神を蹂躙
ガルーのステータスを思い出しながら観察する。
ステータスを見て感じた事だが、コイツは堕とされて力の大半を失っている。
ゲームの神と比べると弱すぎる。正直あくびが出る程だ。
しかも、コイツはゲームと違い自己をもっている。すなわち、こちらを舐めて油断しているのだ。
ゲームのように無慈悲に最適な攻撃をバンバンぶつける事もしないならこの戦いは俺にとってただのフルパワーで戦う練習でしかない。
今後に備えて、自分の体で動いて神級装備を扱う練習だ。
俺は集中力を高め、戦いの流れをイメージする。全ての武器を使いたい。
一応さっきので<断界>の扱いは分かった。
絶対に<閃光>と<潰命>も試すぞ。そう考える。
「どうした? 先ほど我の封印体である小娘に巫山戯た事をいっておったが」
「ん? しつけって所か? まぁ、この後俺がお前の主人になるんだから何も間違っていないだろ」
「ふん! 神を侮辱するのもいい加減に… ぐおぉぉぉぉ!」
ガルーが話している時、俺はガルーですら微かにしか見えない速度で<パーカー&バロウ>を抜いて発砲した。
8発ずつリロードなしで撃てるので、全て後ろ足にぶち込んだ。
4発を貫通弾にして脚の指の間を撃ち抜き、残りの4発を対魔弾にして、すね、膝、腿、脚の付け根にぶち込む。
撃ち終わったら<風纏>に装備を換えて一気に走り、残った前脚を斬りつけながら背中に向かって上っていった。
物理防御力はかなり高いのか<風纏>では傷が付けられない。
しかし、それは予想通りだった俺は背の真ん中当りまで走りまた武器を変えた。
俺の手には輝く白い鞘に納まった日本刀があった。
これが<閃光>
一瞬で抜き、背中を二度切り裂き鞘に戻す。まさに居合いの要領である。
<閃光>はガルーの背骨を断ちガルーの下半身が倒れ込む。
「なんだ?! なにが起こった! 私の防御が破られた?!」
一瞬の出来事に何も対処できないまま驚くガルーの上で流石の切れ味を見せる<閃光>を満足気に見た。 その鞘は先ほどと違って少しだけ灰色になっている。
<閃光>の能力は魔法の切断である。 魔法防御はもちろんのこと攻撃魔法も切り裂く。
鞘に一定時間しまっておくと力が溜まっていき、最大まで溜めれば神級の魔法でさえ切り裂くのだ。
力の溜まった程度は鞘の色から判断でき、白いと力が十分に溜められている事を示す。
しかし、剣を抜いたり魔法を切っていくと力が失われていく。
神級の魔法を5回も切ろうものなら鞘が真っ黒になり中級の装備さえ切れないナマクラになる。
QTにおいて神級の魔法防御は崩せないものというのは有名だった。
魔力を大量に消費するのでプレイヤーが使う場合は魔力切れを待って逃げるのが定石なのだが、神級のボスは基本ずっと神級の魔法防御を展開している。
大技を放つ時に解除するのでそれを命がけで回避してこちらも大技をぶち込むというのが基本的な戦術である。 戦術とは言えないが、魔法防御を崩せないのだからそうするしか無い。
<閃光>はそんな不可能を回数制限はあっても可能にしてくれるもので十分神級と呼ぶに相応しい能力を持っている。
最後の仕上げに俺は<風纏>と<韋駄天の下駄>を装備し、ジャンプした先に見えない足場を作ってガルーの頭上へと移動する。
あっという間にガルーの遥か上に移動した俺は<風纏>から<潰命>に武器を変更した。
<潰命>はハンマーだ。持ち手の部分は毒々しい紫。細長い腕が何本も絡み合った見た目をしており、殴る部分は焼けこげたように黒い巨大な髑髏だ。
<韋駄天の下駄>で足場を作り、それを両足で思い切り蹴って地面へと高速で近づく。
俺を見つけようと上を見たガルーは<潰命>を叩き付けようとする俺に気付き、高火力の風のブレスを吐いてくる。
俺は余裕を持って<如月>を発動し、攻撃を防ぎ驚いた顔のガルーの眉間に<潰命>を叩き付けた。
ものすごいスピードで地面に叩き付けられたガルーは起き上がろうとする。
しかし、<断界>で前脚を切られ、<パーカー&バロウ>で後ろ足を破壊され、<閃光>で背骨を切られて体はダメージでろくに動かせない。頭も<潰命>の効果で上げる事はできず、もがくだけであった。
<潰命>の効果は少し説明が難しいのだが、与えられたダメージに比例して攻撃の衝撃方向に強力な重力を発生させる、というものだ。
今回のように上から叩けば下に向かって重力が増す。
もし右から左にフルスイングしてダメージを与えたら、そいつは左方向に「落下」していくのだ。
上に打ち上げたらそのまま吹っ飛んで帰って来れない。
ここで重要なのはダメージを与えるということ。
つまり、武器や防具で防げば大丈夫なのだ。もちろん受け止めた武器が重力効果であらぬ方向に落ちていく事は無い。 衝撃で吹っ飛ばされてもちゃんと地面に落ちる。
<潰命>はとても重いので気軽に振り回すような武器ではないが、一度攻撃が当たると相手はもうまともに戦えなくなる。簡単に言うなら『使い勝手の悪い一撃必殺』だろう。
自分の生命維持のため魔力を使い防御に回せなくなったガルーに対し、俺は<断界>を担いで近づいていく。
「よし、こんなもんだろ。 話を聞いてくれるな?」
「貴様、その武器の数々は神の武器であろう… どうやって手に入れたのだ!
