奴隷購入
『堕神』 確かにそう書いてあった。
初めて見る神だが、この少女は自分の中に神を宿していると分かった。
俺はこの神に会いたい。
「あのぉ、この獣人を売るならいくらですか?」
そう聞くと奴隷商人は驚いた顔で俺を見る。
「あんた、俺の説明聞いてなかったのか?!」
「聞いてますよ。でも、少し気になる事があってね…」
「俺としてはタダで渡したいくらいだが。こっちも商売だしな。銀貨1枚でいいぜ」
そう言ってきた。安いな。まさに叩き売りだ。
「僕の注文に応えてくれるならもう1枚銀貨を出しましょう」
そういうと、奴隷商人は怪しむかのように眉をゆがめ
「注文? あまり変なのは聞けないぜ?」
そう言ってきた。
「なに、簡単です。彼女の受け渡しを明日、森の中で行って欲しいんです」
「あ?なんでそんな…」
「いや、貴方も言ってたとおり僕はこの街で評判がいいんです。最近はちょっと事件があってあまり街に出ていなかったんですよ。そこでいきなり奴隷を連れて歩いていたらなんかイメージ悪いじゃないですか」
「まぁ、そうだな」
「幸い彼女はもう大分弱ってて暴れる事もないでしょ? 適当に袋につめて明日の早朝に死んだ奴隷を処分する名目で街を出てください。
僕は少し後で依頼を受けてから貴方の待っている所に行きます。
場所は、街から30分くらいの湖にしましょう。あそこなら広いですし、誰かが近づいてきても移動しやすい。
そこで、この子とお金を交換しましょう。どうです?」
「まぁ、面倒くせぇが別にかまわねぇ。多めに金も払ってくれるしこれも引き取ってくれるって言うんならな。 でも森の中でグサリってのはやめてくれよ?」
「そんなことする分けないじゃないですかー」
「まぁ、そうだな。 よし、明日の朝に湖だな。 待ってるぜ」
「えぇ。くれぐれも見つからないようにお願いしますね?」
そう言って店を出た。
俺はその後<偽装>を使って別人に化ける。
彼女に必要なものを色々買うためだ。
翌日俺は朝に冒険者組合に行き、簡単なEランクの依頼を受ける事にした。
「いつまでもふさぎ込んでてもダメですから… 悲しいけれどこれからもこういう事は起こる可能性があるのが冒険者なんですよね」
そんな事を言い街を出る。
走って20分。湖に行くとあの奴隷商人が脇に麻の袋を持って座っていた。
「お待たせしました」
そう言って俺は近づく。
「おう。別に気にすんな」
「これ食べます?」
そう言って露店で買ったパンと肉を渡す。
「悪いな。実は朝飯食ってなかったんだ」
そう言って俺から食べ物を受け取り食べる奴隷商人。
食べ終わった彼に俺は約束通りの銀貨2枚を渡す。
「毎度あり。じゃあ、奴隷契約を結ばせてもらうぜ?」
そう言って俺を見た奴隷商人に俺は<人形化>を発動させた。
一瞬で俺の支配下に入った奴隷商人に俺は記憶の改ざんを行う。
(ここに来たのは死んだ白髪の奴隷を処分するため。死体は湖に投げ捨てた。
俺は昨日店に来たが何も買わずに帰っていった。
お前はこれからまっすぐ店に帰りまたいつも通り店の受付に座ってろ。
意識がはっきりするのは街に戻る道を歩いて3分後だ)
そう命令を出すとふらふらと街に向かって歩き出す奴隷商人。
これで良い。
奴隷商人の姿が見えなくなってから麻の袋を開けた。
中には昨日の白髪の獣人グラシアがいた。
取りあえず俺は彼女が目を覚ますのを待つ。
そして1時間程経った時彼女は目を覚ました。
生気のない目で周りを見てから俺に気づいた。
「ここは?」
そうかすれた声で言う。
「こんにちは。グラシア。ここはホウガンの街から少し離れた森の中だ。
俺の名前はゼロ。君を買った者だ」
「私を… 買ったの? どうして?」
「君に興味を持ったからだよ。」
「そう… あれ? 奴隷契約が結ばれていないみたいなのですが…」
「うん。ちょっとやるべき事が終わるまで契約は結ばない」
「やるべき事ですか?」
「そうだ。 グラシア、君にはちょっと死んでもらうね」
そう言って俺は彼女を見た。




