ドナドナされた
「どうした、小僧!さっさと返事をしろ!」
そう俺に大声を出すAランク冒険者ゲイル。
ガラは悪いが頭にドクロは浮かんでいない。
ちなみに、蹴り飛ばされたグースは頭を抑えてこっちを見ている。
「えーっと、今さっきあちらの方に荷物持ちをするように言われたんですが…」
そう言って俺はグースを見る。
「何ぃ? おい、グース。お前、この小僧に荷物持ちさせんのか? あぁ?!」
「い、いえ! ゲイルさんが荷物持ちに使ってやってください!」
そう言ってへりくだった笑みを浮かべる。
「っち。つまんねぇな。少しは歯向かってこいよ… まぁ、そう言う訳で、お前はこれから俺の荷物持ちだ。 名前は!?」
「ゼロです」
「どこから来た!?」
「ここから大分北の森です」
「なにぃ? 魔の森から来たのかよ! こいつは相当な掘り出しもんだな!」
そういって嬉しそうに笑う。
「つーかお前、冒険者になるくせに何の装備もしてねぇじゃねぇか!
冒険者舐めてんのか?!」
「いえ、これから買いに行こうとしてたんです」
嘘だけど。
「しょーがねーなー。 俺の荷物持ちになるんだから初心者装備を買ってやるよ!
付いてこい!」
そう言って俺を肩に担ぎ冒険者組合を出て行く。
皆、俺たちから目をそらす中、受付のお姉さんが俺を見る目が出荷される子牛を見るようだった。
実は、この二人。冒険者の中で絶対に絡まれたく無いNo,1、2だったりする。
薄々それを感じながら俺は「ドナドナドーナ……」と呟いてお姉さんに手を振った。
期せずして、俺は今日最初に立ち寄った店の前にいる。
そう、イグノーの店だ。
俺を肩に担いだまま店に入るゲイル。
「イグノー、今日帰ったんだろ!俺だ! さっさと出てこい!
初心者用の装備一式が買いたい!」
そう店中に響く声で叫んだ。
奥からバタバタと足音が聞こえる。
「うるさいぞ!ゲイル!こっちは疲れているんだ。 しかも初心者用の装備だと?何を考えて…
ゼ、ゼロ君?」
俺はイグノーにケツを向けたままの状態で「正解!」と叫んでやった。
「なに?この小僧、もうお前と知り合いなのかよ。こいつはさっき俺の荷物運びになったんだ!」
そう楽しそうに言った。
イグノーは呆然と、なんて事だ…と呟いた。
「ゲイル、それはダメだ。彼は… えっと、ひっそり暮らす事を望んでいてだね…」
「はぁ?! 冒険者になってひっそり暮らすとか矛盾にも程が有るぞ!
お前が俺に指図すんな!いいからこの小僧用に装備一式もってこい! 代金は俺持ちだ!」
「イグノーさん。僕は大丈夫ですから、ゲイルさんは絶対僕を荷物持ちに使いますよ。どうかゲイルさんのいうとおりにしてあげてください」
「ははは。分かってんじゃねぇか、小僧。ん?してあげてくださいってなんだゴラ!」
「なるべくいい装備で頼む!」
「お前、おもしれぇな! おう、イグノー!いいやつ持ってこい!」
そんな俺たちの言葉にため息をついてイグノーは奥に消えてった。
「なんでお前イグノーと知り合いなんだ?」
「この街に行く途中で盗賊に襲われそうになっているイグノーさんと会って助けたんです」
「お前、もう人殺した事あんのか!」
「モンスターも倒せますよ」
「マジかよ。お前、マジで使えそうだな」
そんな会話をして時間を潰す。
少ししてイグノーさんが装備を持って戻ってきた。
「中級の防具一式と、剣は上級騎士の物だ。君なら問題なく扱える。
それと、冒険者鞄。中にはポーションや解毒剤、投擲ナイフなんかが入っている。
いいヤツだからまだまだ入るぞ。
それと、こいつは脳みそまで筋肉のアホだから気をつけてね。危ないと思ったらこいつを盾にして逃げるんだ。
あぁ、なんて君はついていないんだ… 初日にこいつに絡まれるなんて…」
「失礼なことぬかしてんじゃねぇ!
それに最初に小僧に絡んでいたのは俺じゃなくてグースだったぜ」
「! あの屑にも絡まれていたのか! 君、もしかして呪われているんじゃないか?」
心底心配そうに俺を見る。
「まぁ、人生色々起こるものです。何とかなりますよ」
そう答えると
「ははは! やっぱお前おもしれぇな! これから楽しくなるぜ! お前、もう宿決めてんのか?」
「えぇ、イグノーさんに紹介してもらった所にもう宿をとってあります」
「あぁ、あそこか。名前がちょっと不吉だがいい宿だぜ。飯はうまいし、部屋は広い。だが、少し上品すぎるな」
「貴様が下品なだけだ」
「なんだとゴラァ!」
「さあ、ゼロ君。装備を持って宿に帰りなさい!」
早く逃げるんだ!と言っているように聞こえる
「おう、明日は俺が宿に迎えに行ってやる。さっそく明日から冒険者の訓練だ!」
「よろしくお願いします。ゲイル師匠」
そう呼んでやると嬉しそうに笑う。
「では、失礼します。師匠、イグノーさん。装備やアイテムありがとうございました」
そう言って店を出て宿に向かう。
ラッキー。タダでいい装備ゲットしたぜ。俺の運はないはずなのにいい事ばっか起こってるなー。そんな事を考えながら歩く。
暫く歩いた所でゲイルの
「ふざけんな!」
という血を吐くような怒鳴り声が聞こえた。
きっと俺が持っている物の値段を提示されたのだろう。
中級の防具、上級騎士の剣ということをイグノーが言ってますが、ゲームの中の分類なら全て下級装備に分類されます。
ややこしいですが、この国のランク分けです!




