ニーナを説得
こういう感じの話は難しいですね
ボヘミアでニーナの実家に向かう進路を進む。
最近は予想通り暇な日々を過ごしている。フェリスの修行につき合ったり心麗との話し合い、十二天の仕事の進み具合などは見ている。
そんな中、俺はまだやらねばならない事を避けていた。
ニーナとの話し合いである。男らしく向き合え!と言いたい奴もいるだろう。
しかし、そうも言ってられないんですよ。母様も最近少し俺を避けているんだよ。
互いに互いの言いたい事が分かるから逆に面と向かって話しにくいって訳だ。
しかしそうも言ってられない。ちゃんと今後について話さないといけないのだ。
俺はある日の朝、朝食の席でニーナに言った。
「母様、ちょっと大事な話があるので朝食が終わって少し食休みをしたら僕の部屋に来てくれませんか?」
「!!」
ニーナの体が強張る。他の奴らも俺たちの最近の微妙な空気を感じ取っていたため俺の発言に少し緊張した面持ちだ。
「母様?」
「う、うん。分かった。後で呼びにきて…」
「はい。分かりました」
その後は静かに食事をする。食べ終わった人から席を立った。
今席に座っているのは俺、フェリス、プリトゥ、ヴァーユだ。
「ふー… なんて言えばいいのかな…」
「ご主人様が思っていることを言えば良いんです!もうニーナさんも分かってますよ」
「俺が言いたい事を分かっててもそれを納得するかは別だ。俺が親なら反対するぞ」
「難しいですねー…」
「主様も人の子ですのぉ…」
「そりゃそうさ。大事にしてくれてる親の事なら悩むよ」
「ふっふっふ。微笑ましいですな」
「笑い事じゃないんだぞ?じゃあ俺も行くよ」
「ご武運を」
トボトボと歩く俺の背中をプリトゥが考える素振りで見つめていた。
自室に入った俺はとりあえず昨日まとめたニーナを説得できそうな言葉をもう一度確認する。
自信はあまり無いが何とかしたいと思う。どう反応してくるかが問題だろう。
「ナーサ、ダスラ」
「「はい」」
「母様と話す時には気持ちが落ち着くお茶を用意してくれ。お茶を用意してくれたら呼ぶまでは入って来ないでくれよ」
「「はい」」
「よし。ここは俺が母様を呼ばなきゃだな。こんなの前の母親にはやった事も無いから緊張する」
自室を出て階段を下り、ニーナにあてがわれた部屋に行く。
何度も行って話をしたりしたので場所はもちろん覚えているがいつもより遠く感じるな…
俺は扉の前に立ってコンコンと叩いて声をかける。
「母様、ゼロです。お話ししても良いですか?」
「うん。今行くわ。ちょっと待ってて」
1分程待って扉が開く。ニーナの目は既に少し赤くなっていた。
俺はバレているだろうが気付かない振りをして手を取って自室に連れて行く。
部屋に入ると既にナーサとダスラがお茶を用意していた。
「「では、我々は失礼します」」
「あぁ。お茶ありがとうな。 さぁ、母様。座って下さい」
ニーナの椅子を引いて座ってもらう。
「さて。最近ごたごたしていてちゃんと話しが出来なくてごめんなさい」
最初から本題に入らないようにしようと思ったのでまずは皇国についてか…
「皇国はエストリーに任せることにしました。アイツはなんだかんだちゃんとやってくれると思いますが…」
「ゼロ」
「はい」
「ゼロは… 本当に神国に行ってしまうの?」
「…そのつもりです」
「私を置いて?」
「…母様を連れて行く事は出来ません」
「私が一緒にいたいって言っても?」
「………はい…」
「それは、私の命を心配してくれてるんだって分かるわ。でも、それはゼロにも言えることでしょ?ゼロは生きて帰れる保証はあるの?」
「……生きて…帰る…」
俺は目的を達成したらどうするのだろうか。それは考えていなかったな。
「わ、私の元に帰ってくるつもりは… 無いの?」
声が震えて目に涙が溜まるニーナ。
「…帰ってくるのとは少し違いますが、目的を達成したら母様を迎えに行きます」
「迎えに?」
「はい。僕が目的を達成した時、僕は”真理の探究者”になっているでしょう。そして母様に僕が作り替えた世界を見せようと思います」
「戻ってこれるの?」
「もちろん」
「嘘よ… だって、こんな凄い人達が集まってるのに皆真剣な目をしてるんだもの。前の皇国の戦争の時とは大違い。ここにいる人達やゼロが命をかけなきゃいけない敵って何?あなたは何と戦おうとしているの?」
「……僕と同じような連中ですね…」
「これから貴方が戦う相手と理由を隠さず全て話して…」
ここがゲームという話はしないが心麗の存在や神国の状態などは話す事にした。
全て話し終わるとニーナの肩は震えていた。
「どうして貴方がそんなことしなきゃいけないの!」
そう絞り出すように声を出すニーナ。
「僕しか出来ないからです!」
「絶対死んじゃうよ!やっぱり行っちゃヤダ!」
(いきなり幼児退行してしまった!)
「お、落ち着いて!」
「ヤダ!絶対ダメだからね!」
そう叫んで部屋を飛び出すニーナ。
「ちょっ!ちょっと待って!」
彼女にそんな移動速度があったのかと驚く程の速さで階段を下りて城の外に飛び出した。
俺も後を追おうとした所、プリトゥが現れた。
「ゼロ様」
「お、おぉ。プリトゥか… ちょっと母様を追わなきゃいけないんで話は後にしてもらえないか?」
「ゼロ様は追いかけてはいけないかと… 変わりに私がニーナの元に行きますのでゼロ様はご自分のお部屋で今暫くお待ち頂けませんか?」
「お前が説得… できるのか?」
「女同士だからこそ言えることもございます」
「……まぁ、俺だと永遠の平行線であることは認めるけど… ここでプリトゥに行かせたら母様は俺に見捨てられたって思わないか?」
「それも含めて私がお話しさせて頂きます。私に話す許可を」
「…じゃあ、信じるよ。母様をよろしく頼む。あ、渡せそうだったらこれを母様に渡してくれないか?俺が渡しても受け取ってくれないだろうからさ…」
そう頭を下げる。プリトゥは嬉しそうに「私などに頭など下げないで下さい」と言い渡した物を大切に受け取ってニーナが走って行った方向に歩き出した。
俺の側にはいつの間にか心配そうに俺を見るナーサとダスラがいた。
「はぁ… 失敗しちまった。一回部屋に戻ってろだってさ…」
「ゼ、ゼロ様… そう気を落とさずに。プリトゥはやってくれる方です!」
「プリトゥの心配じゃなくて自分が情けなくてなー」
自分で追うべきだと思うが、追った所で何も出来ないと分かっている無力感でいっぱいな俺は肩を落として自室に向かった。




