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第26話 命に代えても
「え……え、えいぎゃ?!」
俺は、ワタルさんが持ちかけてきた突拍子もない対価に、呂律が回らなくなった。
「コホン! ま、私主演の映画……って言いたいところだけど、この体だからね……。私の書いた原作・脚本を映画にしてくれたらいいわよ!」
フンッ! とでも言いたげに腕を組み、顔を逸らす。
なんだ……。
この子、年齢相応の可愛らしい夢みたいなもの、ちゃんとあるんじゃないか……。
「ふふ……」
俺は、ようやく覚悟を決めた。
「わかりました。時空の巫女様の仰せのままに。映画は私にお任せください」
俺は恭しく頭を下げた。
「約束よ」
「命に代えても」
俺なりのブラックジョークだ。
「アハハッ!!」
ワタルさんは、お腹を抱えて笑ってくれた。
そして俺は、時空家に伝わる「秘薬」というものを飲み込んだ。
遠ざかる意識の中で聞こえたのは、ワタルさんの低く掠れた声。
「……掛けまくも畏き、時写しの大神……」
その続きを聞き取ろうとしたが――
プツン……。
それが、三十二歳の俺の最後の記憶になった。




