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雨音時雨は、晴渡虹介を知らない  作者: 白ご飯
第二章 時空ワタル

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第26話 命に代えても


「え……え、えいぎゃ?!」


俺は、ワタルさんが持ちかけてきた突拍子もない対価に、呂律が回らなくなった。


「コホン! ま、私主演の映画……って言いたいところだけど、この体だからね……。私の書いた原作・脚本を映画にしてくれたらいいわよ!」


フンッ! とでも言いたげに腕を組み、顔を逸らす。


なんだ……。


この子、年齢相応の可愛らしい夢みたいなもの、ちゃんとあるんじゃないか……。


「ふふ……」


俺は、ようやく覚悟を決めた。


「わかりました。時空の巫女様の仰せのままに。映画は私にお任せください」


俺は恭しく頭を下げた。


「約束よ」


「命に代えても」


俺なりのブラックジョークだ。


「アハハッ!!」


ワタルさんは、お腹を抱えて笑ってくれた。



そして俺は、時空家に伝わる「秘薬」というものを飲み込んだ。


遠ざかる意識の中で聞こえたのは、ワタルさんの低く掠れた声。


「……掛けまくも畏き、時写しの大神……」


その続きを聞き取ろうとしたが――



プツン……。



それが、三十二歳の俺の最後の記憶になった。



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