出立
「ごめーん!待ったー?」
そう言いながら走ってくる幼女を俺は死んで目で見る。
普段はフリル沢山のドレスを着ているが今日は膝丈のフレアスカートにブラウス、薄いカーディガンを羽織っている。なんか良いところのお嬢様って感じだ。
「どうしたの?元気無いよ?せっかくのデートなんだから!」
そう、デートだ。俺は幼女とデートさせられている。俺を社会的に抹殺したいのか?
「あのさ、見た目変えられないのか?服変えられるんだからもう少し大人になれないか?」
「それは無理!体は魔力じゃないから!」
「そうですか… 何がしたいわけ?」
「ん〜? ただ一緒に歩いてご飯食べてお話しできればそれでいいの〜」
「なんだそりゃ」
「もう!いいから行くよ!」
こうして何をするか分からないまま歩き出す。
エストリーは本当に特定の場所に行ったり特定の事をするのではなくただ歩いて目に入った店に寄っているという感じだ。
男は目的を持って行動しないとなんか落ち着かないが、女性は必ずしも目的を求めないと言う。
一緒の時間を共有して共感する事を望む傾向があるそうだ。
こういう時は素直に従っていた方が良いと思うので特に何も指摘せずに歩く。
「そう言えば今日の服はいつものフリル沢山なロリータじゃないがどんな心境の変化だ?」
「お!女性の服に注目してちゃんと聞いてきますね〜。意外と慣れてるのかな?この服は、私が貰う前にこの体を使っていた子が着ていた服なんだ」
「前の子?」
「そう。エストリーは体を変えて生きてきたって言った事あるよね?体は自分で作るわけじゃなくて調達するんだよ。相手の血を全部飲み干して自分の血を入れるの。そうすると私の体になるんだ。でもこの体の元々の持ち主の人格が私の中で生き続けるの。今の人格はこの体の子がベースなんだー」
「その体って無差別に襲うの?」
「そういうのもいるけど私はやらないね。私がこの子に会った時、この子は脚の病気で歩けなくて屋敷に押し込められてたんだよね。で、仲良くなってねー。暫くはお友達だったんだけど病気が進行して長く生きられないって分かった時にこの体を使って私に旅をさせてくれって言ってきたの… 変わってるでしょ?」
「ソイツが今幸せだといいな」
「幸せだって言ってるよ。自分の体を思いっきり動かしてるんだもん」
「どっかで飯食うか。腹減ったよ」
こうして適当なレストランに入って食事にする。
二人で料理を待っているとエストリーの方から俺について質問をしてきた。
「ゼロはさ。前世の記憶があるって言ってたよね?前世は何だったの?」
「前世か?前世は… 武神だ。俺が昔いた時代は俺みたいな強さのヤツがゴロゴロいてさ。ソイツらがギルドを作って神や魔王と戦うのが日常だった世界なんだよ」
「何それ?神話の人なの?」
「そう思ってくれてかまわないぜ。俺はその中で全てを敵に回して一人で戦ってたんだ。今と違ってボヘミアの連中は全員ボヘミアの防衛だけさせて世界は俺一人で回ってたんだ」
「ゼロくらい強い人がゴロゴロいる中を?」
「あぁ。お前、称号って知ってるか?」
「うん。世界を変える程の行いに対して神が送る物でしょ?行いによって良い効果とか悪い効果が出るって言う」
「俺はそれを山ほど持ってる。覇王、神狩り、ギルド狩り、簒奪王、臆病王なんて称号も持ってるんだぜ?」
「臆病?想像つかないけど…」
「沢山の敵と戦う為に色々姑息な手段で戦ってたのさ。逃げる事もよくした」
「へぇ〜!意外!面白い! どんな敵と戦ったの?」
「ん?そうだなぁ…」
俺はQTでの戦いを沢山話す。この世界の連中からすればお伽噺以外の何物でもない。
エストリーはそれこそ見た目通りの年齢のように目を輝かせて俺の話を聞いていた。
その間に料理も運ばれ食べながら話す。
「ゼロはその世界に戻りたいんだね…」
「うん?あぁ、そうだな。やっぱりあの緊張感は最高だ。互いに相手の力と戦術を読み合って潰し合う。英雄にされて平和な国で生きるのは合ってないんだな…」
「ニーナはどうするの?」
「魔の森にあるモーガンの家に置いていく…」
「それを彼女が認めると思う?」
「母様の気持ちより命が大切だろ。母様が神国に行けば絶対死ぬ。絶対だ」
「そうだねー。でも、離れて生きるくらいなら死ぬその時に一緒にいて欲しいって言いそうだよね。既に一回離れたわけだし」
「それなんだよな… 納得してもらえる気がしない。死地に行く息子を止めない母親はいないってのは分かるが、でも俺は行かなきゃいけない」
「絶対修羅場になるねー んふふー」
「どうすりゃいいのかなー」
「感情的になっちゃダメだね」
