イーヴァルとシェルトの衝突と想い
「ユーリア来なさい。」
2日後の帰りのホームルーム後ルーカスに呼ばれ、生徒指導室へと向かった。
「それで、トピアス先生から聞いたが、イーヴァルと何があったんだ?」
ルーカスは頭を抱え、机をトントンと指で叩いている。
「何もないんですって……。事故っていうかなんていうか……」
「事故なわけないだろう。お前がイーヴァルに抱きついてたって聞いたぞ!」
ルーカスの不機嫌さは最大である。
ユーリアはひいっと身を竦め、恐る恐る口を開く。
「イーヴァル先輩が元気がないから励まそうと思って……」
ルーカスは「あー」と頷くと、ヴィオラから聞いたという話を教えてくれる。
イーヴァル先輩とシェルト先輩が今、全く一緒に行動していないという事だった。
周りの女子たちも二人に聞いても、理由は教えてもらえないらしい。
「それで、これがお前がらみの案件だという事は分かったぞ……。起こった事を教えろ!」
ユーリアは机をダンと叩かれると、テディにも助言されていたので、ユーリアは起こった事を全て話した。
「ね、酷いと思いませんか? 二人の巻き添えくらったんです。」
ルーカスはため息をつくと、ユーリアを睨む。
「お前は勘が鋭いのか鈍いのかわからんな……。まあいい。明日なんだな! じゃあ、俺が審判をやってやる。ユーリアは二人の戦いに関して口を出すな!」
ユーリアはルーカスに言われるまま頷いた。
*
次の日の訓練場では、イーヴァルとシェルトの二人が待っていた。
ユーリアはルーカス先生と共に訪れていた。
「ユーリアちゃん喋ったね……」
「全く、お前は口をつぐむと言うことができんのか?」
イーヴァルとシェルトにそれぞれ言われてユーリアは俯く。
そんなユーリアを気遣ってか、ルーカスが言葉をかける。
「ユーリアは関係ない。イーヴァルがユーリアにちょっかいをかけてたという話から俺が聞き出したんだ」
シェルトはイーヴァルを睨むとイーヴァルは肩を竦めた。
「僕は悪くないよ。ただ、ユーリアちゃんに抱きつかれてただけだもん」
シェルトは舌打ちすると、ルーカスを見た。
「それで、先生は我々の戦いを見に来たと?」
「面白そうだからな……。まあ、俺が審判やってやるしここに優秀な治癒術師もいる。派手に暴れろ!」
ルーカスはそう言うと訓練場の中央に立ち、審判をする素振りを見せる。
訓練場の周囲には何が始まるのかと休日にも関わらず、人だかりができ始めた。
「ユーリア? なんかいい魔法ないか?」
急にルーカスに話を振られたユーリアは、首を傾げた後、訓練場の4点に跳躍し自分の血を垂らす。
「ふふふ。」
ユーリアの不敵な笑いと共に周囲と遮断された空間が出来上がる。
「魔力、音、視覚全て遮断したよ。向こうからはただの火の壁にしか見えない。」
「相変わらずやる事がド派手だね〜」とイーヴァルが笑っている。
ルーカスは頷くと手を前に出し、イーヴァルとシェルトは立ち位置に着いた。
「はじめっ!」
ルーカスはその場から移動して、ユーリア張る小規模な結界の中に入った。
*
二人の激しい打ち合いが始まり、それぞれ互角の動きをする。
「まだまだいけるよね?シェルト」
「無論」
二人はみるみるうちにスピードを上げ、そのうち肉眼では追えない動きになっていく。
ルーカスは「やるなあ……」と呟き、自らも戦いたそうにうずうずしているようだ。
シェルトのうごきが鈍ってきたところでイーヴァルが挑発する。
「シェルト。日頃鍛錬してるんだろ? こっそりやってるの知ってるよ。手は抜くな!」
「それはこっちのセリフだ。学園に来てから全くと言っていいほど手を抜いているだろう? 私はお前に最高の武器を作ってやりたいんだ!」
剣が激しく音を立てる中、二人は怒鳴り合う。
「なんでだ。なんでなんだシェルト? 昔みたいに……」
「昔みたいに戻れるわけがなかろう!」
「僕は君とまた対等になりたい! 何のためにここへ来たんだ?」
「私は私でやりたい事があるんだ!」
「何をしたいの?」
「……」
「そうやって、自分の事はだんまり。ユーリアにも愛想尽かされるぞ!」
