生まれ変わってもらった
君には死んでもらうね。
そう言われたグラシアは何の反応も示さなかった。
少し経った後
「殺してくれるんですか?」
そう聞いてくる。
「死にたいのか?」
そう尋ねると
「できる事なら死にたいです。 私は不吉の象徴と恐れられる白い髪で産まれ疎まれて育ちました。8歳の時、私の中に何かが宿っている事に気づいたんです。それは時々私の体を奪って暴れるんです。 親もそこで私を手放し奴隷として売りました。 奴隷になってしまうと自分の意志で死ぬ事もできないんです。獣人なので体も丈夫だから病気で死ぬ事もできないし…」
「そうか。大変なんだな」
そう素っ気なく言う。
「簡単に言わないで! 私はこんな髪で産まれて、それだけで変な化け物が入ってきて、こんな扱いを受けているのよ!
私が何をしたっていうの! もうこんな人生嫌だ! 早く殺してよ、殺してくれるんでしょ!」
そう涙を流して泣き叫ぶグラシア。
「あぁ、グラシアには死んでもらう。そして、新しい名前で生きてもらうよ」
そう言って俺は<隷属の指輪>を装備し、グラシアをテイムする。
俺の言葉に驚いているグラシアを見つつ俺は<隷属の指輪>のド級レベルの効果であるステータス変更を行った。
これはテイムしたモンスターの見た目やステータスを変える力だ。
ステータスはいじらず見た目と名前をいじる。
それによって彼女の髪はボサボサの短い白から美しく長い黒髪に変わる。
いきなり伸びた髪に驚き、その髪の色を見て彼女は言葉を失った。
更に俺は「光よ、癒せ」と治癒魔法をかけ、大きな怪我を治していく。
動けない彼女の手に消化のいい食べ物を持たせ、暖かくて甘い紅茶も渡す。
「今日から君の名前はフェリスだ。取りあえずそれを食べて」
そう言った。
「なに?何なの? 貴方は一体なんなの?」
「その説明は街に入ってからだ。 今は言う通りにしてくれ。
街に入る前にやるべき事がまだあるんでね。
取りあえず、今渡した物を食べて」
「は、はい… いただきます」
ゆっくりと食事をし、「おいしい…」と呟くフェリス。
食べ終わったら次は…
「よし、次は服を脱いで湖に足だけ入ってくれ。体を洗う。 その後にこっちのボロい服に着替えてくれ」
そう命令を出す。 少し考える素振りを見せたが言う通りに服を脱ぐ。
俺に背を向けた状態で立って貰い頭上から暖かい水を魔法で掛けてやる。
風魔法で温風をかけ乾かした後、服を着てもらった。
「いいか? これから街に戻る。君はこれからフェリスだ。もうグラシアじゃない。
君は奴隷として高く売られるためホウガンの街に向かう途中で奴隷商が魔物に襲われ逃げていた所を俺に保護された。ってことにする。 確か所有者のいない奴隷は見つけた人間が保有する権利を持つはずだから、恐らく騎士が連れてくるだろう奴隷商を使って奴隷契約を結ぶんだ。
君はしゃべらなくていい。僕の背中に張り付いてなついているアピールをしてくれ。分かったか?」
「は、はい! ようは、喋らなければいいんですね?」
「そうだ。あと、お前はこれからフェリスだ。そこを忘れないようにな。
そうしてくれれば今後君には名前の通りの幸せな生活を約束する」
自分の事や俺の考えを説明しないままフェリスを背負って街を目指す。
途中の片手間で依頼をこなし街の門に着いた。
今日もハウンドが対応してくれた。
フェリスに言ったシナリオをそっくり話すと君は本当に色々な事に巻き込まれるな…と呆れられた。
やはり、所有者のいない奴隷は見つけた人が所有していいらしく俺は彼女の世話は自分が見ると言って騎士が連れてきた奴隷商に契約を結んでもらった。
その奴隷商人はフェリスを売った奴ではなかった。
街に入り冒険者組合に行き事情を話す。
「いやー、森の中で獣人の子を保護しまして。何かの縁という事で僕が面倒を見る事になりました。これからこの子も僕の手伝いをさせたいと思うんですが、冒険者の登録ってさせた方が良いんですか?」
「また変な事に巻き込まれましたね… まぁ、元気になってくれたみたいなので良いですけど。
奴隷はこの国では装備扱いになるので登録はいりません。でも、他の国ではそうもいかないのでこれから他の国に行かれる予定があるのでしたら登録する事をお勧めします」
「じゃあ、登録をお願いします」
「分かりました。 書類はゼロさんがお書きになりますか?」
「えぇ。そうします」
そう言って必要事項を記入する。
「あ、そうそう。この前の依頼の達成で今からゼロさんはCランクになります。
こんな短期間でCランクになる人は初めてですよ! もちろん最年少です。
こんなに可愛い獣人もゲットできて少しは運が向いてきたのかもしれませんね!」
「そうですか、グースさんの死でランクが上がるのもなんか申し訳ないんですが…
これからはグースさんの分も頑張りますよ」
「こういうのも何なんですが、グースさんの死を気にしているのはゼロさんだけですよ?
そんなに気を落とさないでください。アレは身の丈に合わない依頼を受け続けた彼が悪かったんですから。ゼロさんと行動するようになって、いつかこうなるんじゃないかと思ってました。
ゼロさんが死なずに済んで本当に良かった。」
「素直には頷けないですけど、心配してくださってありがとうございます。
これからこの子の服とか色々買いにいくので。 失礼します」
報酬を受け取り俺はフェリスの手を引いて組合所を出る。
フェリスは言いつけ通り口を開いていない。
「宿に戻るまでは静かにしていてくれ」
「はい。分かりました。」
そういって露店でフェリスが興味を示した食べ物などを買い与え、俺が獣人を保護した事を広める。
服屋について俺は大銀貨1枚を使い下着、肌着、動きやすい冒険者用の服、おしゃれなワンピースやスカートを何着か、あと髪飾りなどの装飾品を買った。
やはり、女の子は奇麗にしないとね。
フェリス可愛いし。
もう一度体を洗った方がいいので買った服はまだ着せていない。
さすがに驚いたフェリスがそんな上等なもの受け取れません!と言ったが、俺の側にいるなら逆にそのくらいの物を着てくれないと困る、と言って無視した。
日が沈み始めた頃に宿に戻るともう既に噂が広まっているのかフェリスを見たお姉さんが
「お帰りなさい。この子が保護した獣人ですか?」
と聞いてきた。
「そうなんです。これから一緒にここに泊まります。 確か奴隷は装備扱いだから宿泊費はかからないけど食事はお金を取るんですよね?」
「はい。そうです。 奴隷用の食事をこれから用意しますか?」
「お願いします。 食事は僕と同じものを。 僕もこれからは部屋で食べるので二人分持ってきてください」
そう言うとお姉さんとフェリスが驚いた顔をする。
「お客様用の食事を奴隷にもお与えになるのですか?!」
「えぇ、もちろん。 これから彼女は僕のパートナーですから」
「そ、そうですか。分かりました」
「じゃあ、よろしくお願いします。 さぁ、おいで。フェリス」
俺たちは部屋に戻った。
「よし、至急やるべき事は終わった。まぁ、こっからが本番なんだけどな」
「あ、あの。ご主人様は何者なのですか?」
「その説明もしたいし、君を買った理由も説明したいんだけど大分長くなるからまずは風呂に入ろう。そんで飯だ」
そう言って俺は湯船にお湯を張りに行く。
なんか疲れたな…




