氷の国で魔獣退治?!生徒会の演劇終了
一旦幕が下されナレーションが聞こえる。
「2人は玉座の間から去り、魔獣を倒すために立ち上がったのです」
次に幕が上がった時には玉座がなくなり、生徒会長のお供をしている女性が1本の剣と弓を差し出す。
「イーヴァル、シェルトよ。こちらを持って行きなさい」
「魔導士ルミドラ様我々にそれを授けて下さるのですか?」
「太陽からもたらされたという全てを焼き尽くすと言われる太陽の剣と、月よりもたらされた全てを射抜く月の弓矢を……」
魔道士は俯き答える。
「此度の諍いは全て私の力が弱まってしまった事が原因です。あなた達に全てを委ねる事は心苦しいのですが——ゴホ、ゴホ……」
「ルミドラ様、床に着いてください」
「我々が悪しき魔獣を必ずや仕留めましょう」
イーヴァルが剣をシェルトが弓矢を授かる。
「それから、これを……」
イーヴァルは赤い宝石のついたペンダントを首にかけられる。
「これは?」
「この国に伝わる護りのペンダントです。必ずやあなた達を守ってくれるでしょう。どうかご無事で……」
「こうして2人は城を出て魔獣の住う山の頂上までたどり着きました」
幕が下がりナレーションが流れると舞台は一変しており、全てが氷で覆われた洞穴のようなところに場面が変わっていた。
辺りが暗くなり始めているので、魔術具で照らし出された情景は神秘的で美しいものとなった。
「これは姫ではないではないか! 我を愚弄したなドミニク王め!」
「魔獣プルム、我々がお前の息の根を止める!」
「姫をお前の伴侶とするわけがないだろう!」
魔獣は怒り出し、吹雪を吹かせる。
それを払うように太陽の剣を薙げば、辺りの雪が一瞬にして溶けた。
「何、太陽の剣か……。魔道士め……」
苦い顔をした魔獣の背後から1人の男性が顔を覗かせた。
「プルム様、プルム様のお手を煩わせるような相手ではございません。眷属である私がお相手しましょう。」
眷属は右腕と左腕を刀に変え、不適に笑う。
騎士達に襲いかかり、剣を持った騎士が押され始めると、胸のペンダントから1匹の黒猫の姿をした目の赤い女が炎を身に纏い、眷属と戦い始める。
「何? 炎の眷属だと……」
眷属が呟けば、騎士達からも声が漏れる。
「炎の眷属? お前は何者だ?」
黒猫は眷属を火の渦で閉じ込めると、騎士達を振り返り、無表情で告げる。
「我はこの地を護る使命を帯びた者。害悪となる物を排除する。」
炎の渦から無数の金属の塊が出てきて、それを全て黒猫が炎で払った。
「ゆーたーん」
「あいしてるー」
「俺も君の炎で焦がしてー!」
舞台でないところから声援が起きると黒猫は少し苦い顔になり言葉を続ける。
「月の弓を持つ者よ。我が合図したら射抜け!」
黒猫は炎の渦を解き放つと、中から眷属が出てきて打ち合いをし始めた。
「眷属よ、早くくたばれ……」
黒猫がそう呟けば、眷属は一瞬動きを止める。
「久しぶりにお会いしたかと思えば、そのような扱いですか?」
黒猫の腕を後ろ手で拘束し、顎のラインを指で撫でる。
「氷の眷属と馴れ合う筋合いはない」
黒猫は脚をかけ、眷属の背後に回ると後ろから歯がいじめにする。
「射抜けー!」
弓矢の騎士は弓を引き、黒猫ごと矢を射抜いた。
「なんと……」
「その矢はなんでも射抜く……」
黒猫は身から炎を出し辺りを埋め尽くす。
「あなたとお供してあの世に行けるとは幸福……」
眷属は最後の力を振り絞ると、剣士に向かい一本の金属の塊りを放つ。
金属の塊がい抜いたのはペンダントにある宝石だ。
「何!?」
剣士は驚きの表情で黒猫を見れば、黒猫が笑った。
途端に炎の勢いが増し、2人の魔獣の姿が見えなくなった。
そこに残ったのは白い宝石だけだった。
「護りの宝石が……」
「呆けている場合ではない。プルムがやってくる」
氷の剣を持ったプルムが剣士に襲いかかる。
「ひゃー。炎の眷属が散った今お前らには勝ち目などないわ。ワッハッハー!」
月の弓を射抜けば避けられ、距離を置かれる、
「我が剣は全てを焼き尽くす太陽の剣なり」
「我が弓矢は全てを射抜く月の弓矢なり」
剣からは炎が現れ弓矢がそれを射抜けば、炎を纏った弓矢がプルムを襲う。
プルムは断末魔の叫びを上げ、青い宝石を残し消えた。
「こうして、魔獣とその眷属は倒され、騎士達は城へと戻った」
幕が下がり最初の舞台へと戻る。
そこには王と姫、魔道士がいた。
「騎士達よ。此度の褒美を授けよう。ただ姫は1人だ。譲り合うかそれとも実力を示し奪い合うか選べ」
炎の剣士は跪き、王へと言った。
