するべき事の消化
ホウガンは街を外壁で囲まれた城塞都市だった。
ファンタジーゲームの中の街のイメージそのままで、人がそこそこの人数行き来している。
「ようこそ、ホウガンの街へ。
まずは何をする?冒険者組合で登録?それとも私の店に一緒に行くかい?」
「そうですね、まずはお店に行ってみたいです。あと、宿も探したいので良い宿があったら教えてください。冒険者組合には最後に行こうかと思っています」
「分かった。宿はおすすめを紹介するよ。
では、私の店に向かおう。私の馬車ももう街に入っているだろうし」
そういって自分の馬車を見つけ、店に向かった。
イグノーの店は3階立てで大きかった。
「凄く立派なお店なんですね」
そう言うと、少し照れながら
「自慢じゃないが、私の店はこの街で結構有名なんだ」
と言った。
では、貴方の馬のお金を渡しますね。そう言って店に入って行く。
一階にポーションなどの戦闘補助アイテム、二階に武器や防具、3階には買い取り所と分けられ、商品も奇麗に整理されている。
「これが馬の代金、盗賊の装備、謝礼を含んだお金だ」
そう言って白金貨3枚を渡してきた。
「こんなに?」 そういうと、
「先行投資も含まれていますので」 と笑って答えた。
イグノーにおすすめの宿や冒険者組合の位置を教えてもらい、俺は店を出る。
「ゼロくん。一度落ち着いたらまた来てくれよ。装備も整えないといけないだろうし。
長い付き合いになれる事を祈ってます。
これからよろしくお願いします。」
そう言ってイグノーは頭を下げてきた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。まずはこの街の事を教えて頂きたいので明日にでも伺います」
そう言った。
俺はイグノーに教えてもらった道をたどり一つの建物に着いた。
名前を「安楽の宿」という。何か、「それってどうなの?」と言いたくなる名前だ。
俺は扉を開けて中に入る。
これまたファンタジーの宿という見た目で、お姉さんが受付に座っている。
「いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?
身分証もしくは冒険者証の提示をお願いします」
提示する物を持っていない… 怪しまれないようにしなければ。
人間第一印象で全てが決まる!
「えっと、イグノーという人に勧められてきました。
冒険者になるつもりで田舎から出てきまして、身分証の類いを持っていないのですが…
チェックインしてから冒険者組合に行こうと思っていたのですが、逆の方が良さそうですね…
出直します。」
そうきまりが悪そうな顔で言うと、
「イグノー様のご紹介でしたら後で冒険者証を見せて頂ければ問題有りません!」
そう言ってきた。
「え?良いんですか? 僕がイグノーさんと知り合いである証拠も無いのに泊めても」
「イグノー様はこの街では最も信頼を得ている商人です。イグノー様の名を騙って悪事を働けば文字通り、この街で生きて行く事はできません」
……あのおっさん、凄い人だったのか…
「まぁ、僕にやましい事は何も無いので泊めてください」
「はい。お部屋ですが、202になります。食事は朝、夜の二回食堂で摂る事も部屋で摂る事も可能です。しかし、部屋で摂る際は持ってきた従業員にチップを渡すのが暗黙の了解になっています。
奴隷は装備品として考えられますので代金は頂きません。しかし、奴隷にこちらの食事を与える際は別にお金を頂きます。奴隷は食堂で食事を摂ることはできないので部屋で摂らせるようにしてください。
お風呂ですが、水をこちらで用意させる場合、お金を頂きます。魔法で水を張っても構いません。タオルは一日1枚は宿代に含まれています。追加で使うときはお申し付け下さい。
最後に、迷惑行為を行った場合は騎士に通報します。備品を壊した場合は弁償のお金を皇国の方に則って請求しますのでお気をつけ下さい。
何かご質問はございますか?」
「宿泊日数を伸ばしたい時はいつまでに言えば良いですか?」
「最終宿泊日の夜で構いません。満室の場合、延長をお断りさせて頂くことが有るかもしれませんが、恐らく満室になることは無いので延長宿泊は問題なくできます。」
「なるほど。ありがとうございました。今のところもう大丈夫です。これから直ぐ冒険者登録をしてきますので鍵は帰ってきた時に渡して下さい」
「分かりました。いってらっしゃいませ」
俺は宿を出て冒険者組合に向かう。
途中で露店を冷やかしながらゆっくりと歩いた。
宿の確保はできた。次は冒険者になろう。
必ずテンプレである『頭の悪い雑魚に絡まれるイベント』が発生するはずだ。わくわく。
道行く人に位置を聞き、10分ほど歩いて俺は冒険者組合の建物に着いた。
扉を開けるとゲームと同じ光景が俺の目の前に広がった。
「わぁ、実際にここに来る事ができるなんて…」
俺のテンションはマックスだ。 何人もの冒険者が俺を不気味そうに見ている。
カウンターに座る奇麗なお姉さんに近づいて俺は言った。
「冒険者の登録をお願いします!」
「はい。分かりました。 冒険者に関する説明を受けますか?」
「結構です!早く登録して下さい!」
「はぁ、では、この紙に必要事項を記入してください。字は書けますか?」
「大丈夫です!」
一々テンションの高い俺の言葉にちょっとイラッとした顔をするお姉さん。
だって楽しいんだもん。
しょうがないじゃん。
俺は<詐称>で偽りまくったプロフィールを書き連ねる。
おそらく、嘘を書くと反応するマジックアイテムの紙を使っている。
量産型なのでそんなに強い効果はない。俺の極めた<詐称>を看破するには神じゃないと無理だ。
紙は無理だ。神じゃないと! ごめんなさい。
必要事項を記入し渡す。
「記入事項に嘘は無いようですし、犯罪履歴も無く年齢も問題有りません。
冒険者証を発行します。」
そう言ってpasmoみたいなものが魔法で作られていく。
これでこの世界でも冒険者だ。
金と贖罪値を稼ぐぜ! そう意気込む。
こうして出来上がった冒険者証を見て、お姉さんが
「え…? 何、コレ」
そう呟いた。