「はい」
「いやー。1,000年超えて生きてきたけど貴方と出会ってからの時間はその1,000年を凝縮しても得られない程濃い日々だったよ。ありがとうね」
「それは良かった。でも終わりじゃないぞ?むしろこれからが大変なんだぞ?」
「分かってるよー。あ!そうだ!私もゼロのギルドに入れて欲しいんだけど良い?」
「おう。いいぞ」
『エストリーが貴方のギルドのメンバー加入申請をしました。受諾しますか?』
「はい」
「わー。これで私もギルドに所属したんだー」
「ギルドメンバーになったからには王様しっかりな。ボヘミアに泥を塗らないように」
「うぅ… そう言われると…」
「まぁ、前にも言った通り修行は続けてもらうし、<心送り>があるからブラフとかに頼めば時々話せるんじゃないかな」
「ホント?!」
「あぁ」
「良かったー。やっぱり寂しいし、愚痴も絶対出るから聞いて欲しいもん」
「愚痴を聞く為にブラフに頼むのもな…」
「そんなこと言わないでよぉ〜 きっとストレスで胃に穴空くよ?」
「分かったよ。定期的に話をしよう。アレナで習得した映像を送る魔法も使ってさ」
「うん!」
エストリーは眩しいくらいの笑顔で嬉しそうに頷いて<心送り>をなでた。
夕食は城で皆と食べる約束だったので戻ったが、その時間ギリギリまでつき合わされた。
城に戻ると不機嫌マックスなフェリスに迎えられる。
「デートは楽しめましたか?」
「うん!優しくエスコートして私の話も嫌な顔せずに聞いてくれたよー。まだ皆も知らないゼロの話してくれたしぃ」
「「はぃ?」」
その言葉に反応したのがナーサとダスラだった。
「俺の昔の話しだから。お前らは知ってるぞ」
「そうですか。失礼致しました」
いつものクールな二人に戻って微笑んでくれた。怖い。
「それで、ゼロ君。いつここを発つんだい?」
「え?明日ですけど…」
「また私に何の相談も無く決めて!」
「だって忙しそうだから…」
「まぁまぁ、イグノー。コイツはこういうヤツだろ?」
「ゲイルさん良い事言ってくれました!僕は流離いの冒険者ですから。今後は神の首を並べる仕事に変わります」
「はいはい。頑張ってくれ」
「最近僕の扱い雑じゃないですか?イグノーさん、ゲイルさんを皇国の重鎮にしましょうよ」
「おい!巫山戯んな!」
「デルニオーラが一番の苦労人になりそうな気がするな。イグノーさんと二人で飲む機会が増えそう」
「それは既にやってるね…」
「やっぱりか!エストリーという一番の問題児が来てない段階でそれか!ハハハ!」
そんな感じでいつも通りワイワイとした食事になる。
そして翌日。城の前には昨日食事をした面々が見送りに来てくれた。
皆何かを語る事無く見送ってくれる。
「では長らくお世話になりました。ここで皆さんに出会えた事は僕の宝です。これから平和な国づくり頑張って下さい。エストリー、またな」
「うん。またね… 姐さんも、お兄ちゃんのこと守ってあげてよ」
「当然! 今まで以上に強くなります!貴女も強くなるんですよ!」
「じゃあ出発しよう」
すでにフェリスも少し危なっかしくはあるが自分で飛べるようになっている。
ナーサとダスラは言わずもがな。
ボヘミアに戻り玉座の間に行く。既に皆かしずいており俺の言葉を待っている。
今はフェリスとニーナもチャンドラの横にいる。ニーナには椅子を用意させ座ってもらっているが。フェリスは自分の意志で十二天と同じようにかしずいている。
「さぁ。これから神国に向かうぞ。いよいよ俺たちの戦いが始まる。気を引き締めろ。遊びは終わりだ。ここからは俺たちが命を賭ける最高の舞台が待っている。覚悟は出来ているか?」
応!!とホールから気合いが響く。
「俺の目的は"真理の探究者"になる事だ… そして、その目的の為にまた一人新たな助っ人が加わる。皆も驚くぞ?ではお待たせしました。心麗さん、来てくれ」
『やっとですか… 待たせ過ぎですよ』
「ん!この声は!」「まさか…」「本当なら凄いね!」
俺の玉座の横が光、人の形になって纏まる。そこには一人の女性が立っていた。
俺は横を見て言う。
「貴女… 誰?」
エストリーは主人公に初めて血を吐かせたキャラクターですね。
俺TUEEEEの中で一撃喰らわすなんて凄いぞ!
ロリキャラは必須だろうということでこんなキャラで登場させてみました。
エストリーはヘブライの伝承に登場するヴァンパイアで実体のない亡霊という元ネタがあります。
彼女はムードメーカーとして頑張ってくれました!
今後エストリーを再登場させるかは未定です。
使おうにも中々難しい環境になっていますので…




