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閑話 こたつの作成と鍋パーティー

 

 ユーリアは本格的な冬を前に開発している魔術具がある。



「ユーリアさん、このテーブルに保温機能をつけるというのは……」



 日用品の魔術具が作りをしている教室でトピアスに問われる。



「人をダメにする最強の魔術具の一つ」





*

 ユーリアが学園に入って作成したいと思っていたのはこたつだ。

 欧米文化に近いこの世界では土足で歩き回るため、テーブルに保温機能をつけるという概念がない。


 しかし、冬といえばこたつにアイス派である。

 本格的な冬が到来する前にこれを完成させたいのだ。


「赤魔石の回路とほんのり風で温風風にして循環させちゃって……後は椅子にかけながら入れるタイプにして……生産クラスの木工の人に声かけて……」



 ユーリアは妄想を膨らませて、自分の部屋を思い描く。ソファにかけながらポカポカと過ごす自分を思いはせ、ニヤニヤとしている。


 ちなみに今のユーリアの部屋は土足玄関である。玄関でスリッパに履き替えて生活している。


 スリッパはソルに頼んで作成してもらい、猫の顔が入った可愛いスリッパを手に入れている。

 もちろんテディとは色違いのお揃いである。


 だが、あまり履きたがらないので、靴だけ脱いでもらっている。




*


「人をダメにする魔術具ですか……。そんなもの必要性はあるのですか?」


「トピアス先生、発想の自由」



 ユーリアはそう言い切るとどんどん自分の世界に入り素案を作り上げる。


 どういうものを作りたいかシェルトに相談すれば呆れられ今までの生活に密着した発想はどこにと言われてしまった。

 悔しくなったユーリアは提案した。



「シェルト先輩この魔術具作ったらうちに来てくださいよ! これの良さを証明して見せます!」



 ユーリアはこたつができたら自分の家に呼んでその良さを広く知ってもらおうと思っていたので、一人目の客人だ。



「その話楽しそうですね……私もお邪魔しても?」



 トピアスまで混ざってきて、これで二人確定だ。



 教室に戻り、ティナも誘うとアネットも参戦することになった。


 ユーリアは自分用の正方形のコタツと来客用の長方形の足を短いものに調整できるコタツを用意することに決めた。





*


 こたつ披露の日は冬休みに入って2日目の日。雪が舞い絶好のコタツ日和だ。

 ユーリアはテディではなく自分が作った料理を用意していた。


 ユーリアが出迎えれば次々と来客がくる。


 まずはイーヴァルとガストン、ベティーナとソルを連れたシェルト。

 ソルのアドバイスをもとにこたつの掛け布団の作成に服飾コースのミシンのような機械で仕上げたのだ。だからまだソルが来るのは分かるが、何故他の先輩方が来るのか……。

 先生陣はトピアスとルーカスにヴィオラ、同級生はティナにベネディクト、アネットにヤンだ。


 明らかにコタツパーティーのキャパを超えてしまった。

 ユーリアは一人プンプンして皆にいう。



「もー、いっぱいきすぎだよ。コタツ入れないじゃん!」



 そう言いつつもユーリアは自分用の正方形のこたつを出す。


 部屋の中は二つのコタツと人でいっぱいだ。

 端に寄せたソファにルーカスとヴィオラが座り、



 用意していた料理も倍必要そうだ。


 ユーリアは残りの材料で作れる料理を手早く作れるものを作り、コタツに持っていく。


 コタツを調べるシェルトとトピアス達に喝を入れて、パーティーの開始だ。


「なんだ? この料理は鍋ごと出すとは品のない……」



 ルーカスがソファから立ち上がり料理を見る。



「鍋が保温性の高いものだから普通よりもあったかいの食べれるんだよ。」



 ユーリアがおたまですくってルーカスに渡すと渋々口にした。



「うまいな……酒はないのか?」



 ユーリアは鍋に合う酒と言ったら焼酎が日本酒なのだが、ここにはない。

 とりあえず、猫型になってティナのひざで丸まるテディの了解を得て、テディ秘蔵の酒を出した。


 何故かイーヴァル達先輩方も酒を飲み始める。


 もはやユーリアの部屋は宴会場となっていた。





*


 酒に酔ったガストンはティナ達のところのこたつに無理やり潜り込み、アネットに近寄るし、トピアスとシェルトは二人で、魔術具の事で熱く盛り上がっているしで、大変なことになっている。


