↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/173

ゲル婆の帰宅と魔術具への細工

「あれが、シェルトの作った武器か……」



 イーヴァルが振るう剣をみて、ゲル婆は呟く。



「2人はどうやら乗り越えたようだな……」



 イーヴァルの太刀筋を見て満足そうに微笑んでいた。



「ゲルおばあさんは2人が抱えていた悩みを知っているの?」



 ユーリアが聞けば、ゲル婆は当然とばかりに頷いた。



「私のひ孫じゃ。全て知っておる。

 奴はイーヴァルの進む道を助力したいと考えていたのに対して、イーヴァルは対等にシェルトと並びたいという思いが強かった。

 自然とその考えが溝を生むことは分かっておった。」



 ゲル婆は「にしても……」と呟く。



「あの大剣使ってるのは大丈夫なのか?

 あれもシェルトが作っていると思うと……。

 シェルトはイーヴァル専用しか興味がないのか……」



 ユーリアは今までクイスマを指導してきた事を教える。その話にゲル婆は頭を抱えて、ため息をついた。



「まだまだ、成長期じゃからなあ。体が大きくなればいいが……。あれはそう大柄な体型になる事はなかろうに……。まあ、お主が身体強化の魔法を徹底的に教えれば少しはマシな剣士になるかのう」



 ゲル婆に言われてユーリアはため息をつくと、顔を見合わせて笑った。



「まあ、若い。自分の可能性を見出すのも悪い事ではない。」



 ゲル婆はそう告げると、席を立った。



「もう十分に見た……。ワシはシェルトを応援する。クラウディアの娘よ。門のところまで見送ってくれぬか?」



 ユーリアはエルノに断り、ゲル婆を門まで送る事とした。





*


 門の外に出れば、30代くらいの従者が待っていた。



「この姿で会うのは初めてだ。分からんだろう?」



 ゲル婆は姿を変え、元の魔獣の姿となった。


 ユーリアは跪くとゲル婆は顔を上げるよういう。



「クラウディアの娘よ。これから益々厄介ごとに巻き込まれるであろう。

 スザクがいなくなった今、南の血を束ねるのはお主となった」



 従者は一筋の毛をユーリアに渡す。



「困った事が有れば、使えば良い。ひ孫の事頼んだぞ。ユーリアよ」



 ゲル婆は長い尾を揺らしながら、ゆっくりと北の地へと向かっていった。






*


「やっと帰りましたか……」



 門の後ろからやってきたのは白猫姿のテディだ。



「テディ絶対あの方がここにいる事分かっていたでしょ?」



 ユーリアが聞くとテディははてと言いながら、ユーリアに会場に戻るよう言った。



「あの人は昔から苦手なのです。無駄に歳を食っている上にお説教臭い。しかしながらシェルト様がひ孫に当たるとは……」


「確かにシェルトもお説教するよね……」



 テディと一緒に笑い、テディはユーリアの肩へと乗り、今度は一緒に会場へと向かった。






*


 会場へと戻ればイーヴァルの班は無事一回戦を突破していた。


 ユーリアは初戦を見逃したが、次に勝てば決勝だ頑張ってほしい。



 エルノのところに戻れば、何故かイェンニがエドガーを連れて来ていた。



「お、ユーリア! さっきの救出劇見ていたぞ……。また何やら新しい手法を編み出したようで……。こっちは対応に追われていたぞ……」


「そう、怒るなエドガー。我がシュペルノヴェイルに優秀な人材がいると他国に知れて良かったであろう」



 エドガーが言うにはユーリアのトリアージをする動きが、戦場の医術師として評価が高いため、観戦に来ていた諸国より学園側に問い合わせが来ていたらしい。


 そこを学園とともに抑えたのが陛下だったらしい。



「ユーリア、よかったな他国にも嫁ぐ可能性が出てきたぞ!」



 イェンニは冗談をいうと、エドガーと共に観覧席へと戻って行った。





*


 エルノはイェンニが去るとテディに話しかける。



「先ほどトピアス先生から連絡があったが、魔術具があの程度の魔法で崩れるのはおかしいそうだ。」



 エルノの話によると、チーム対抗戦には国のトップが来る事も想定しているため、かなり強力な防御壁の魔術具を使っているらしい。


 もしかすると、新入生の実技試験で起きた事件のように、何者かが魔術具に細工をした可能性があるそうだ。


 トピアスが問題の魔術具のところへいるという事なので、ユーリアはテディを連れて魔術具の元へと向かった。



「ユーリアさん、これを見てくれ……」


 

 トピアスはユーリアが来ると、会場内に設置され壊れた魔術具を見せる。



「テディ、これさっきの人の魔力じゃないよね?」



 魔術具からは少しだが魔力の残骸が見える。

 ユーリアはここは人前のため、テディから念話で見解を聞いて、トピアスに伝える。



「恐らくここに残っている魔力の残骸は生徒の者ではありません。

 うちの魔獣はいつも訓練場で魔力を、盗み食いしてるので間違いないそうです……」


「ユーリアさん魔獣はしっかり管理してくださいよ!

