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文化祭2日目ナンパと行列

 文化祭2日目。


 今日からは交代で半日ずつ休む。

 ユーリアは3日目の午前が休みになっている。


 3日目は庭園でコースの発表会があるため、人があまり入らないそうなのだ。

 なので、要となるユーリアは午前中バーテンダーの服を着ながら遊び歩く事になっている。



 今日の朝からの人の入りも上々だ。


 ゲームを終えた面々は昨日よりも型のいい男達が多い。その中に知っている人がいた。



「僕、コーヒーと肉盛りコッペパンで野菜は抜き」



 ユーリアの正体に気付いていないのか、話しかけられずに通常通り、料理を提供する。



「それで、ユーリアさん。今日は休憩時間いつ? 今日は男装なのかな?」


「アベルさん。今日はお昼休憩しかなくて、すみません。」



 イルムヒルムでキメラと戦闘した時にお世話になったヴァルヴィストの騎士団の団員だ。



「そっかー、今日は非番だったから遊びに来てたんだけど……じゃあさ。お昼休憩の時間教えてよ!」


「お昼はお友達と食べる予定なんですけど……」



 ユーリアが申し訳なさそうに、断るとアベルは一緒に来ていた面々に肩を組まれた。



「アベルふられたなー。嬢ちゃんよ。アベルは置いといてなかなかの腕って聞いたぜー。今度ヴァルヴィストの城の訓練場に来いよー。手合わせ願いたいぜ!」



 ユーリアは目を瞬かせた。他言無用と言ったはずなのに、身内に話してしまっていたようだ。


 罰が悪そうに頭を掻くアベルを見つめると、アベルはニコッと笑う。



「まあ、一回手合わせしたいのは武芸者の性って事で……俺が休みの日に迎えに来るから友達も連れてきてみな!」



 それだけ告げると、店を出ようとした一行の中からアベルが戻ってきてユーリアの腕を引っ張り耳打ちする。



「昨日の猫とダンス、君なんだろ? 両方とも可愛かったよ」



 ユーリアがほえっと変な声を出せば満足顔でアベルは仲間のところへ向かい手を振ってくる。


 また、仲間達に肩を組まれ頭をガシガシ撫でられている。


 ユーリアはしばし放心状態であれば、ラウラに話かられた。




「ナンパだね……男にもモテるね……」


「お前ら手が止まってるんだよ! 手を動かせー!」



 カイに怒られラウラとユーリアは作業に戻る。



「自分がモテないからってかりかりしないの……。ユーリアは女にもモテモテだからなー。ラウラとも仲良しだし……」



 リュリュが手を動かしながら話をするとカイはさらに怒る。



「そんなに無駄話してるなら接客手伝ってこい! ユーリアも戻れ!」



 二人は顔を見合わせてクスリと笑い、リュリュは並び始めた列の人にカフェのメニュー表を配り、購入形式を説明し、ユーリアはオーダーをとって飲み物を作り始めた。



 今日のお昼は時間がないので、自分たちの出し物から少しもらってきて、ちょっとした休憩スペースで食べる。


 ラウラとアネットと一緒だ。

 ティナはお昼時間がずれ込んでしまったのだ。


 ラウラは今日ナンパにあった事をアネットに話す。

 


「まあ、ユーリアは女性だけでなく、男性からも……。でも都市の騎士団と手合わせできるのは羨ましいですわ。」



 アネットが乙女の表情で指を組み、ユーリアを見つめると、ユーリアはため息をつき、アネットに伝えた。



「友達も大丈夫。本当に誘われたら行く?」



 アネットは二つ返事でうなずいた。

 ラウラはその反応を見て笑う。



「アネットちゃんは本当に武芸一筋なんだね……。そだ、ユーリアずっと気になっていたんだけど、あの帰り際に引っ張られて何か話しかけられてたよね?」



 ユーリアは頷くと顔を少し赤らめた。



「アピールタイム、正体見破られてた」


「それだけー?」



 頬を赤らめた様子が気になったのか、ラウラはユーリアの顔を覗き込む。


 ユーリアは慌てて手を前に出して、何もないと否定した。


 それでもなお怪しんでいるのか、ずっと見ている。


 アネットは、正体を見破ったという事に感心しているようで、流石一流の騎士だわと言っている。




「おい、お前ら忙しくなってきた。戻ってこい!」



 カイが休憩スペースに顔を出してきたので、急いで戻る。



「言えないよ。かわいいって耳打ちされたなんて……」



 ユーリアはポツリと呟くが誰の耳にも入っていなかった。





*


 カフェエリアに戻れば、今日は女性客も多く何を入れるか迷う人が多く、注文までに時間がかかり、混んできたのが分かった。


 ユーリアはそのまま客側に立ち、何を選べばいいかを決めるアドバイスをし始める。


 だいたいの子は食事を友達とシェアするよう促し、事なきを得た。


 ひと段落着いたところで店員スペースに戻った。



「なんで、こんなに急に女子が来るんだ……」



 カイが頭を抱えている。



「人が入る分にはいいけど、メニューに迷う子が増えて大変だったね……。ユーリアありがとう。僕たちだけでは裁ききれなかった。」



 女子の対応は大変だったであろう。デザートを目の前にすると、目の色が変わり、あれもいいこれもいいとどうしても優柔不断になってしまう気持ちがユーリアには分かったからだ。