「私は姫は望みませんよ。最初からそのつもりでした……」
「イーヴァル……」
「2人が惹かれあっている事は分かっていましたから……」
姫は弓矢の騎士に駆け寄り、2人は手を取り合う。
「礼を言うぞ。イーヴァル」
「ありがとうございます」
「そう言う事か……。ではイーヴァルには太陽の剣と騎士団の団長の地位を授けよう」
「こうして、惹かれあった2人が結ばれ、氷の国は春を迎えるのでした」
ここでハッピーエンドで終わるかと思いきや、イーヴァルが突如として口を開く。
「ドミニク王よ。騎士団の団長の地位は返上いたします。私にこの護りのペンダントをお授けください」
ドミニクだけでなく舞台に上がる者全てが目を見開く。イーヴァルは不敵に笑う。
「私はどうやら炎の眷属を人目見て心を寄せてしまったようです」
シェルトは頭を抱え、ベティーナはクスクスと笑い始めた。
「シェルトばっかりハッピーエンドっていうのは気にくわないよ。ねえ、魔道士様祈れば僕の願いも叶うかな?」
イーヴァルは先ほど崩れた宝石を手に魔道士に尋ねた。魔道士はため息をつくと、答える。
「炎の眷属は実体をこの世に持たない。死とは無縁だと思われる。其方の願いが聞き及べばこの地に再び訪れるだろう」
イーヴァルはニヤニヤと舞台袖を見ると、宝石を天に掲げた。
「我が愛しの炎の眷属よ。我の願いを聞きこの地に再度訪れよ……。炎の眷属ユータンよ!」
すると、イーヴァルが持っていた宝石の残骸から炎が出て黒猫の形を象っていく。
「我が名を呼ぶな……」
黒猫は無表情のまま静かに怒りつつ、そんな様子を気にせずにイーヴァルは黒猫を抱き上げた。
「僕は君に一目惚れしてしまったようだ。私の伴侶となってくれないか?」
「己が望むものは分からぬが、この地に呼んだ者のそばに仕える事は我が目的」
「そっか、じゃあ一緒になろうねー!」
イーヴァルは満面の笑みで黒猫の頬に口づけした。
「なっ……」
黒猫から驚きの声が出たところでアナウンスと共に幕が下りる。
「2人の太陽と月に選ばれし騎士達は、それからも国と伴侶を守り抜きました。氷の国に雪解けを……」
舞台の中から花火が上がりエンディングを迎えた。
観客席からは拍手と黄色い声が上がっている。
少しの休憩を挟み、次はランキング発表となる。
*
その頃の生徒会の控え室はというと……。
「イーヴァル先輩あれはなんなんですか! アナウンスするこっちの身にもなってくださいよ……」
怒ってるのはアナウンスをしていた生徒会の書記ランベルトだ。
「だって、プルム先輩も勝手に脚色してるしいいかなって思って……。だいたいユーリアに頼んで本物の魔獣眷属にするとか反則でしょ……」
「あれは肝を冷やしたぞ……。空中を自由に動いたり、金属を飛ばしてきたり……やられるかと思った」
イーヴァルとシェルトはテディの悪役ぶりに驚いていたようだ。
「申し訳ありません。人の演劇に参加する機会などありませんでしたので……」
「そこは正直に悪役が楽しかったっていいなよ……」
ユーリアに突っ込まれてテディは肩を竦めた。
「やりすぎ注意だよ。テディ。流石に金属の塊は打ち合わせなしはきついよ……あ、イーヴァル先輩大丈夫?怪我はない?」
ユーリアはイーヴァルの額に額をくっつける。
「ユーリアちゃん。あんまり積極的になられると困っちゃうな……」
何故が恥ずかしそうにするイーヴァルの姿に少し離れて首を傾げると、テディが説明してくれる。
「今の格好で男に近づいてはなりませんよ。思春期の男は狼です」
イーヴァルは頭をかきながら「その説明はひどいなー」とテディを見ている。
「それにしても、ランベルトとユーリアのアドリブのお陰で最後は締まっただろう。ありがとう」
ドミニクは頭を下げて、礼を言う。
「私も頑張ったのですが、ドミニク……」
ドミニクを見つめているのはルミドラだ。
ドミニクはルミドラの頭を撫でてやると、ルミドラは嬉しそうに表情を綻ばせた。
なんとなく2人の関係性が分かってしまった。
「プルム先輩のおかげで僕は楽しい思いできたからありがとう!」
「お、そうか? 私もなんだか自分が魔法を使えるような気分になれた。ユーリア夢を叶えてくれてありがとう!」
イーヴァルがお礼を言えば、プルムがユーリアにお礼をいう。
プルムから魔法を発したように発動させていたのだ。
「いえ、お安い御用です」
「後は残すはランキング発表だ。最後の仕上げを打ち上げるまでは着替えて自席に戻ればいい」
ユーリアはお辞儀をしてその場を後にした。