 はあ、となると外部犯ですか……」



 トピアスは残骸を見つめ、テディはユーリアの肩から降りて野暮用があると何処かへ歩いて行ってしまった。




 イーヴァル達も自分たちの出番まで空き時間があるので、2人でこちらに来たようだ。



「ユーリア、こちら側の魔術具が大破したと聞いたが……」


「ユーリアちゃん大活躍だったんだって? 僕たちも駆けつけたかったけど、順番が次だったからなかなかこっちに来れなくて……」



 ユーリアはテディとの見解を話す。



「そうか、あの魔法は確かに空に打ち上がった花火に皆の目が行くから、その間に細工したという事か……」


「証拠の魔力集めとかないとね」



 ユーリアはウェストポーチから小瓶を出し一旦洗浄すると、壊れた魔術具からそっと魔力の残骸を小瓶に移す。



「ユーリアちゃん、あまり堂々とそういう事しないの。耐性がない国のお偉いさんの従者の視線が痛いよ」



 イーヴァルの言葉にユーリアは周囲を見渡すと、目つきの鋭い従者たちがこちらを見ていた。


 遠くの観客席で頭を抱えるエドガーが見える。


 ユーリアはニコリとすると、その小瓶をサッと隠す。

 証拠の確保は大事だ。空気中に飽和されてしまう前に密閉して結界を張っておくのが一番だ。


 ユーリアはこっそりとペンで魔法陣を描いて犯人の魔力を保管した。



「イーヴァル先輩頑張って下さいね。さっきの試合は見なかったけど、次の試合は応援します!」



 イーヴァルは「そういう事なら」とシェルトと一緒に会場へ連れられ、控えのメンバーがいるところに置かれる。



「イーヴァル先輩私バイト中。」


「大丈夫。今日はもうそんなにけが人出ないだろうし、もう十分働いたよ。シェルトと見てて、その方が身が引き締まる人がいるから。」







*


 楽しそうにイーヴァルがいえば、身を竦ませたのはクイスマであった。


 そして、なぜかアネットとティナとベネディクトがここにいた。


 ティナに聞けばガストン応援隊として呼ばれたそうだ。


 ベネディクトに至っては特等席だからと満面の笑みで観戦していたようだ。


 3人と話しているうちにイーヴァルのチームの準決勝が始まる。


 次はシードで出てきた副会長ルミドラ率いる凄腕剣士の揃う6年生がメインのチームだ。


 就職先にも繋がるので皆必死な目である。



「ここでこのチームと当たるのはキツいんだよね……。ユーリアの選手登録、勝手にしておけば良かったなー」



 イーヴァルはそう言って控え室を後にした。残る面々はそれぞれ話に盛り上がっている。



「シェルト先輩、イーヴァル先輩いい感じで仕上がってますね!」


「ああ、ユーリアのおかげだ。」


「おばあ様が喜んでおられましたよ?」



 ユーリアの言葉にシェルトが反応する。



「おばあ様って……」


「ゲルおばあ様と呼ばれていたかしらね。」



 シェルトは突然体の力が抜けたのか、しゃがみ込む。ユーリアは慌てて体を支える。

 どこか体の具合が悪いのかと額に触れようとすれば良い止められる。



「大丈夫だ。急にその名が出たからびっくりしたんだ。ゲルおばあさまは何か話してらしたか?」


「んー、2人の事が心配だったみたい。後はシェルト先輩の事を応援するって言ってたよ!」



 シェルトは柄にもなくガッツポーズを小さくとると、笑みをこぼしている。



「ユーリアいい情報をありがとう。」



 シェルトはそう言うとまっすぐに前を見据えた。

 視線の先にはイーヴァルがいた。




「では、イーヴァルチーム対ルミドラチームの対戦を始める」


 ルーカスの合図で準決勝が始まった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。