体術指南と魔術指南
「今日からうちのチームに入った1年生のユーリアちゃんだよ。よろしくね!」
文化祭も終わり平穏な日常生活に戻ると、ある日イーヴァルに呼び出された。
「ユーリアお願い。ね、この通りだからさ……」
帰りのホームルームの後訪ねてきたイーヴァルにお願いがあると泣きつかれ、空き教室に二人きりである。
「ねえ、どうしてもだめ?」
「私は目立つのは絶対に嫌です。それに時間が惜しいです。今は放課後は金を稼ぎたいのです!」
ユーリアはイーヴァルに背を向け教室を後にしようとするが、肩を掴まれる。
「なんだか、シェルトも煮詰まってるみたいだし、とりあえず顔出すだけでも……」
そう言われて訓練場に顔を出してみれば、人前で堂々宣言だ。
見渡せば、ガストンとシェルト以外は知らない。
見知らぬ女性が3人と男子が1人いる。
ユーリアはイーヴァルを睨みつける。イーヴァルはめげずに笑顔でシェルトの元へと行く。
何か耳打ちすれば、シェルトはため息をついてユーリアの元へとやってきた。
「今回の冬のチーム対抗戦だけが我々の出られる最後なんだ。来年からは生徒会の中枢を担うようになる。そうしたらもう出られない」
ユーリアは冬に行われるチーム対抗戦のメンバーとして呼ばれたのだ。
*
「なんなんだよ。そのひょろっとした奴!」
気の強そうな男子が、ユーリアの前へ出てくる。
「こんな奴戦える訳ないだろ?」
「そう思うなら手合わせしてみたら?」
ユーリアはガストンに木剣を渡され、男子は自分の剣を構える。
「なんだよ。自分の剣も持ってないのか? 体術コースの人間じゃないじゃないか! 魔力持ちじゃない奴は怪我する前に帰れ!」
「クイスマ、先入観は捨てなさい。それでは勝てないぞ!」
シェルトに怒られてクイスマは大剣を構えた。
ユーリアは非常に気が進まないので、帰ろうとする。
「とりあえず、帰る」
木剣をガストンに返し、背中を向けたところにクイスマは大剣を振りかぶってくる。
「お前、一年なんだろ! その目ムカつく!」
ユーリアの中で何かが切れる。ユーリアは大剣を手でいなし、その勢いを利用して大剣に蹴りを加え地面に沈める。
「武器持ってない相手に襲いかかるとか馬鹿? 身の丈に合わない武器を使ってるし、初歩的な事から学び直したらどう?」
「何を……」
大剣は深く刺さり、クイスマには持ち上げられない。
「大剣のいいところはリーチが長く威力が大きいところ、デメリットは重さと遅さ」
ユーリアはクイスマを睨みつけながら背後に回り、膝カックンをすると手が剣から離れる。
「なっ!」
「デメリットをカバーできないならこれを持つ資格はないわ」
ユーリアは軽々と大剣を持ち上げ、一振り横に薙ぐとクイスマの喉に突きつける。
クイスマはワナワナと震えだし、ガストンとイーヴァルは大笑いをしている。
「だから、何度も言っただろう? イーヴァルやガストンは手加減してやりすぎなんだ……。だから気づけない。」
シェルトは頭を抱え、他のメンバーはユーリアに興味深々だ。
「すっごーい、クイスマは弱いけど、あなた強そうね!」
「さすがは、イーヴァルがスカウトしてきただけあるね」
「よろしくー! 私達は魔術師よ!」
4年のイゾルテ、マヌエラ、ゾフィーの3人だ。
「よろしく。シェルト先輩サポートする。錬金術」
ユーリアの言葉にシェルトとイーヴァル以外は驚く。
「あら、戦わないの? もったいないじゃない。」
「ほらね、ユーリアちゃんガンガン戦っちゃいなよ!」
イーヴァル達に何を言われても出る気はない。目立ちたくないのだ。
「まあ、いんじゃねえか? クイスマを制御出来そうだし……」
「クイスマ言うこときかない?」
「ああ、こいつは自分より魔力や体術の腕があるものしか話を聞かないらしい。だが、そこの2人は甘やかすばかりで……こちらのサポートする身にもなってもらいたい」
ユーリアは益々クイスマの評価が下がる。
「じゃあ、魔力も使ってない人間に負けるなんてプライドが許さないでしょうね……クス」
クイスマはユーリアの言葉に唖然としている。
ユーリアはイーヴァルとガストンに魔力を使っていたか確認すると否定してくれた。
「そんなはずは……」
「ていうか、1年に負ける時点で恥ずかしいんじゃない?」
笑いながら女性陣に言われると、クイスマは「うおー」と叫ぶとどこかへ消えてしまった。
「はあ、イーヴァルを尊敬しすぎて押しが強いから受け入れてみたものの。イーヴァル見込みはあるんだな?」
「そのために、ユーリアちゃん連れてきたんじゃない。」
イーヴァルはニコニコと微笑みかけてくるが、どうやらクイスマ要員としての要素が1番強そうだ。
「まあ、せっかく来たんだし僕とも手合わせしてよー!」
ユーリアはため息をつきながら、イーヴァルと手合わせしていく。この前も思ったが、イーヴァルが本気を出すことはなかった。
かわりにガストンは真正面からぶつかってくる。
次回の練習の機会には魔術師達の練習風景を見る事になり、講師役となることが決まった。
*
「じゃあ、適当に魔法を打ってみてください」
「いくわよー!」
何故かいきなり3人合わせて魔法を当てられた。
ユーリアはため息をつくとそれぞれ相殺させ、火魔法は制御を奪い魔法を返した。
先輩達は防御魔法を張りそれを防いで見せた。
「何よ。今の……私の魔法の制御を奪ったの?」
「んー。母が普通にやってた。けど、普通じゃない……。それより連携いい。魔法の練度足りない。防御魔法反応が鈍い。防御要。呼吸のように行う」
「練度に呼吸ってイーヴァルどんな強者連れてきてるのよ……」
先輩達の嘆きに気付いたイーヴァルは、ニコニコと笑うだけであった。
ユーリアは例えばで炎の魔法を指先から出す。
ライターの火だ。
「この魔力量で大きな火の玉作る。」
そしてユーリアはその火の玉を的目掛けて弾いて見せれば、ドンと音をたてて的を破壊する。
「練度を高めれば、少ない魔力量でも大きさを変えて発動できる。」
ユーリアは「逆に」といい指先から火の塊を出しそれを小さな火の玉にして的にぶつける。
ドゴンと大きな音を立てて的を大破させた。周囲の防御壁が干渉して波打つ。
周囲は唖然としてその様子を見ていた。
「こんな小さな火の玉でさえ、魔力を濃縮させれば強力な力となる。」
ニヤッと黒い笑みを浮かべ、先輩達には魔法のイメージ方法を教えていく。
クイスマはその様子を見て、益々ユーリアに対し竦み上がっているようだ。
「次は何の指導?」
「とりあえず、体術コースの面々も見てもらおうかな……」
イーヴァルの声に体術コースの者はドキッとしていた。




