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真理の探究者  作者: しま
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ステラの思い出

話が進み始めますー

私の名前はステラ。このインペラ皇国の端っこにあるミグ村に住んでいる年寄りだ。



あの吸血鬼がこの村の外に来たのは20年前。あの子は体にちぎれた何本もの鎖を食い込ませながら森の近くにある狩りに行く男が使う小屋に潜んでいた。


見つけたのはこの村の村長であり狩人をしていた私の夫。彼は驚いたが騒ぐ事はせず、私を連れてきた。


始めてみたとき、彼女は燃えるような赤い髪と赤い目をしていた。

敵意の籠った目を向けて、「これ以上近づけば燃やして殺す」と言ってきた。


私の夫は人間種にしては珍しく、他種族を恐れ、排除したりしようとしない人であった。

彼は彼女に落ち着くよう言い、自分たち以外は貴女を知らないから安心してくれと説得した。


そして、どうか治療をさせて欲しいと吸血鬼に言ったのだ。

私は血を吸われるのだと思い夫の顔を見たが、私の表情に気づいた夫は大丈夫だといい彼女に近づいて行った。

彼は吸血鬼が実は血をほとんど吸わないという事を知っていたのだ。


結果的に彼女は血を吸う事は無く、眠らせてくれればそれでいいと言い私たちにすぐ立ち去るように言った。



翌日夫と私は森の小屋に行った。

すると彼女の髪は黒くなっており、性格も穏やかなものに変化していた。

傷はまだまだ回復しておらず、この村にはポーションなんて高価な物は無いので薬草での治療をしてあげる事にした。


昨日と別人のようになった彼女は自分が有名な眷属の吸血鬼の血を引いている事、今まで戦いとは無縁の生活を送ってきたのに皇国の最高権力者であり歴史に類を見ない偉大な魔法使いコーネリウス=マースク様に突然命を狙われ逃げてきた、という話をしてくれた。



もともとは今のような人柄だそうだが、戦闘に巻き込まれ『血が暴れた』らしい。

多くの兵士や召還獣を倒したが、3級の神聖魔法をくらって死にかけていたそうだ。


自分はもう死んだと思われているはずなのでどうかここでひっそりと暮らさせてもらえないか、彼女はそう言ってきた。



夫は悩んだ結果、いくつかの条件を出し住む事を許可した。


条件とは

村には来ない、村人と関わらない事。定期的に私と夫が来るので必要な者があれば言う事。

多少の魔法はいいが、吸血鬼としての力を振るわない事。

村長である夫と妻の私が死んだらここから出て行く事。

もし皇国の兵が貴女を探しにきたら森に逃げること。

であった。



彼女はそれを承諾した。


夫は村人に吸血鬼ではなく亜人が住み始めたと伝えた。

気性は穏やかだから危険はない、自分たちが定期的に見に行くから関わらないでおけと伝えた。


夫は信頼された村長なので皆多少の不安を感じながらも納得してくれた。



ニーナは約束を守り村には近づかなかった。最初にあった赤い髪になる事も無く穏やかな性格のままだった。



ニーナと出会って10年後、夫は他界した。

家の中で穏やかにその一生を終えたのだ。


そのときだけはこっそりニーナを村に連れ、夫の最後に同席してもらった。

ニーナは夫の手を握り、涙を流しながらずっと感謝の言葉を述べていた。

次の村長の選定の話し合いをしている村人たちとは大違いだ。




夫の死から直ぐ、彼女のお腹が大きくなってきている事に気づいた。

「赤ちゃんがいるの?」


そう聞くと、吸血鬼は人間の様に子を作る事もできるが自分は子を作った事は無いと言った。

純粋な吸血鬼は眷属にしたい人間に自分の血を飲ませ、転成魔術を行う事で吸血鬼にすることができるらしい。


ニーナはそんな言ってしまえば不気味な現象にも「きっと神様が寂しい私を気遣って与えてくれたのね。真祖様もそうやって産まれたと聞くし、きっと凄い子に違いないわ」

そう言って心配するどころかむしろ嬉しそうだ。


二年後、彼女は無事男の子を産んだ。


ゼロが生まれてからも定期的に様子を見に行ったが、すくすくと礼儀正しい良い子に育っているようである。


ニーナも昔より逆に若くなったのではないかと思う程活力に満ちた生活を送るようになった。

逆に自分は老いを感じずにはいられない。いつまで生きていられるか。

自分が死ねばあの親子はここから離れなければならない。

インペラ皇国は人間種以外の存在をほとんど認めない排他的な国だ。ならば、多くの種族が住む武封国かアレナ共和国に行くのだろうか。




ゼロが12歳になった。人間ではそろそろ大人として扱われ始める時期だ。

吸血鬼は老いで死ぬ事は無いというが、そもそも吸血鬼で12歳なんているのだろうか?

吸血鬼の事情はまるで分からない。


親子で他者との接触を断っているのであの子はこのままで良いのだろうかと少し心配になる。

今度ゼロの今後をどうするつもりなのかニーナに聞いてみよう。



そんなこんなで吸血鬼というイレギュラーな存在が近くにいてもこの村は変わらず平和な時間が流れていたのだった。




ある日の早朝、私は鎧を着た者が発する複数の足音で目が覚めた。


窓から覗くとそこには50人程の騎士と魔法使いがいる。何事かと思って家を出る。物陰から新しく村長になった男と団長のような品の無い男との会話を盗み聞きする。

何か悪い予感がする。


「この村に亜人が以前から住んでいるという情報を得た。歴史ある皇国に人間のように暮らす亜人などあってはならない。即刻引き渡せ。」


「その亜人はここには住んでおりません。前の村長が匿っておりまして、我々も顔も見た事が無いんです」


「なに?前の村長はどこだ?」


「ずいぶんと前に亡くなっております」


「親族はいないのか?」


「一人だけ。奥さんのステラさんがいらっしゃいます」


「では、連れてこい。今回は万が一亜人が暴れた時の事を考えマークス様がいらしているのだ。お手間は取らせられん!」




団長の話で亜人という言葉を聞いた瞬間に私はニーナの家に急いで向かった。


なんとしても逃げるように言わねば。

あの団長は良くない部類の人間だ。見つかったらあの親子は間違いなく殺されてしまう!

あんな良い親子が種族が違うという理由で殺されていいはずが無い。


私は老骨に鞭打ってできるだけ急いだ。

ニーナの家に着きドアを叩く。


「ステラおばあさん?今開けるね」


そんな暢気なゼロの声が中から聞こえた。


私は叫ぶ。


「ニーナ!皇国の人間が貴女達を捕えようと村に来たよ!早く逃げな!殺されちまうよ!」


そう叫んだ私に背中にいくつもの激痛が走った。

これは矢だ。何本もの矢を射られた。


ドアが開き中から驚いた様子のゼロが出てきた。


「早…く、に、げ……」



そこで頭に何かが当たる感覚がし、私の命は消えた。


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