村に立ち寄った
今まで育ってきた村を出て3日馬を走らせると夕方になって村が見えてきた。
ミグ村よりは人も多いが街とは呼べない。そんな大きさだ。
一応門があり、俺は門番のような男に近づいて行く。
「おう、坊主。ずいぶん立派な馬だな。修行で家を出たのか?」
あれ?子供一人だから怪しまれると思ったんだが、以外と怪しまれていないぞ?
相手が勝手に都合良く解釈してくれているので話を合わせよう。
「こんにちは。そうなんです。母に世界を見て回れといきなり放り出されまして。
ここでは当たり前の事なんですか?」
「いきなりって… まさか何の説明も受けてないのか?!
この国では12歳になると大人の仲間入りだから、親がそのくらいの年の子どもを村から出して何か目標を与えてそれを達成させるのさ。ちなみに、坊主はなんの課題をもらったんだ?」
「えっと、冒険者になって名を挙げろ… と」
「それはまた凄ぇ課題だな…」
「父は昔冒険者でして。既に他界していますが。母からこの馬を譲り受けたんですよ。」
「なるほど、厳しいし、なんか凄ぇが、お前を大切に思ってくれてるんだな。で、この村に何のようだ?
ここには冒険者組合の部署はないぜ?」
「首都に行く途中で、もう3日馬を走らせているんです。そろそろ安心できる所で休みたいので宿が無いかなと思い立ち寄りました。」
「そうか… 首都に。ここからだとかなり時間がかかるぜ。あと、あいにくこの村に宿はねぇよ」
そう言われた。残念だ。また野宿か。そう思ったそのとき
「でも、今までの事を察するに相当無理してきたんだろ。俺の家に泊めてやるよ。」
「え?いいんですか?こんな訳の分からない子どもを泊めて」
「俺は時々ここに宿を探す人間を泊めている。おっさんはちょっと嫌だが、お前みたいな礼義正しい子どもなら妻も喜んで受け入れるさ。」
「ありがとうございます!お言葉に甘えます!」
「よし、今日は少し早いが門を閉める。付いてこい」
そう言っておっさんは村に入って行った。
「申し遅れました。僕の名前はゼロと言います」
「おぉっ!本当にしっかりした子どもだな。俺はザインだ。家には妻のマリーがいる」
年齢や、どこから来たか、どんな旅立ったかを適当に怪しまれないようでっち上げながら話し、おっさんの家に向かう。馬は家の近くにつながせてもらった。
「ただいまー。今日はかわいいお客さんを連れてきたぞー」
「おかえりなさい。あなたが可愛いなんて言葉を使うなんて珍しいわね」
そう言って奥からなかなか奇麗な女性が出てきた。
「おう。ゼロって言う修行中の子だ。12歳らしい。宿を探しにこの村に来たんで家に泊めてやろうと思ってな。どうした、ゼロ。早く入れよ」
「こんにちは、奥様。ただいまザインさんから紹介して頂きましたゼロともうします。
旦那様のご好意でお宅に泊めて頂けるとの事なのですが、入ってもよろしいでしょうか?」
「え?っえ? も、もちろんよ。ご丁寧にどうも。もしかして貴族のお子さんだったりします?」
「いいえ?ただの田舎の森からきた者ですが。何故です?」
「あまりに丁寧な言葉遣いだったから… 奥様なんて初めて言われたわ」
「とりあえず早く入れよ。飯にしよう」
「そうね。ゼロちゃんは適当に座ってて」
俺はザインの家で食事をごちそうになり、これからの行動のためこの国や周辺国の情報を聞いた。
ここで分かった事は、このインペラ皇国は国の広さは周辺国で一番で人口は人間が9割、奴隷の亜人、他の国の種族の駐在員が残り。
首都のグルガストは国の中心に存在し、人口3,000万人の巨大な都市だ。
国の東には砂漠が広がっており、小国が多く存在し戦争を続けていたが60年程前にアレナ共和国として一つの国になったそうだ。
戦争の戦術に秀でている国らしい。
そして、さらに東にあるのが武封国。
ダンジョンが存在する国で冒険者のあこがれの場所。
名前の通り、強者が集まる国でモンスターも強く人族には厳しい環境らしい。
そして、3つの国の北には魔境が存在する。
人族は踏み入ったら帰ってくる者がいないので内情はよく知らないらしい。
そして、魔境のさらに北に神国と神山があるそうだ。
これは噂であって、実際に確認した者はいないのではないかとの事である。
今俺がいる村はインペラ皇国の北に位置する村だ。ミグ村とこの村と首都の距離感は1:20といった所らしい。
あと首都まで何の問題も無く進んだとしても60日程かかる計算だ。遠い。
しかし、この村から1週間ほど進んだ所に冒険者が集う街ホウガンがあるらしい。
俺は取りあえず、そこでしばらく生活する事を決めた。
テンプレ貴族もいないし、強ければ認められる街だそうだ。弱いと食いものにされるらしいが。
死人も結構出るそうなので贖罪値稼ぎがはかどりそうだ。
あとはお金に関する知識や、物の相場、強者と呼ばれる者の強さがどのくらいの程度なのかを聞いた。
俺も色々質問をされるが、そこでこれから使う設定を纏めた。
名前はゼロで田舎者なので名字はない。
人間の父と母の間に生まれ、魔の森の近くで父の訓練を受けながら育った。
自分が8歳の時に冒険者だった父が病気で他界。
以来母と二人で生活するが自分が12歳になってしばらくした後、父の遺言で俺に旅をさせ冒険者として生きさせるようにと言われた母が俺をいきなり父の愛馬とともに放り出した。
こんな感じで。凄くワイルドな両親にしといた。
二人は驚きと呆れを隠していない。自分は父に鍛えられたからそこそこ強いので母も多少の無理をしたのではないか、と言っておいた。
そのまま泊めてもらい、次の日の朝にザインからいい話があると言われた。
「おい、ゼロ。お前昨日俺たちの話をきいてホウガンに行く事にしたんだよな。
今ちょうどこれからホウガンに戻る商人がこの村にいるんだ。
せっかくだから連れてってもらえ!」
そう言われた。
俺たちは村の門に行くといくつかの馬車が並んでいるのが見えた。
その中になんだか人相の良くないおっさんがいる。こいつが一番上だろう。
案の定、そいつは俺たちに近づき
「この子どもがホウガンについて行くのか? まったく、子どものお守りなど…
ん? その馬は!」
驚いた声をあげると、暫し考え込んでニヤリと笑い
「……しょうがない。一緒に連れて行ってやろう」
と承諾した。
なんか、馬を理由に付いて行く事を許可されたっぽい。
「よかったなゼロ。この人が商人のイグノーさんだ。こうやって色んな村に回って都市のものを下ろしてくれるんだ」
「そうなんですか。どうぞ、よろしくお願いします。まだ子どもですが皆様のご迷惑にならないよう付いて行きますので」
すると、イグノーは「やはり…」とか呟いている。
なにが「やはり」なの?
俺が首を傾げると、焦ったように
「では、時間が押してます… いるので行くか」
そう言ってホウガンに向け出発した。