それもここまで使いこなすとは…」
「人に過去ありってことさ。 俺にとっては神さえ狩猟対象だ。 ゴブリンとそんな変わんないよ。
ここまでやっといて説得力無いけど、別に俺はお前を殺したい訳じゃないんだ」
「いや、それは理解している。貴方が殺すつもりなら我はとっくに死んでいるのだからな」
「まぁ、そうね。 とりあえず、さっきも言ったけど、俺はお前の呪いを解いて力を戻させてやりたいんだ。 取りあえずこれを見ろ」
<潰命>の効果を解除し頭を動かしたガルーに俺は自分のステータスを見せる。
「一番下見てみ?」
「これは! 贖罪値ではないか! 私と同じ罪の証! 貴方も呪われていたのか!」
「そうそう。俺は現実では自分の力を封印されていてね。最初は今日使った武器のうちの全てが使えなかったんだ。でも、この贖罪値をためて少しずつ使えるようになってきてる。
取りあえず、詳しい話をする前に上で閉じ込めてるフェリスをここに下ろしてくんね?」
「分かった」
そう言うと上からドップラー効果をつけてフェリスが降ってくる。
まぁ、精神世界だし死なないだろと思って特に受け止める素振りはしない。
ドーンッ!と凄まじい音が鳴り、ヨロヨロとフェリスは四つん這いになる。
「酷いです… こういうときは受け止めてくれるんじゃないんですか…?」
「いや、逆にね?」
「何意味分かんない事言ってんですか! ここどこです! なんで私の中の化け物と戦ってしかも簡単に倒しちゃってるんですか! だれか答えてー! 神様ーー!」
「おい、呼ばれてんぞ」
「そうだな。おい、小娘、神はここにおるぞ」
「本当に神なのかよ!」
テンションがぶっ壊れたフェリスが叫ぶ。
「おう。彼は悪いことして堕とされちゃった神様、ガルーだ これから仲良くするように」
「いやです!」 「貴方には従うが、この小娘になど従わないぞ」
そう言ってにらみ合う二匹。
「いいか? ガルー。お前の贖罪値を稼ぐのは誰だ?それはな、このフェリスだよ。
贖罪値ってのは罪を背負った者を殺すなり捕まえるなりすると手に入るんだ。
お前は外に出れないんだからフェリスがやるしかないだろ?
だからお前、コイツに力を貸してやれ。何か武器とか使えるといいんだが。何かオススメない?」
「む… それならば仕方ない… そうだな。私の力を使うなら格闘術がいいぞ」
「そうか。フェリス、これからお前は格闘家だ。 頑張れ」
「はぃ?! なに話進めてんですか! 私にメリットあるんですか?!」
「幸せになれます」
「怪しい宗教じゃないんですから! ちゃんと説明してください! 何か私の扱い雑すぎません?」
「うるさいな。 今の状況をちゃんと見ろ! いいか?! これがお前を買った理由だ!
そして、これがお前の住むべき世界なんだよ!」
「死んで地獄に行った方がまだマシだったよぉ!」
そう言って伏せて泣いた。
面白いな、この子。
後ろから呆れた視線が俺を刺す。
早いテンポでギャグと真面目を変えていますが、実際の時間では少し落ち着かせる時間とか取ってると思ってください。




