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女子寮内のちょっとした会話

夕食と水汲みを終えたあと、女子訓練兵舎の一角は、昼間とはまるで別の空気になっていた。


外では虫の声が鳴き、窓からは淡い月明かりが差し込んでいる。


「はぁ……今日も疲れたねぇ……」


ミーナがベッドに腰掛けて、伸びをする。


「立体機動って、想像の三倍はしんどいよ……」


「何言ってるんですか、ミーナ。まだ始まったばっかりですよ」


サシャは毛布にくるまりながら、もぐもぐと何かを食べていた。


「……それ、どこから出したの?」


クリスタが苦笑する。


「備えは大事ですから!」


自信満々にサシャは言った。


しばらく沈黙が流れたあと、ミーナがふと思い出したように口を開く。


「……ねえ、クリスタ」


「な、なに?」


「今日、水汲み……べレスと一緒だったんでしょ?」


それを聞いた瞬間、サシャの動きが止まった。


「そうですよ!ユミルと私もいたんですけどね。」


アニもちらりと視線を上げる。


「……結構、近い距離で話してたよね」


「え、えっと……」


クリスタは少しだけ頬を赤くする。


「ただ、偶然、一緒になっただけで……」


「それで、パンも渡してた」


アニが、淡々と事実を述べる。


「ミカサに断られたやつを、あの人がサシャに渡してたでしょ?」


「え……見てた?」


「偶然」


短く答える。


サシャは毛布から顔を出して、目を輝かせた。


「べレスは……神様です……!」


「ちょっとサシャ、大げさだから」


ミーナが笑う。


「でもさー、あの人、なんか不思議だよね」


「うん……強いのは確かだけど、それだけじゃないっていうか……」


「怖いようで、怖くない」


クリスタの声は、少しだけやわらいでいた。


「……あんた、気になってるんじゃないの?」


アニがぼそっと言う。


「ち、違うよ!」


クリスタは慌てて否定する。


「ただ……話しやすいというか……安心するっていうか……」


「それを普通、“気になる”っていうんだよ」


ミーナがニヤニヤする。


「えぇ!?」


クリスタは布団を引き寄せ、顔を半分うずめてしまう。


「……でも、べレスって、時々すごく遠い目をするんだよ」


小さく、だが真剣な声。


「何か、知ってるような……何かを背負ってるみたいな……」


「……それは、皆似たようなもんでしょ」


アニは天井を見つめながら言う。


「ここに来た時点で、覚悟してるか、逃げ道がないかのどっちかだ」


「でも……」


クリスタは、ベレスの優しい声を思い出す。


“無理に急がなくていい”


その言葉が、胸の奥に残っていた。


サシャが、ぽつりと呟く。


「……でも、いい人なのは、わかります」


「うん、それは同意!」


ミーナもすぐに頷いた。


「少なくとも、嫌な人じゃないよね」


アニは少しだけ目を細める。


「……まあ、様子見ってとこかな」


「様子見?」


「どうせ、この戦争の中じゃ、誰もが本性を見せることになる」


「……」


その空気を、クリスタがやさしく変えるように言った。


「……明日も、ちゃんと頑張ろうね」


すると、ミーナが笑って頷く。


「うん!」


サシャも元気よく手を挙げる。


「はい!!」


外では、風が木を鳴らしていた。


別々の部屋で、それぞれがそれぞれの想いを胸に、静かに眠りにつく。


だがその夢の先に待つものを、

まだ誰も知らなかった。

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