この称号を持っているのは数多くのQTプレイヤーの中で俺だけだ。
[ギルド狩り]は50以上のギルド武器を己の手で破壊した者に送られる称号である。
この称号の効果はギルド武器の効果を持った武器を得る事ができるということ。
つまり、俺はギルドを作ってギルド武器を手に入れるのではなく、ギルド武器の効果を持つ武器をゲットしたからギルドを作れたということだ。
そして、ギルド武器を手に入れた俺はたまたま発見した超レアな空中都市のダンジョンを攻略して自分の支配下に置き、ギルド武器でギルド作成を試みた。
そのときに手に入れた称号が[特権所有者]である。
効果は他のプレイヤーがメンバーにならなくてもギルドとして認められるというもの。
ボッチの俺が勝利した瞬間である。
普通の人なら仲間いないのにギルドとか何の意味があるの?と思うだろう。
自分しかいないのなら他のギルドに攻め込まれたら速攻陥落して珍しい拠点を取られてしまうのではないか、と。
しかし、俺はその問題をクリアした。
一つ目は空中都市という点だ。
QTにはもちろん魔法は存在する。なので空を飛ぼうと思えば飛べるのであるが、意外と使い勝手が悪くあまり取っている魔法使いを見かけない。
というのも、ほとんどの魔法使いは魔法を複数同時に起動できないからだ。
魔法を複数起動する為にはまず魔法使いの上位職である魔術師にならなければならず、さらに<二重詠唱>のスキルを発現させなければならない。
この<二重詠唱>スキルを得るには称号が必要らしい。
つまり、多くの魔法使いは飛行の魔法を使っても飛ぶ事しかできず地上の遠距離攻撃ができる奴らから集中攻撃を受けてしまうのだ。
さらに、空中都市は相当高いところにあるので普通は飛んで目指すと魔力がギリギリもたず落下死してしまう。
それらの理由から、そもそも俺のギルドにたどり着ける者が少ない。
そして、二つ目の理由は[絶対支配者]と[特権所有者]によって大量のNPCをギルドに設置しているという点だ。
[絶対支配者]はテイムしたモンスターの種類が150種以上、数が15,000以上かつ召還を10,000
回以上行う、一定以上の領域の支配者となるという条件で得られる称号である。まぁ、[最上位テイマー]と[神級召還師]、[覇王]の複合上位版である。
効果はテイム、召還したNPCを完全に支配下に置き、そのNPCを自分と一緒に行動させる事ができるというものだ。
通常NPCは行動領域というものがあり、そこから出る事はできない。しかし、この称号によりついてくるよう指定したNPCは領域を無視してついてくるようになった。
空中都市でも大丈夫なのかと思ったが、なんとワープしてついてきたのだ。
つまり俺のギルドはメンバーは俺だけで、ギルド権限のNPCも他のギルドと同様の制限に則って作り、そして自分でテイム、召還したNPCを大量にぞろぞろと連れてきた。
これが俺のギルドの内情である。
俺は[神殺し]の称号を持っていて、かつ[絶対支配者]の効力で神をNPCとして12体設置している。
他にもボスモンスターも50体、通常のNPCに至っては500体程設置していて、もはやどのギルドよりも参加人数が多くなっている。まぁ、皆が戦える訳じゃないんだけどね。
そんな感じで防衛戦においては負けるビジョンが思い浮かばない程の布陣になっているのだ。
俺自身もかなり強いしね。今まで2回攻め込まれたけどちゃんと守りきった。
これが俺の天空ギルド ボヘミア城である。 鍛冶、錬成スキル、課金を駆使してチェコで見た城をモチーフに拠点を作り、制圧した時の街はほぼそのままにして城下町っぽくした。
制作期間3年以上。いやー、頑張ったね。
城内トラップとか芸術の域ですよ。
あー、早く戻りてぇ…
「ギルドは… 生前の俺が作った国って感じかな…」
「生前って… 意味分かんないですけど」
「まぁ、それは追々」
「どんな人がいるんですかー? 神様いるんですよね?」
「おう。儂が作った」
そんな話をしてた時、森が開け目の前に草原が現れた。
「おぉ! 新ステージだ!」
「そして、新イベントです!」
そう言ってフェリスが指を指す。
そこには馬に乗った男達がこっちに向かって走って来ていた。
当然のごとく頭にはドクロが浮かんでいた…