 ガストンの空いた席にルーカスが潜り込み、ユーリアはヴィオラの隣でノンアルコールカクテルで雰囲気を楽しんでいた。



「あなたはコタツとやらに混ざらなくていいの?」


「私はこういう雰囲気を眺めている方が好きですよ。」



 ヴィオラに声をかけられるが、ユーリアは基本人間観察が好きなので、こういう風に上から眺めている方がいい。



「あら、そうなの……。私は混ざってこようかしら……」



 ヴィオラは立ち上がるとルーカスを無理やり追い出し、場は騒然としていた。



「やっぱりこたつっていいよねー」



 ユーリアが一人呟いていると周りから飲み物の催促をされ、バーテンダーばりに頑張った。


 もてなす側の大変さが分かったところで、テディがやってきて手伝い始めてくれる。



「どうもコタツは寝心地がよくて……ユーリア様お一人に任せてしまってすみませんでした」


「いいんだよ。今日はテディもまったりしてればいいのに……」


「私も少し飲みたくなったんですよ……」


 テディはそういうとこっそり酒を飲み、客人に出す飲み物を作り始めた。




*


「ユーリア様コタツのよさは分かったのですが、皆さん帰りませんね……」



 夕方から始めたパーティーだったが、皆夜遅くなっても帰らない。

 流石に12人がごろ寝するスペースはない。


 すでに酔っ払って眠ってしまったルーカスはユーリアの布団に寝かせてあるが、他のメンバーをどうするかユーリアが迷っているとトピアスが話を切り出してくれた。



「もうこんな時間ですか……。楽しい時間はあっという間ですね……。ヴィオラ先生そろそろ帰りますか。コタツ私も作ってみますね……」



 ユーリアはどうせ作るならと、トピアスにイスでも使えるように机を作れる事と掛け布団の事を伝えて、トピアス達は帰った。


 先輩方もいつまでもアネットを口説こうとするガストンを引きずって帰っていく。


 友人達は酒を飲んでいないが夜遅いので、番犬ならぬ番猫としてテディに寮まで送っていくようにさせた。ベネディクトも一緒にティナ達を送っていくようだ。





*


 皆に別れを告げると、騒がしい一日が終わり、ユーリアは食器を片付け始めた。



「ふうー。なんとかなった……」



 カチャカチャと食器の音を立てながら、ユーリアが洗っていると、寝室から顔色を悪くしたルーカスが出てきた。



「おい、水くれ……」



 こたつに潜り込むルーカスに水をあげると、一気にそれを飲み干した。



「トイレ……どこだ……」



 顔色を悪くしたルーカスがユーリアの腕を掴む。

 ユーリアが介抱しながらトイレに連れ込むと、ぐったりとしたルーカスがトイレから戻ってきた。


 何故か上半身裸である。


「さみっ、ユーリア風呂貸せ……」



 ユーリアはお風呂の準備をして、タオルとテディの着替えを渡す。



「そんな状態でお風呂入っても大丈夫なんですかー?」


「いい。とりあえず人のうちでこの状態は嫌だ。」


「そうですか……」



 ルーカスがフラフラしながら風呂に入るが、ユーリアは心配でしょうがない。

 ユーリアは生存確認のため風呂場を覗く。



「大丈夫ですかー?」


「覗くな!」



 浴槽に浸かって青い顔の状態のルーカスが見えた。



「そんなに心配なら一緒に入ってくれてもいいんだぞー。」



 ユーリアはポンと手を打つと風呂場を後にしようとするが、ルーカスが「冗談だから、こたつで待ってろ」と言われてユーリアはこたつで待っていた。





*


「おいおい、ユーリアこういう時は照れながらもタオル巻いて入ってくるのが、男の願望ってもんだ……。なのに一人寝やがって……」



 ルーカスはユーリアの隣に入ると抱きしめるようにして一緒のコタツに入って眠りについた。





*


 道草をして帰りが遅くなったテディが帰ってくればルーカスに抱きしめられながら眠るユーリアの姿があった。



「これは気にくわないですね……」



 テディはユーリアをそっとこたつの端に寄せ、上に毛布をかけると、虎型を取りルーカスを手で払い端に寄せる。



「ユーリア様の隣で眠るのは私だけで十分です」



 ユーリアの顔を舐めれば、ユーリアは眠ったまま条件反射で手を伸ばし、白い虎に埋れてその体を撫でる。


 テディはしばらく撫でられて満足したのか、猫型に小さくなり、ユーリアとルーカスの間に入り、ルーカスを睨む。


「この雑草とやらなかなか根強そうですが、エルノ様はどう駆除されるのでしょうね……、手腕に期待しましょうか……。もし失敗したとなれば……」


 テディは猫の姿のまま、ルーカスの首に手を当て爪を出す。

 熟睡しているルーカスはうっと小さな声を出すも起きることはなかった。

 テディは少し出た血を舐めてその魔力を味わう。


「殺すには惜しい魔力ですね……。フフ。まあもう少し様子を見ましょうか……」


 そう言うと、ルーカスの上に乗り、こたつで丸くなって眠った。




*


 ユーリアは相当疲れていたようでこたつで寝落ちしていた。体のあちらこちらが痛く、ひどく喉が渇いていた。


 そして、ルーカスが目の前で寝ており、どうやら一晩をこたつで過ごしたようだ。こたつの良さと悪さを存分に味わったらしい。寝違えたのとテディが上で寝ていたのだ。



 朝から悪夢を見たと言って、軽い朝食を食べて自分の家へと帰っていった。


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