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雨音時雨は、晴渡虹介を知らない  作者: 白ご飯
第一章 雨音時雨

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第8話 君しかいない、なんて聞いてません!


「アバババババババ!!」


 時雨は気づけば、謎の奇声を発しては首をブンブン振り回し、一瞬無になっては、また「アバババババババ!!」と発する疾患を患っていた。


桜花「お姉ちゃん、大丈夫? 夜ご飯、急に食べに帰ってきたと思ったら、ずっとこの調子……」


百花「まさか、あのクロネコ社長に何かされたの?!」


雷夏「え? 何? 何の話だよ!! そのクロネコ社長ってなんのキャラだよ!!」


 時雨は今、夕飯を食べに実家に戻ってきていた。


 何もする気が起きない時や、病気の時は、すぐに頼れる実家があるのはいいことだ。


桜花「ああ! お姉ちゃん、リモコン食べちゃダメええ!!」


 ――時雨の思考。


「俺には……」


 一瞬、言葉に詰まる。


 そして、まっすぐ私を見る。


「……君しかいない」


「…………」


「アバババババババ!!!!」


雷夏「姉ちゃん、今日はもう寝ろ! こんな状態で家に帰せねえ!!」


 雷夏は時雨を引っ張って、客間に敷いた布団に押し込んだ。


 え?


 は……?


 アレはなんだ……。


 晴渡社長って、可愛い彼女いるんでしょ?


 アレは……なんか、私が聞き間違えたのかな?


 パターン1。


「……黄身しかいらない」


 →卵の白身は要らないって言いたかったのかな?


 パターン2。


「……君は要らない」


 →もう、お使いのお役はゴメンってことかな?


 パターン3。


「……君、歯科いきなさい」


 →え、口臭が、ひどかった?


 ダメだぁぁぁ!!


 何にしても、晴渡社長、あの時、一体なんて言ったんですか? なんて、今さら聞き直すこともできない!!


 そもそも、もし、万が一のこと、本当に――


「俺には……」


 一瞬、言葉に詰まる。


 そして、まっすぐ私を見る。


「……君しかいない」


 って言っていたら、私、一体どうするの!?


 え……私、一体どうするの……?


 私……どうして、こんなにも晴渡社長のことが頭から離れないんだろう……。


「…………」


「アバババババババ!!!!」



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