↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨音時雨は、晴渡虹介を知らない  作者: 白ご飯
第二章 時空ワタル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/44

第36話 放置されている丸鶏

 

 マママさんは、これ以上言葉を重ねても、ワタルさんを傷つけるだけだと察したのだろう。


 口元には笑みを残したまま、けれど瞳にはうっすらと涙を浮かべ、ワタルさんから一歩身を引いた。


 こんなにも、目の前で歯がゆく、悲しいすれ違いが起きているというのに。


 俺は――。



「ぶえぇっっっくしょい!!」



 盛大なくしゃみをかましてしまった……。


「あら……ごめんなさい。私ったら、丸鶏が傷まないように、エアコンの設定温度を20℃にして、風量も強にしていたのよね……」


 マママさんは慌ててリモコンを手に取り、設定温度を24℃まで上げてくれた。


 ……いや、マママさん。


 丸鶏は、一旦冷蔵庫に入れておいた方がいいのでは……。


「……そうね。これ以上グズグズしてても仕方ないわね。ママ、さっき言ってた、きび団子の巫女のヒントって何のこと?」


 ワタルさんも寒かったのだろう。二の腕をさすっている。


 ただでさえ小さく、痩せた身体なのだ。俺よりも寒さがこたえていたに違いない。


 ふと、マママさんと目が合った。


 マママさんは何も言わず、ソファに置かれたブランケットへ視線を向ける。


 ……なるほど。


 俺はブランケットを手に取り、ワタルさんに差し出した。


「……どうぞ」


「……ありがと」


 ワタルさんは小さく礼を言うと、ブランケットを肩に掛けた。


 マママさんはそれを見届けてから、ゆっくりと口を開いた。


「カナエさんは、祝詞の『四、何を代償に』という条件に、本来とは違う値を代入することで、『代替贄』という裏技を編み出したでしょう?」


「ええ……」


「だったら、『一、誰が』という条件も、指定の仕方を変えられるんじゃないかしら?」


「指定の仕方……?」


「そう。単に『ワタルちゃん』という存在を指定するんじゃなくて、今、この瞬間に術を使おうとしているワタルちゃんの意識そのものを、唯一の基準として固定するのよ」


「……絶対参照、ということ?」


「ええ。そうすれば、過去に同じワタルちゃんが存在していても、術が連れていくべき意識を取り違えずに済むかもしれないわ」


 なるほど……。


 過去にいる『意識②』と、これから過去へ渡る『意識③』。






 同じ人間の意識でも、その二つを明確に区別できるのなら――。


 俺達は、ようやく一つの可能性に辿り着いたのかもしれない。


ありがとうありがとう。ございますございます。


……大事なことなので二回ずつ言いました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。