イーヴァルの剣の動きが鈍ったところをシェルトが叩き込めば、剣が弾かれ、イーヴァルの首に剣が突きつけられた。
「勝者シェルト!」
ルーカスの声が響いた。
イーヴァルもシェルトも唖然としている。シェルトは自分の握っている剣を見つめ、イーヴァルはシェルトを見つめていた。
「やりたい事って何?」
「お前に言う必要はない……。ユーリア終わりだ。結界を解け」
ユーリアはシェルトに言われるまま結界を解いた。
シェルトはイーヴァルを残し去る。イーヴァルはその後ろ姿をただ見つめるだけであった。
「ルーカス先生行ってくる! イーヴァル先輩をお願い!」
ユーリアはシェルトの魔力を追い、学園の屋上へと向かった。
*
「シェルト先輩? 大丈夫?」
学園の屋上で、空を眺めながら座っているのはシェルトだ。
「ああ、怪我はない。」
ユーリアはちょこんとシェルトの隣に座り、シェルトを見た。
「何だ?」
「シェルト先輩、強いんだね……そして、イーヴァル先輩も本気だった。」
シェルトは空を眺めたまま頷いた。
「イーヴァルと本気でやり合ったのはいつぶりだろうか……。子供の頃以来だからな……」
ユーリアは「そっかあ」といい、空を一緒に眺める。
「ユーリア巻き込んで悪かった。イーヴァルがあんな風にお前を巻き込んでまで私と戦おうとしたことがなんだか腹立たしくてな……。だが今は違う」
「うん」
「イーヴァルには私がずっと柵に囲われているように思えていたのだな……」
シェルトの手がすっとユーリアの手に伸び、掴まれる。
ユーリアがシェルトを見れば、シェルトは微笑みながらこちらを見ていた。
「ありがとう、ユーリアどうやら解決の糸口が見つかった」
「なんか、私来なくても良かったね……。シェルト先輩は自分で解決しちゃった……」
シェルトはクスッと笑う。
「お前がいなければずっと我々はこのままだったろう。本当に感謝してる」
シェルトはユーリアの肩に手をかけると、頬にキスをした。
「正直イーヴァルばかりユーリアに触れるのは、嫌気がさしていたところだ。じゃあイーヴァルのところへ行くぞ!」
ユーリアは触れられた頬を触り、ほえっというと顔を真っ赤にさせる。
「何だ? イーヴァルの言ってた事は本当だぞ。……ほら早く行くぞ!」
ユーリアは顔を赤らめたまま差し伸べられた手を取り、イーヴァルのいる保健室へと向かったのである。
*
保健室に入るとヴィオラに治療されているイーヴァルがいた。
「あら、ユーリア。ルーカスから面白いこと聞いたから保健室で待機してたんだけど……どうして二人とも顔が赤いのかしら……」
シェルトは首を横に振ると口を開く。
「イーヴァル話がある。」
「何?キスしちゃった?」
イーヴァルが茶化せば、シェルトとユーリアは視線を泳がす。
そこにいる面々はニヤニヤと二人を見ている。
「茶化すな! イーヴァル!」
シェルトに怒られたイーヴァルは頷き、ユーリアはヴィオラとルーカスと共に部屋を立ち去る。
*
ユーリアが二人と空き教室で世間話をしていると二人が部屋に戻ってきた。
どうやら仲直りしたらしい。
「ユーリアちゃん迷惑かけたね……でも元通り蟠りが一つになったよ!」
「蟠り?」
そう言うとイーヴァルはユーリアの手を握る。
「さあ、何でしょうねー?」
そして、手の甲にキスをし、シェルトに引き離されている。いつまでふざけているのかと首を傾げていれば、ヴィオラに言われる。
「ここまで鈍感だとしょうがないわね……」
「難攻不落というわけだ」
ルーカスまで訳の分からない事を言い始め、ユーリアはイーヴァルを見た。
「とりあえず、僕が学園で本気で戦えるのはユーリアちゃんとシェルトぐらいだから、魔術具のインスピレーションが湧くまでは適当に手合わせしてもらえると嬉しいな!」
「俺がいるだろう?」
イーヴァルはルーカスに捕まり頭をグリグリされている。
「体術だけで言えば、お前よりは俺は上なはずだが?」
「痛いよ。ルーカス先生。先生は自分が本気になっちゃうから嫌なんだよー!」
「嫌とは何だ嫌とは……」
蟠りはあるようだが、イーヴァルは前よりかは真剣に授業を受けるようになり、シェルトはイーヴァルのための武器を作れるようになった。




