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温泉デート?

「くっついて来ないで!」


「いいじゃないかー。ユーたんとデート。温泉旅行!」


「デートじゃないわよ。テディもティナ達も一緒にいるじゃない!」



 馬車の中でひっついてくる父親を、懸命に剥がそうとしているのはユーリアだ。



「デート?」


「エルノとユーリアとティナとベネディクトはデートなの?」


「ニノン、マノンこれはデートじゃないのよ。ただの旅行よ!」



 純粋な魔獣の子供であるニノンマノンに悪影響の話だ。

 ニノンマノンは馬車の中小鳥の姿で、フワフワと飛び回っている。




 現在、ユーリアは北の国ヴァイツノイナーに来ている。


 クィントン家で子飼にしている黒鷲達を使って国の城門付近まで時短をして訪れたのだ。



 今回単独で動くつもりだったのだが、旅支度をしているところをティナやエルノに見つかり、ついてくることになってしまった。


 今回のメンバーはエルノ、ティナ、ベネディクトだ。


 他のメンバーに知られて、これ以上身動きができなくなるのは困る。

 1日だけユーリアは自由散策の時間をもらう事を約束して目指すは温泉だ。







 *


「温泉でダブルデートとかいいよねー。ティナちゃん。……ダブルデートなんていつぶりだろう」



 一人ではしゃいでいるエルノを尻目に、ユーリアが目の前に座っている二人を見れば、お互いそっぽを向いて顔を赤くさせている。


 ユーリアがその様子を見てニヤニヤとしていれば、ティナには怒られてベネディクトにも睨まれた。


 一番悪いのは浮かれているエルノではないだろうか。






*


 温泉宿に到着すると立派な宿屋だった。なんでも老舗のようで今回はエルノの奢りである。


「ユーたんは僕と一緒のお部屋だよ。ティナちゃん達は隣のお部屋ね! ここ建物古いから気をつけてね!」



 ユーリアはとりあえずエルノに回し蹴りを決めて、ティナと一緒に部屋へ入った。



「ユーリアいいの? あれ?」


「わざと受けてるだろうから大丈夫。それより男は男で女は女で部屋良かったよね?」



 ティナは顔を真っ赤にさせると頷く。



「なんで……ベネディクトと同じ部屋とか耐えられない……」


 ティナにしてはしおらしい態度である。これはベネディクトとの間に進展ありと、ニヤニヤしていても何も言ってこない。

 ユーリアは拍子抜けとばかりに荷物を置いた。



「さてと……ティナー早速温泉に行こ!」


「うん。準備するから待っててー!」







 *


 ユーリアたちがお風呂の準備をして部屋から出れば、ニコッと笑ったエルノが待っていた。



「ふふ、実はね貸切風呂予約してたの! ねね、ユーリア一緒に入ろうよー!」



 抱きついて頬をすり寄せてくる父親を、ユーリアは押し除けながらティナに提案する。



「せっかくだから皆で入ろっかー!」


「何言ってんだよ! ユーリア! なんで俺が一緒に……」



 ベネディクトとは怒っている。その反対にエルノは満面の笑みだ。



「ベネディクト君良いじゃないか……コソコソ。」



 エルノは何かベネディクトに耳打ちすると耳まで真っ赤になっている。思春期の子供をいじめるのは良くないと思うが、ユーリアも反応を見るのが楽しみだからついつい放置してしまった。



