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雨音時雨は、晴渡虹介を知らない  作者: 白ご飯
第三章 晴渡虹介

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第38話 晴渡虹介

 

 気がつくと、俺は見覚えのない部屋に立っていた。


 やけにラグジュアリーな内装と、見るからに高級そうな調度品。


 ……どこだ、ここ?


 目の前のテーブルには、銀色のバットが三つ並んでいる。


 そのうち二つには、何かの動物の骨……だろうか。原形が分からないほど綺麗に肉を削ぎ落とされたような、奇妙なものが乗っていた。


 残る一つには、丸鶏が一羽。


 バットの底には、赤いドリップが溜まっている。


 ……せっかくの食材が、もったいない。


 しかも、テーブルの両端には花瓶のようなものが置かれ、青々とした葉のついた枝が挿してある。


 ……なんだ、これ。


 まるで何かの祭壇じゃないか。


 背筋に、ぞくりと寒気が走った。


 落ち着け。


 まずは、何が起こったのか思い出そう。


 俺は確かに、昨日かなり飲んでいた。


 そして、酒の席で知り合った女の子をお持ち帰りして、めちゃくちゃヤッた。


 ……そこまでは覚えている。


 だが、それから先の記憶が、ぷっつりと途切れていた。


 飲みすぎたとはいえ、ここまで記憶が飛ぶなんて初めてだ。


 それに、いくら激しく動いたからって……。


 いや、待て。


 もしかして俺、あの子のほかにも誰かを……?


 すると――。


 呆然と立ち尽くす俺の前に、一人の女性がこちらを見ていることに気がついた。


 ……おお。


 豊満な胸元に、品のいい顔立ち。


 三十代くらいだろうか。


 女性の魅力は三十代から増す、なんて話を聞いたことがある。


 なるほど。


 目の前の美女は、まさにその言葉を体現しているようだった。


 落ち着いた物腰と、大人の女性ならではの色香。


 ……いやいや、ちょっと待て。


 この人、誰だ?


 そして俺は、一体どこにいるんだ……?


  ……待てよ。


 俺は、ひょっとしてこの女性にお持ち帰りされたのか?


「マママ……?」


 不意に、小さな声が聞こえた。


 ハッとして声のした方を見る。


 俺の右隣には、車椅子に乗った小さな女の子がいた。


 ひどく痩せ細った身体。まだ幼児だろうか。


 だが、驚くほど整った顔立ちをしている。将来は間違いなく美人になるだろう。


 ……いや、そんなことはどうでもいい。


 今、この子は何と言った?


 マママ……?ママのことか…?


 目の前の、この豊満な美女を?


 その瞬間――。


 全身から、サァッと血の気が引いていった。


 まさか……。


 まさか、まさか……!!


 俺は今、過去の過ちの結果を、目の前に突きつけられているのか!?


 ……俺の子なのか!?


「この人……ダァレ?」


 車椅子の女の子が、不思議そうに俺を見上げた。


 ……いや、それはこちらの台詞なんだが。


 あなたたちこそ、一体どちら様なんでしょうか……。


 すると、謎の豊満美女がにっこり微笑んだ。


「ワタルちゃん、この人、グズ渡さんっていうのよ」


「クズワタリ?」


 …………。


 違う。


 グズ渡でも、クズワタリでもありません……。


 「俺の名前は、晴渡虹介です……。」








ここを書くために、今までやってきたと言っても過言ではありません。


……いや、さすがに過言かもしれません。




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