イグノー目線と検問
いつものように村を回り、やっとホウガンに帰れるという時、昔から知り合いのザインに子どもを一人一緒に連れて行って欲しいと頼まれた。
私は商売人なのでそんな利益の無い、逆に損になりそうな申し出は断りたかったが、ザインには世話になっているので無下に断る事もできず仕方なく認めた。
次の日の朝、ザインはまだ12、3程度の子どもを連れてきた。
なるほど、修行で親から家を出された子か、そう思い二人に近づいて行く。
そして、その時少年が連れている馬が目に入った。
その馬は間違いなく軍馬であり、その中でも相当良い馬であると分かった。
間違いなく自分が見た中で一番の馬だ。
この少年は名のある騎士の子なのでは?
そう思った。
彼の言葉遣いから十分な教育を受けている事も分かり、予想は確信に変わる。
道中彼はひたすら礼儀よく我々に接してくれたが、自分の家については隠したいようだった。
そしてある日私はその馬を買い取ってくれないかと言われた。しかも価格はこちらに任せるという。
さらに彼は自分の家とパイプができる事や冒険者として私の店を今後利用してくれるとの言葉も付け加えてきた。
中々にしたたかである。 この馬だけでなく、色々な事が絡んだ値段設定は慎重に決めなければならない。街に入るまでに言ってくれと、これまたずいぶんな考える時間をあたえてきた。
数日後、彼が盗賊が我々を待ち伏せしている、と言ってきた。
私には人の陰など一切見えない。
騎士様に鍛えられいるだけはある。
彼は数分進んだ所で馬車を停め待っているよう指示し、自分が倒すので心配いらない、盗賊の装備を買い取ってくれと言って私の剣を持ち目にも止まらぬ早さで駆けて行った。
4分程経って彼は戻ってきた。盗賊は皆殺し、装備を奪うので来てくれと言い、私たちは出発した。
そこには彼の言った通り盗賊が倒れていたが、思った人数の倍はいた。
彼はこんな短時間でこの数の人間を殺したというのか。
しかも、彼はこの盗賊を殺した事を私との関係に利用しようと言った。
確かに自分の身分を隠したい彼にとって良い理由になるが、こんだけ人を殺しておきながら表情一つ変えずそのような事を考える彼を少し恐ろしく感じた。
彼はこれから冒険者として有名になる事を私は確信したのだった。
この少年を敵に回してはいけない。
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結局、イグノーは馬を白金貨2枚と大金貨5枚で買い取ってくれた。
めちゃくちゃ高い。
しかも、これから彼の店で物を買うときも割引してくれると言ってくれた。
やったぜ。
門をくぐる前、イグノーは俺を連れて商隊とは別に兵士の詰め所のような所に入って行った。
「ハウンドはいるか?」
そうイグノーは近くの兵士に聞く。
「あ、イグノーさん。お帰りなさい。その少年はどうしたんですか?」
「この少年について話があるからハウンドを呼んで欲しいんだよ。
できれば個室を使わせてもらえないか?」
そう言われた兵士は俺をちらっと見て
「今、呼んできます。部屋は廊下を進んで2番目の部屋を使ってください」
そう言って席を立った。
イグノーは礼を言って俺を個室に連れ込む。
「何をするんです?ハウンドって言うのは?」
そう聞くと
「ハウンドは部隊長だ。君は自分の事を隠したいのだろ?だったら今までの身分証は使えないはずだ。冒険者になれば冒険者証を貰えるが、この街に入る時はちょっと面倒になってしまうだろ?だから、私が話をつけるんだ」
そう言った。 何このおっさん超いい人だ!
「ありがとうございます!実は困ってたんです!」
俺は嘘も交えつつ、本心から礼を言った。
すると扉が開き、大柄な甲冑を着た男が現れる年齢は40代前半くらいか。
「よう、イグノー。人に話せない訳ありのガキを連れてきたって?
面倒ごとは勘弁して欲しいんだが」
「いやいや、ハウンド。私がこの街に面倒ごとを持ち込む訳がないだろ?
この少年は私が盗賊に襲われそうになった所を救ってくれた子でね。
冒険者になるためこの街に向かっていた途中だったそうで、お礼を籠めて連れてきたんだ。何でも魔の森の近くで生活していたらしく、修行で冒険者になるよう親御さんに言われたらしい。身分証を持ってないから街に入る時にくだらない手続きを取らせるのを避けるために私が彼の身分を保障しようと思ってね。
街に入ったら冒険者証を発行するから何かあってもそこで分かるよ」
「そうか、本来は認めないんだが、イグノーだしな。坊主、名前と歳は?」
「ゼロです。12歳になります」
「どこから来た?」
「詳しくは分かりませんが、ここから北の森です。轍を辿ってひたすら移動していたらイグノーさんに出会いました」
「ふーん。ここから北の森なら魔の森ってのは本当みたいだな… そんなとこで良く育ったな。まぁ、イグノーさんが安全って言うなら安全なんだろう。
街に入るのを認める。これから冒険者になるんだってな?
お前強そうだから、良くも悪くも色んな経験をするだろうぜ」
「それは楽しみです」
「ははっ! 言うじゃねえか。これからよろしくな。ゼロ」
そう言われ、俺は街に入る事を許された。




