第8話 君しかいない、なんて聞いてません!
「アバババババババ!!」
時雨は気づけば、謎の奇声を発しては首をブンブン振り回し、一瞬無になっては、また「アバババババババ!!」と発する疾患を患っていた。
桜花「お姉ちゃん、大丈夫? 夜ご飯、急に食べに帰ってきたと思ったら、ずっとこの調子……」
百花「まさか、あのクロネコ社長に何かされたの?!」
雷夏「え? 何? 何の話だよ!! そのクロネコ社長ってなんのキャラだよ!!」
時雨は今、夕飯を食べに実家に戻ってきていた。
何もする気が起きない時や、病気の時は、すぐに頼れる実家があるのはいいことだ。
桜花「ああ! お姉ちゃん、リモコン食べちゃダメええ!!」
――時雨の思考。
「俺には……」
一瞬、言葉に詰まる。
そして、まっすぐ私を見る。
「……君しかいない」
「…………」
「アバババババババ!!!!」
雷夏「姉ちゃん、今日はもう寝ろ! こんな状態で家に帰せねえ!!」
雷夏は時雨を引っ張って、客間に敷いた布団に押し込んだ。
え?
は……?
アレはなんだ……。
晴渡社長って、可愛い彼女いるんでしょ?
アレは……なんか、私が聞き間違えたのかな?
パターン1。
「……黄身しかいらない」
→卵の白身は要らないって言いたかったのかな?
パターン2。
「……君は要らない」
→もう、お使いのお役はゴメンってことかな?
パターン3。
「……君、歯科いきなさい」
→え、口臭が、ひどかった?
ダメだぁぁぁ!!
何にしても、晴渡社長、あの時、一体なんて言ったんですか? なんて、今さら聞き直すこともできない!!
そもそも、もし、万が一のこと、本当に――
「俺には……」
一瞬、言葉に詰まる。
そして、まっすぐ私を見る。
「……君しかいない」
って言っていたら、私、一体どうするの!?
え……私、一体どうするの……?
私……どうして、こんなにも晴渡社長のことが頭から離れないんだろう……。
「…………」
「アバババババババ!!!!」




