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『After Forever―永遠の、その先 』タカシとヨッシー、再生の物語  作者: 若村崇


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第二十二話 飛びたい、自由

第二十二話 飛びたい、自由



朝の光が、リビングの床に差し込んでいた。


タカシは、ヨッシーのケージを掃除していた。


「ヨッシー、ちょっと待ってろよ。すぐ終わるからな」


「リンゴ! リンゴ!」


「はいはい。掃除が先」


タカシは笑いながら、ケージの中をきれいにしていった。


ヨッシーは、いつものように、そばで様子をうかがっていた。


やがて、タカシが手を止めた。


「よし、きれいになったぞ」


そのときだった。


ヨッシーが、羽を広げた。


「あれ?」


タカシが振り向いた瞬間、白い翼が大きく羽ばたいた。


ヨッシーは、窓のほうへ飛んでいった。


「ヨッシー!」


タカシが駆け寄ったときには、もう遅かった。


開いていた窓から、白い姿が外へ飛び出していく。


一度、二度。


ヨッシーは、空を舞った。


そして、建物の向こうへ消えてしまった。


「……ヨッシー?」


タカシは、しばらくその場に立ち尽くした。


さっきまで、そこにいたのだ。


いつものように、リンゴをねだり、話しかければ返事をしていたヨッシーが。


「ヨッシー! ヨッシー!」


タカシは外へ飛び出した。


近所を探し、名前を呼んだ。


けれど、返事はなかった。


夕方になっても、見つからなかった。


タカシは警察や近くの動物病院、鳥を保護できる施設などに連絡し、ヨッシーの特徴と足輪の情報を伝えた。近所にも協力を頼み、写真を見せて回った。


夜になった。


部屋には、ヨッシーのケージがあった。


水入れも、餌入れも、いつもどおりだった。


ただ、ヨッシーがいなかった。


「……何やってんだよ、俺」


タカシはソファに腰を下ろした。


ほんの一瞬だった。


自分が、もっと注意していれば。


そう考えると、胸が苦しくなった。


けれど、ヨッシーは、タカシを困らせようとして飛び立ったわけではない。


鳥なのだ。


翼がある。


飛ぶことができる。


ただ、飛びたかったのかもしれない。


タカシには、それがわかるような気もした。


わかるからといって、心配しなくて済むわけではなかった。


「……帰ってこいよ、ヨッシー」


返事はなかった。


その夜、タカシは何度も目を覚ました。


窓の外で物音がするたびに、起き上がった。


けれど、そこには誰もいなかった。


翌朝。


コツ、コツ、コツ。


小さな音がした。


タカシは、夢を見ているのかと思った。


コツ、コツ、コツ。


もう一度、音がした。


窓だった。


タカシは、ゆっくりとカーテンを開けた。


白い鳥が、窓の外にいた。


黄色い冠羽。


見慣れた姿。


「……ヨッシー?」


ヨッシーは、くちばしで窓を叩いていた。


「ヨッシー!」


タカシは、急いで窓の鍵を確認し、安全に室内へ迎え入れた。


「心配したぞ!」


思わず、大きな声が出た。


「一晩中、探したんだぞ。どこに行ってたんだよ……!」


ヨッシーは、冠羽を立てた。


「タカシ、オハヨ!」


タカシは、言葉を失った。


怒りたかった。


泣きたかった。


けれど、目の前にヨッシーがいる。


それだけで、胸がいっぱいになった。


「……帰ってきてくれて、ありがとうな」


タカシは、ヨッシーの様子を確かめながら、静かに声をかけた。


ヨッシーは、そんなタカシの気持ちなど知らないように、いつもの声で言った。


「リンゴ! リンゴ!」


「……はいはい。リンゴな」


タカシは笑った。


目の奥が、少し熱かった。


その日、タカシは、窓や出入り口の安全対策を見直した。もう二度と、同じことが起きないように。


ヨッシーが飛びたいと思うことと、ヨッシーを危険にさらさないこと。


その両方を、これから考えていかなければならない。


タカシは、窓の外を見た。


空は、どこまでも広かった。


「……飛びたかったんだな、ヨッシー」


ヨッシーは答えなかった。


ただ、翼を軽く広げた。


「リンゴ!」


「わかった、わかった」


タカシは、リンゴを取りに立ち上がった。


今日も、朝が来た。


そして、ヨッシーは、ここにいる。


それでいい。


今は、それでよかった。


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