第13話 リミットブレイク
ー好き……だから……ー
ー好きだよ……ずっと……?ー
ダメだ……。
今回は、何度考えても、聞き間違えている可能性が見当たらない。
つまり――
晴渡社長は、私が好きだから、今、私を抱きしめている……と?
つまり……それは……。
私と二股がしたいということ!?
その瞬間、桜花の言葉が脳裏によみがえった。
「お金持ちに越したことはないけど、倫理観の薄い人と付き合っても、モラハラされたりDVされたり、身を窶すのがオチなんだから!」
こんの……!
人が、こんなに苦しんでいるというのに……!
この男は……!!
「……あの!!」
私が抗議の声を上げようとした、その時だった。
「二股じゃないから!!」
私の声と、晴渡社長の声が重なった。
「え……」
「ずっと……説明できなくて、ごめんね……」
晴渡社長は、少し苦しそうな顔で続けた。
「理由があって、うまく説明はできないんだけど……俺の、その……彼女は……もう会えないっていうか……」
「……???」
何を言っているのか、さっぱり分からない。
「でも、時雨への気持ちに嘘はない!!」
「…………」
「ずっと……これからも……」
「…………????」
ますます分からない。
彼女には、もう会えない?
でも、私への気持ちに嘘はない?
ずっと……これからも……?
頭の中に、疑問符だけが増殖していく。
「でも、時雨が、会いたくないっていうなら……もう最後にする」
そう言って、晴渡社長は私を腕の中から解放した。
その時――
晴渡社長の、真っ赤になった顔が見えた。
嘘、じゃない……。
この人……本気で、私に告白したんだ……。
「アババ……」
「アババ?」
「アバババババババババババババババババババババ!!」
「ええっ!? 時雨!? イダァッ!!!」
その時、私は思い切り晴渡社長の脚を踏みつけると、荷物を抱え、謎の奇声を発しながら走り去っていったという。
そうして、追いかけてくる晴渡社長をものともせず、私はなんとか逃げ切ることに成功した。
そして、通りかかったタクシーに飛び乗る。
「お客さん、どこまで?」
「アバババババ!!」
「……は?」
「アババババババババ!!」
「……降りてください」
まさかの乗車拒否。
そして私は――
追いついてきた晴渡社長に、あっさり捕獲されたという……。




