Happy birthday Mam!
ウリ坊討伐から一週間と少し経った。
今日はお母様のお誕生日です!ある領域を支配したらこの日は祝日として制定しよう。
俺は結局誕生日プレゼントに<転移玉>という奇麗な赤い宝石をネックレスに加工して渡す事にした。
この<転移玉>は俺が取り返したアイテムだ。没収された物から上級までの装備二つを返すという「お詫び」をこれに使った。
これは上級アイテムで、ある一定以上のダメージを加えられたとき自分の本拠地に転移するアイテムだ。
ゲームではそれほど使える訳でもないアイテムだった。というのも発動してから転移するまでに数秒のラグが発生するからである。発動すると体が光に包まれるので周りのプレイヤーにばれる。
なので転移する前に攻撃されて逃げられない事が多いのだ。
でも、プレイヤーに遭遇しなければ今後なにかあった時に逃げられるだろうと思って選んだ。見た目も奇麗だしね。
お母様が誕生日の時は俺が家事を全てやる事にして、彼女にはゆっくり休んでもらっている。
夕飯まで準備し二人で食卓に着いた。
ニーナは嬉しそうに
「今日の料理はまた一段と美味しいわ。家事も奇麗にこなしてくれたし、いつもお手伝いしてくれてありがとうね。こんな立派に育ってくれた事が一番のプレゼントよ」
そう言った。
俺は「今年はもう一つプレゼントがあるんだ」と言って<転移玉>のネックレスを取り出す。
「まぁ、なんて奇麗な宝石!いったいどうしたの?」
受け取って眺めながらニーナは訪ねた。
「それに大きな魔力が籠められている… こんな凄いもの、どこで…」
そう言って俺を見た。
俺は咄嗟に言い訳を考える。
「前に川で泳いでた時に沈んでたんだ。奇麗だから拾ってしまってたんだけど、僕が持っててもしょうがないし、せっかくだからお母様につけて貰いたくてネックレスにしたんだよ」
よし、これで大丈夫だ。
「そう、悪い魔力ではないから害はないと思うけど、どんな効果があるのかまるで分からない。相当価値がありそうだから貴方がいつかお金に困ったら使えるわね」
「そんな事言わないでずっとつけててよ。せっかくの初めてのプレゼントなんだから」
「あら、ごめんなさい!そうね大切にするわ。」
そう言ってネックレスを付け嬉しそうに微笑んだ。
現実の母親は自分が望む生き方を俺に強要していた。誕生日も祝ってくれていたが、将来のことなどを説教のようにクドクド話すだけのつまらない時間だった。
俺が母に贈り物をしていたが、別に義務で仕方なくやっていただけで、いつまで続けるのだとずっと思っていた。
こんな風に相手の喜ぶ姿がみたいと考えてプレゼントを送ったのは初めてだ。
最初はただのNPCと思っていたが、今では現実の母より母親だと思える。
心配性なのがちょっとアレだが……
この人の事は絶対に守ろう、そう改めて誓った。
しかし、ここである問題があった。
俺は12年間村の人間と少し話した事はあるが、集団生活はしていない。
このままで良いとは思っていないので、いつかこの家を出たいと思っている。
しかし、お母様は許してくれそうにない。
どうしたら納得してくれるのか…
彼女は本当に一生ここで生活するつもりなのだろうか?
これから納得してもらう方法を考えないとな、そう思った。
片付けも終わり、寝床に潜り眠りに落ちる時、頭の中に久しぶりの声が響いた。
『ニーナ モーガンが貴方のギルドのメンバー加入申請をしました。受諾しますか?』
俺は、ギルドとか懐かしいな。まだ浮かんでんのか?まぁ、家族だし良いんじゃねと思い承諾した。
でもちょっと引っかかるから明日お母様にこの事を聞こう、そう思い眠りにつく。
結果的にそのあまり考えず決めた判断は良かったと言える。
この後起こった事件で俺は願いだった世界を旅する事ができるようになった。
だが、それによって俺は彼女と離れる事になり、彼女の嫌いな戦いの世界に身を投じる事になる。