 風呂場に行けば貸切風呂と大浴場の入り口が併設してあり、大浴場に入ろうとする面々と鉢合わせする。



「あら? ユーリア? エルノ先生?」



 女風呂に入ろうとしているヴィオラと、男風呂に入ろうとしているルーカスはだった。


 ティナとユーリアはニヤニヤとしながら驚いている二人を見た。



「先生、大丈夫ですよ。ここにいるメンバーだけの話にしますから……ごゆっくり……」



 ユーリアがあっさりと貸切風呂に入っていこうとすればルーカスに腕を掴まれた。

 ユーリアはルーカスを睨みつける。


「誤解だ! 少々北の地に確認事項があって、ヴィオラたちと温泉に寄っていただけだ!」


 ユーリアは首を傾げて、必死になって弁明しているルーカスの腕を払い、後ろ手に拘束する。



「せっかくのデートをそういう風に言って誤魔化すの良くないと思います。ヴィオラ先生の身にもなってくださいよ。私たち誰にも言うつもりないもんね?」


「うん。二人が出来てたとしてもなんら疑問はないよ。」



 ティナとユーリアが二人頷いていれば、ルーカスがエルノに視線を送り助けを求めている。

 エルノはニコニコとしながら我関せずを通している。



「ユーリア、早く貸し切り風呂行こう! 先生たちの邪魔しないの!」


 エルノはそういうとユーリアの拘束している手を引っ張り、肩を支えてユーリアを貸し切り風呂へと連れていこうとする。



「あら、ユーリアたちは貸し切り風呂なの?」


「そうですよ……このアホな父が予約していたそうです。」


「そうなの……せっかくユーリアたちと一緒に入れると思ったんだけど……」



 男女で一緒に入れるのは貸切風呂だけなので、先生たちは結局別々に入らなくてはならないのだ。一人で温泉は味気ないと思い、ユーリアはティナを見る。

 ティナがうんと頷き口を開いた。



「貸切風呂も楽しそうだけれども、ヴィオラ先生と一緒にお風呂入れるのレアだからそっちがいーな。ユーリアパパごめんなさい。貸し切り風呂はまた今度ね……」



 そう言うとティナはさっさとヴィオラと共に女湯に入り、ユーリアもエルノと攻防しながら女湯に入った。



「せっかく娘の成長具合が確かめられると思っていたのに……ルーカス君もベネディクト君もずるいよ! ユーリアの水着姿見てるんでしょ?

 僕なんておしめは替えてたけど、その頃のユーリアしか知らないんだー!」



 エルノの叫び声が男湯の方から聞こえるので、おそらく男湯に入ったのであろう。


 ユーリアは何も聞かなかった事にして3人でお風呂に入った。



「ユーリア、ルーカスが言っていた事は本当なのよ。

 西の地で何か問題が起きてるのはわかっているけど、あそこは閉鎖的な国でね……今は余計に情報を閉じているらしいの。

 だからこちらにいる情報家に直接話を聞きにきたと言うわけなのよ。それに……」


「あら、ティナにユーリア」



 そう言って入ってきたのはベティーナとアネットだ。



「こんな所で会えるなんて嬉しいですわ」



 アネットとティナと3人ではしゃぐ。その様子を大人な二人が見守っている。



「そうね……お風呂から上がったら少し話を聞いてもらおうかしら……」



 ベティーナの言葉に頷き、ユーリアは同級生とワイワイキャッキャとお風呂に入っていたのであった。

 女風呂にいる存在に気づかずに……。






 *


「それでアネットはこたつパーティーの時に、ガストンに強者揃いの修練場に誘われて、温泉まで来たってわけね……」


「はい、その温泉とやらは初めてですし……。何よりも手強い相手がいると聞いて……皆さんも一緒と聞いたので……」



 ガストンの甘い誘惑にあながえなかったという訳だ。

 正直シェルトがいるのはありがたい。

 ゲル婆に会いたいので、シェルトに頼めるとありがたい。



 そこに学園で飼っている梟がヴィオラの腕に止まった。



「どうやら情報家は外出中みたい……。戻りがいつになるか分からないって……前もってアポ取っていた筈なんだけど……」



 ヴィオラとルーカスの顔色が曇り、ガストンが呑気な事を言い始める。



「ユーリアたち魔獣に乗って帰るんだろー! 俺たちもそれに乗って帰れば滞在期間延ばせるじゃん。先生も一緒に修練場行こうぜー!

 斧使いのおっちゃんめっちゃ強くて戦いがいがあるよー。」



 ニノンマノンと遊んでいたガストンがルーカスを誘えば、ルーカスはその誘惑にあながえそうにない。

 ヴィオラがため息をつけば、明日はどうやら修練場行きが決定したようだ。

 さっきから話を聞いてうずうずしているベネディクトを見てエルノが話しかける。



「ベネディクトも気にならんだろう? 僕ももしかしたら旧友がいるかもしれないから明日一緒に行ってみようか?」


「はい!」



 ベネディクトが元気に返事をすれば、皆で笑いこちらの明日の予定が決まった。


 3泊4日の日程がどうやら延長するかもしれない。

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