組合長の極秘依頼
俺とニーナは組合長のチャーリーの部屋に通された。
椅子に座りお茶を出されたところでガルーが俺に話しかけてきた。
『主よ。目の前にいる男だが、貴方に対してあまり良い感情を持っていないようだな。
なにか、強い警戒や疑いの心を感じる。何かを企んでいるようだぞ』
(マジかよ。なんでだ? もしかして魔法使いのおっさん殺したことバレたか?)
「では、早速依頼についてお話をしてもよろしいですか?」
「内容の前に確認したいことがあります。
組合長がこうやって他人のいない場所で話したい依頼ということは、他言無用な内容なのですか?」
「えぇ。依頼の内容は他言無用でお願いします」
「依頼の期間は?」
「およそ2日です」
「フェリスは参加させなければならないんでしょうか?」
「いえ。あくまでも貴方に頼みたい依頼なので、フェリスさんはいなくても結構ですよ?」
「よし、フェリス。今回の依頼は俺だけで動くからお前は部屋を出ろ。
組合長。当然依頼の内容はフェリスには伝えません。安心してください」
「そうですか… まぁ、依頼の内容はフェリスさんに言わないのであれば問題はないですね」
「分かりました。では、下で待ってますね」
そう言ってフェリスは頭を下げ部屋を出た。
「では、貴方は私の依頼を聞いて頂けるんですね? でしたら早速依頼のお話をさせて頂きたいんですが」
「かまいません」
「ありがとうございます。 今回の依頼は、貴方と他8人の冒険者で森の調査をして頂くというものです。最近モンスターが強くなっているという報告がちらほら上がっておりまして。
その真偽について確かめて頂きたいんです」
「8名と調査ですか… 僕は集団での行動を好まないんですよ。合う合わないが激しくて…」
「それは問題ありません!私が安心して紹介出来る素晴らしい人たちですから!」
「そうなんですか… 一応顔合わせをしたいんですが、可能ですか?」
「えぇ。貴方が参加してくれたらすぐ出発出来るように皆この街に滞在してもらっています。すぐ呼び出しますよ」
「ありがとうございます! では、我がままを言って申し訳ありませんが、お願いします」
「はい。では、お昼ごろもう一度組合に立ち寄ってください」
「はい。分かりました」
冒険者組合をフェリスを連れ宿に戻る。
ガルーにチャーリーから感じた俺に対する疑いについて聞かなければならない。
「俺とチャーリーの話は聞いていたな?」
「はい。あの程度の距離なら聞こえます」
「そんなわけで、俺は組合長の依頼を受けることになった。ガルーが気になることを言ってたから何かが起こると思う。恐らく、俺が殺したこの国のトップと俺の繋がりを掴んだんだろう。そうなると、やっぱり一緒に来る奴らに何かあるんだろうな。」
『アイツから感じたのは疑いと警戒だ。それほど強いものは感じなかった。だが、何かをしてくるのは確実だな』
「とりあえず、これから会う奴らのステータスを確認してからお前らにはどう動いてもらうか指示するから」
「はい」 『承知した』
宿の近くで昼食を食べ、フェリスにはイグノーの店に向かわせた。
姿が確認出来ないと難癖を付けられても困るからな。
冒険者組合に入るとすぐ組合長室に通された。
開けるとそこには8人の男女が座っている。
「やぁ、ゼロ君。この人たちが今回依頼を君とやってくれる冒険者達だ」
「よろしくお願いします。ゼロです。僕が一度も会ったことの無い人しかいないなんて珍しい。相当重要な任務のようですね」
「う、うむ。秘蔵の精鋭を揃えたんだ」
「普段は皆さん首都にいるんですか?」
「いや、俺たちは流れ者だよ。8人のチームなんだ。チャーリーさんに恩があってね。たまたま立ち寄った時に頼み事をされちまって。
俺はこのパーティーのリーダーのウラゴスだ。よろしくな。小さな冒険者さん」
「8人の冒険者パーティーですか! 凄いですね!」
「君も相当な腕だと聞いているよ。チャーリーさんの紹介なら信頼出来るし、なにより冒険者とは思えない程丁寧な言葉遣いだ」
「ウラゴスさんも僕の出会った冒険者の中で一番と言っていい程知性を感じる話し方です!」
「っ!! ま、まぁこの世界が長ければ言葉遣いに気をつけることも必要だからな」
「どうだい?ウラゴスは人格者だ。君が気にすることは無いと思うよ?」
「そうですね! では、依頼を受けさせて頂きます!」
「ありがとう。今日は準備もあるだろうから明日の早朝、門の前に来てくれ」
「はい。皆さん、よろしくお願いします!」
俺はそう、8人の『騎士』に挨拶した。
宿に戻って。
「今回一緒に行く連中は全員騎士だった。しかも、一人は聖騎士だ」
「え?! なんで騎士が?」
「組合長が俺を怪しんでいるからだ。首都に直接連絡して呼び寄せたとは考えにくいから、何か伝手を使って秘密裏に呼び出したんだろうよ」
「どうするんですか?」
「俺を怪しむ奴は邪魔だ。死んでもらうさ。騎士も、組合長もな」
「組合長もですか!?」
「あぁ。 この街で俺を怪しんでるのは組合長だけだ」
「なんでそんなこと分かるんです?」
「俺には<信用獲得>ってスキルがある。それはある一定以上の好意を持つ者に俺の言葉を信じてもらうスキルだ。この街の人間の殆どは俺を信頼しているからな。俺ことを疑う奴はいない」
「貴方が持つと本当に凶悪なスキルですね…」
「で、お前にはここに留まって、明日の夜に組合長を拉致してもらう。
屋敷に護衛などがいたらこれを使って殺せ」
そう言って俺はフェリスに以前村で殺した騎士の剣を渡す。
「なんでわざわざ剣で?」
「これは皇国の騎士が持つ剣だ。今回騎士は冒険者と身分を偽って街に入っている。しかし、そこで事件が起これば奴らが騎士ってことはバレるはずだ。
そこで、その事件っていうのが騎士の剣で組合長が殺されたってモノだったらどうなる?
しかも、俺がいきなり一緒に依頼を受けた冒険者に襲われたなんて言ってみろ。
その依頼は組合長からの極秘依頼。しかも、同行者が騎士だったという感じの言葉を匂わせておけば街の人間は首都から来た騎士が何かこの街に被害を与えようとしてるとか思うんじゃないか?」
「よくわかりません」
「まぁ、後でガルーにでも説明してもらえ…
取りあえずお前は明日の夜、組合長の家を襲撃して組合長を拉致。なるべく速くやること。
そこで邪魔する奴がいたら今渡した剣で殺れ。
後で話す小屋に連れて行ったらお前は知り合いを飯にでも誘ってアリバイを作れ。
その間に俺が騎士に化けて街に戻り組合長の家に行く姿を周りの人間に見せる。
で、組合長のいる小屋にいってお話をするから。
お前はその時間は大人しくしてろよ。なるべく多くの人間にお前の姿をみせるんだ。
分かったか? 分からなかったらガルーに聞け」
「分かりました! 後でガルーに聞きます!」
「おう。期待してるよ。 …ガルーに」
明日は久しぶりの狩りだ。
これが成功すれば予定より早くこの街を出れるだろう。
まったく、俺にちょっかいを出さなけりゃ生きていられたものを…




