第12話 晴渡虹介の回想 2
流星群のような謎の青い光が、空から消えてなくなったあとも、俺は時雨に連絡を取り続けていた。
電話をかけても、出ない。
メッセージを送っても、返事がない。
アパートにはいないのかもしれない。
そう思った俺は、近くにある彼女の実家へ、深夜の迷惑も顧みず向かった。
何でもいい。
彼女の無事だけを確認したかった。
あの青い光が夜空に降り注いだあと、恵みの雨が降り始めた。
夜も深まる時間だというのに、外へ出て、雨に打たれながら喜び叫ぶ人々の姿もあった。
けれど、俺にはそんな光景を眺めている余裕などなかった。
走っているうちに、ふと気がついた。
――あの青い閃光が、夜空を突き抜けた場所。
あれは、こっちの方角からではなかったか……?
そう思った瞬間、胸の奥に、とてつもない胸騒ぎが走った。
不安からくる動悸とは、こんなにも人の体力を奪うものなのだと、初めて知った。
走っている以上に、息が切れる。
口から心臓が飛び出るかもしれない。
そう思わせるほど、苦しかった。
それでも、足を止めることはできなかった。
時雨の実家に着く。
俺はインターホンを、何度も忙しく鳴らした。
しかし、反応がない。
返事が返ってこないことへの苛立ちに耐えきれず、俺は玄関の引き戸を強く叩いた。
「スミマセン! 晴渡です!! 深夜に申し訳ありません!!」
暫くすると、玄関に灯りが灯った。
やがて、何度か顔を合わせたことのある桜花ちゃんと百花ちゃんが、玄関から顔を出した。
双子だけあって、ぱっと見ただけでは、どちらが桜花ちゃんで、どちらが百花ちゃんなのか判別がつかない。
「深夜に……申し訳ない! 時雨さんと、連絡が取れなくて……ハァ、ハァ……。何かあったんじゃないかと思って……来てみたんだけど……ハァ、ハァ……」
はたから見れば、たしかに俺は、不審者と間違われてもおかしくないだろう。
「あ……その……お姉ちゃんは……旅に出ました」
「会社を退職したから、気分転換に……。多分、一ヶ月は戻りません」
双子の妹たちは、続けざまに言葉をつないだ。
まるで、俺が納得せざるを得ない理由を、あらかじめ用意していたかのように。
正直、「はい、そうですか」と納得して引き下がるほどの説得力は感じなかった。
しかし、家族にそう言われてしまえば、それ以上の理由や説明を追及することなど、夫でもない俺にできるはずもない。
「そうなん……ですか……」
どうしてだろう。
なぜか、その時の俺は――
もう、時雨とは二度と会えない。
そんなことを、心のどこかで悟っていた。




