奴隷に己の立ち位置を説明した
新たにブックマークして下さった6名の方、本当にありがとうございます!
もうすぐホウガンでの話しはひとまず終わりになりまして、次の舞台に移ります。
年内には主人公の最初の目的を達成したいなと考えております。
宿に意識が戻った俺たちはベッドの上で向き合って座る。
「ちゃんと説明してください」
「えっとね? あの神はガルーって言って、悪い事して力を封印されお前の中に封印されたんだ。
で、俺はちょっと彼とお話しして彼の封印を解く協力をする変わりに彼にも僕の目的を手伝って貰う事にしたわけ。 でも、彼は君の中から出られないから彼の力を君に渡して、君が彼の為に働き、そして君が僕の為に働く事になったってわけ。 分かる?」
「私の意志は…?」
「ないよ。だって俺に仕えるならどうせ冒険者として生きるんだ。お前は何もしてないのに神の力手に入れるんだぞ?
感謝こそすれ恨まれるのはおかしいでしょ。
死ぬしか無い地獄から、死にものぐるいで敵と戦う天国に変わったのさ」
「それも地獄ですよね?」
「それは気持ちの問題だな」
「はぁ、どうやってその神の力を借りるんです?」
「力自体はもう譲渡されてるはずだ。 でも使い方を理解していないんじゃ意味が無い。
なので、今後定期的にあの世界に行ってガルーの指導のもと俺と訓練だ。」
「え? ご主人様とですか?」
「おう。俺とやり合えるようになったら神とかマジで殺せるようになるぞ」
「そんな力いらないよぉ… うぇぇぇん」
「泣かないでよ…
取りあえずは装備だ! ちょっと待ってろ!」
俺は久々に<買い戻し>を発動させて<オリハルコンの塊>と<風帝のブーツ><妖精王の羽衣>を買う。全部で白金貨5枚。痛い。
俺は<鍛冶>スキルを使い<オリハルコンの塊>をグローブに作り替える。更に<錬成>で風魔法を籠めた。
「ほら、今日からこれがお前の装備だ。魔王がつけてたヤツで結構いいヤツなんだぞー」
そう言ってベッドの上に放り投げる。
「ありがとうございます! 何も聞こえませんでした!」
「よし! 良い心構えだ! 慣れていこう!
次はお前用の安い装備を買いに行きつけの店に行くぞ!」
「え? 今装備をくれたばかりなのに?」
「はぁ、どこの世界に魔王の装備した奴隷がいるんだよ… お前魔王なの?って話になるじゃん。
これから普通の装備を買って、それと同じ見た目にこれを変化させるんだよ。
他人の目には初心者装備をつけているように見せるってわけ」
「なるほど。 でも、見た目なんて変えられるんですか?」
「うん。そこは別に気にしないで」
「はい」
「じゃあ行くぞ。ついでに飯も食おう。買ってやった可愛い服着なよ」
そう言って宿を出るため準備をし、部屋を出て鍵をお姉さんに渡す。
「今日はゆっくりなんですね。あら、ずいぶん可愛らしい奴隷さんですね」
「えぇ。彼女が不安にならないよう互いにちゃんと自己紹介をしてこれからの事を話していたんです。 彼女はフェリスと言います。仲良くしてあげてくださいね。
可愛い女の子には相応の服を着せてあげないと」
「なるほど。 それは素晴らしいです! こんにちは。フェリスさん。彼に拾って頂けるなんて本当に幸運ですね。彼はこの若さで人格、実力ともに素晴らしい方です。
ちゃんとお役に立てるようにするんですよ?」
「っえ? は、はい!」
そんな事を言われ宿を出る。
一緒に街を歩くと色々な人から声をかけられる。
フェリスも人気だ。
俺の人気と対応に驚いているフェリスは「皆、騙されてますよ…」と言っていた。
こうしてイグノーの店に入る。
「イグノーさん。こんにちは」
「おぉー。ゼロ君。久しぶり。グースの事は大変だったね。だが、あまり気に病む事はない。あれは天罰とも呼ぶべき出来事さ。
あと、獣人の女の子を保護したんだって? もしかしてその子かい!?
ずいぶん上等な服を着せているんだな。」
「そうですか? 別に普通ですよ。女性の服にお金をかける事はね。
ほら、フェリス。彼はこの街で一番の商人で僕に親切にしてくれているイグノーさんだ。挨拶を」
「は、はい! フェリスです! よろしくお願いしましゅ!」
噛んだな…。
「ははは。初めまして、フェリスさん。奇麗な髪をしていますね。
今日はこの子の為に店に来たんですか?」
「えぇ。今はこんな格好をしてますけどこの子にも僕の仕事を手伝って貰おうと思ってまして。
中級装備を一式と彼女は格闘術を使うそうなのでグローブとブーツをお願いします」
「分かりました。ちょっと待っててね」
そういって奥に消えていく。
「宿の部屋を出てからまるで別人ですね」
「はっ! 時と場合と人で態度を変えるのは自分を生きやすくするのに必要な技術だ」
「そうですが… なんでしょう、なにか間違っている気がします」
「良いんだよ。みんな幸せなんだから」
「はぁ… そう言えば、先ほどからグースという男の名前を良く聞くんですが、誰なんです?」
「ん? この街にいた冒険者だよ。 悪い奴でなー。 俺と一緒に依頼に行ったら別行動してる間にオーガに殺されちまったんだ」
「ご主人様… 貴方… もしかして」
「まぁ、そんなところだ。 これからも似たような事やっていくから。手伝ってね」
「貴方が一番罪深いですよね」
そんな事をヒソヒソ話していたらイグノーが戻ってきた。
「どうぞ。これなら大丈夫だろう。 値段はいつも世話になってるから大金貨5枚でどうだい?」
「そんなに安くして頂けるんですか?」
「あぁ、この前のお礼も兼ねてね。」
「あぁ、あいつですか。あの後どうなりました?」
「騎士に渡して首都に連れて行ってもらったよ」
「馬鹿な奴でしたよねー」
以前自分が捕まえた麻薬密売人を思い出す。
「また困った事があったら頼むよ」
「えぇ。いつでも仰ってください。じゃあ、また」
俺はお金を支払い店を出る。
その後も二人でどこの店が旨いとか、俺のゲーム時代にやった事とか、これからの修行について話したりして、昼食をとる為の店に入る。
当然奴隷扱いせず一緒の席で食べたいものを頼ませた。
(やっぱり可愛い子だなー)
そう思いながら俺は奴隷契約について聞く。
「なぁ、奴隷契約って具体的になにを縛る契約なんだ?」
「え? そんなのも知らないんですか?」
「奴隷なんて興味なかったしな」
「全てですよ。 この国の奴隷は全ての自由を主人に譲るんです」
「重いな… 『死ね』とか言っても逆らえないわけ?」
「もちろん」
「ひどいな」
「それがこの国の奴隷、特に獣人に対する扱いなんです」
「ふーん。まぁ、それももうすぐ変わるし。もう少しの辛抱だな」
「え? 何ですか?」
「何でも無いよ」
「これから行ってみたい所はあるか?」
「そうですね。まだ早いですので、冒険者組合に行って依頼という物を受けてみたいです! 森で!」
「そうか。良いぜ。 行こう」
会計を済ませ俺たちは冒険者組合に向かい、彼女の初めての依頼を受けにいったのだった。




