ユーリアの家の裏稼業
よし、とユーリアが哀愁から復帰した所で、女性陣は浴衣に着替えに行く。
大人の優美さを示す浴衣や可愛らしい浴衣。和装にあった髪型にユーリアがセットして、ゲル婆から借りた簪を頭に差していく。
「なんとまあ現代はすごいのう。髪をこのようにまとめ込むとは……」
戦時中に比べればアレンジが効いているのであろう。ユーリアはVサインをゲル婆に見せるが、反応がなかったので、恐らく戦後に普及したのだということがわかった。
着替えを済ませて宴会場に戻れば、いつの間にかに男性陣も浴衣に着替えていた。
ゲル婆の手配で、仲居さんに着替えさせてもらったようだ。
「どう僕似合うユーたん?」
「はいはい、世界一のイケメンですよー」
わざと着崩しているのか胸板アピールをしている父に適当に返す。
「シェルト先輩が眼鏡外してるー!」
ティナが指摘する通り眼鏡を外したシェルトがそこにはいた。イケメンさが増している。
「シェルト先輩ってメガネ外すとイーヴァル先輩並みにイケメンオーラがすごいよね」
ユーリアがそんな言葉を漏らせば、エルノがユーリアに抱きついてくる。
「ユーリアはほかの男を見ちゃダメだぞ! パパが一番だ。」
「エルノそろそろ親バカはよして、こちらは真面目な話がしたいから……」
ヴィオラの笑顔で起こっている顔にエルノは顔を引きつらせてはいと大人しく座り込む。
ヴィオラは座布団に腰かけるとその妖艶な眼差しでゲル婆を見た。
*
「して、聞きたい情報とはなんじゃ?」
「はい、単刀直入に聞きますとバスロレーベの動きです。
この間の対抗戦で我が校の決勝戦である組織の乱入者があり現在生徒が1名昏睡状態なのです。
それに加えてもう一人狙われた者が同じくバスロレーベの出身だったのですが、何故自分が狙われたか分からないと言っていました……」
「ほう、それで今回の乱入者が現れたのはバスロレーベで何か起こっているのではないかということか……」
「はい」
その話は皆無関係ではない。皆真剣な表情でゲル婆を見つめる。
「あそこはなあ、第八王子まで世継ぎがおる。そして今回王が病に倒れ、第一。第二王子に置いては病で死んだという話じゃ。ちなみに怪我を負った者たちの名前は?」
「ルミドラ・ヘドマンとドニ・カールソンです。」
ゲル婆はその言葉に難しい顔になる。
「ルミドラ・ヘドマンは恐らく第三王子の派閥に入っておるヘドマン家の娘であろう。
確か腕を上げるためにヴァルヴィストに入ったという話を聞いたことがある……ドニという名の者は知らんな……」
「つまり、国の後継者争いにうちの学園の対抗戦が巻き込まれたという事か……」
「恐らく、それだけじゃあるまい。学園都市である其方らの力をよく思っていない者の仕業だ。
でなければ暗殺など人目のつく所ではなく、死角からついた方が確実だ……そうであろう? エルノよ。お主ならどう考えるのじゃ?」
エルノは肩を竦めるとゲル婆を睨む。
「僕はあまり、そういう事人前じゃあ言いたくないんだけど?」
「娘も稼業の事は言ってあるのであろう。今更娘の動きを見て、裏で暗殺稼業をやっていると言っても誰も驚かん」
友人たちは皆ユーリアを見た。ゲル婆はなんでも知っていて同郷であるから心許していたのに、ここでバラすのはひどいと思う。
「ゲルおばあ様。それは隠密殺しですわ。我々は決してこの事を誰にも告げません。それを今言われては……」
「まあ、確かに暗器を僕に使いまくるようじゃねえ。先輩方3人とルーカス先生あたりは感じてたんじゃない?」
確かに四人の反応は驚きというよりも納得という顔だった。この前の文化祭で演出のために使っていた暗器が仇をなした。
「とりあえず、ユーリア君なら暗殺対象者2人を前にどう動く?」
「私であれば、まず警戒すべきはルミドラ先輩でしょう。彼女と相対しては深手を負います。
なので、彼女を油断させた上で時間をかけてからしますね……。例えば私が大人なら教師となり近づき、毒を盛って体の自由が効かない間に殺します。」
「ほう、それでドニくんは?」
「ドニの場合本人よりも周りを気にした方がいい。学園にいる間はありませんが、学園を出て行動していると時々尾行されている感覚がありますから、恐らくドニもどこかの名家の育ちでしょう。なので殺すなら学園内ですね……」
ユーリアは淡々とどう殺すか語ればティナやアネットの表情が変わる。ユーリアは悲しげに笑うと、エルノに言う。
「恐らく、学園の信用を他国から失くすためでしょう。
まあ、例えばある王子の側近がどこかの学園都市の後ろ盾を受けているというのが1番ありえる可能性ですね……。
暗殺者が魔獣だったからこその派手なパフォーマンスでしたが、影で人間が動いていますよ。
現に魔術具に細工した魔力はあの魔獣のものではない」
「はい、どうかなー僕の優秀な娘。
知識はあるんだけどね……これが実行できない優しい子だから、ジェルジュに期待中なんだ!
長男坊はユッカの愛息子だから手を染めさせる事はできないし……」
エルノは自分の娘を誇っているが、ユーリアは皆の前で本性を出してしまった気がして、友人たちの顔を見ることができない。
「ユーリアよ。全てを隠し通すことはできないのだ。
それにここにいるメンバーはお主が心から友人と呼べる者たちだろう?
向き合え……」
ゲル婆は何かをユーリアに伝えたいようだが、ユーリアには分からなかった。
ユーリアは少し外に出ると言い残し、宴会場を後にした。