「ユーリア大変よ! 行列ができ始めたわ!」



 ユーリアが教室のカフェの出口から顔を覗かせるとそこに並んでいるのは、女子達だ。



「きゃー、あの人じゃない。イーヴァル先輩達の教室で踊ってたっていうイケメン店員!」


「あの握手して下さーい。」


「私もー。」



 列に並んでいたはずの女性達が店の出口付近に群がってくる。


 カフェから出たい人たちも出れずに困惑し始めた。

 ティナが間に入って人の群れを押し返そうとするが、敵わない。


 ユーリアはため息をつき、魔法を使う。



「お嬢さま方天井をご覧ください。」



 ユーリアが指パッチンをすれば、教室の面している廊下が暗闇に包まれる。


 さらには星のように細かい光がキラキラとして、小さなオーロラが光っている。



「まあ。」



 女性達はうっとりと天井を見上げ始めた。


 そのままオーロラは消えて、光が教室の入り口に向けて天井に並び始める。



「お嬢さま、私に会いに来てくださったのはありがたいですが、どうかこの教室の出し物もお楽しみ下さい。

 暗闇の中、冒険されたお嬢様方を幻想的な世界で癒して差し上げるのが、私の心からの望みです。

 ここではなく、どうぞ店内でお話しいたしましょう?」



 群がっていたお客さんは頷くと、先ほど並んでいたように列を作り始めた。

 ガヤガヤと何か話しているようだ。


 ユーリアは魔法を解くと店内に戻る。


 後は店内に残された人たちを外へ誘導して、混乱は去った。



「この女子の群れって昨日の件だったのか……」



 ティナと少し打ち合わせに休憩スペースに入る。



「まさか、あれが関係してくるとは思わなかったわ。さっき並んでる人に聞いてみたら、イーヴァル先輩とかのカフェ混みすぎてなかなか入れないらしいの。そんな中、次点でイケメンと噂が高いうちのクラスに来たらしいわ」


「あそこは、一組ずつ持てなすから……。回転率はうちの方がいいけど、私目的で来られるとなると困るなー」



 それこそ、捕まるとユーリア目的でない人もいるのだ。流れが悪くなる。



「しょうがない。あの女子達が帰るまではユーリアが案内人役よ。その分案内人役にカフェ手伝わせる」



 ユーリアが頷くと案内人と交代する。



「ユーリア、あの魔法また使えないの?」


「んー、この教室の前をただ通る人に申し訳ないよ。さっきは仕方ないとして先生に許可取らなくちゃ」



 ティナは頷くと、先生のところに行き、許可をもぎ取ってきた。


 看板を魔法を展開する廊下の前に置き、注意書きも書いておく。


 ユーリアは今度は魔法陣を展開して、廊下を暗闇にする。

 先程のは無理矢理簡易結界を貼っただけなので、持続させるなら不十分なのだ。





*


 ユーリアが案内人役をやっていると、必然的に前の人がゲームを終えるまでの話相手になれる。



「本日はお嬢様方をこちらでおもてなしいたします。ゲームが始まるまでではございますが、よろしくお願いします。」



 握手をしたり話をしたりして、待ち時間を楽しませてあげた。女子達の中に紛れて腕試しに来た男子達も、天井に浮かせてある魔法に興味があるらしくいろいろ質問された。


 主に女子にモテるコツがメインだ。



「いつからここは悩み相談を聞く所になったんだ……」



 様子を見に来たと思われるルーカスに、頭をガシガシと掴まれる。



「お待ち頂いている間に少しでもお客様とお話ができればと思いまして……ルーカス先生もせっかくですから腕試しされてはいかがですか? それとも私と一緒に店員の服着られますか?」



 ユーリアはニヤニヤとしてランキング表をみた。

 今のトップは騎士団のアベル達だ。

 ルーカスは咳払いをすると、肩を組まれる。



「今はいい。文化祭の時間が終わってから二人で挑むか?」


「喜んで……」



 何故かきゃあきゃあ黄色い声が上がっている。

 そういえばティナから意外とルーカス先生がモテることは聞いていたので、羨ましがられているのだろうか?



「それにしても盛況だな……。猫娘の正体聞いてくる輩が多いぞ。ここに来てる男どもは意外と腕試しじゃなく猫娘目当てだったりしてな」



 図星の生徒が多いようであからさまにルーカスから顔を背けた。



「先生、そのような事はございませんよ。ここに集まられた皆様は向上心の強い冒険者の皆様です。そのような邪推なさらないで下さい」



 ユーリアが優しく微笑みながら話せばルーカスはムッとしたような顔をして、組んでいた腕を離す。



「本当はどうだか分からんぞ。男なんて単純だ」



 そういうとルーカスは、カフェの出口の方から教室の中に入っていった。

 教室の中から出てきた時には、いろいろ食べ物や飲み物を持ってきていた。



「ここの飯は美味いな。お前が作ってたら、もっと売れるだろ?」


「物によっては、シェイクもやってましたよ。」


「さすが、バーテンダー経験者だな。」



 二人の会話に女子達が入ってくる。



「え、バーテンやってたんですか? どこでやってるんですか?」



 ユーリアは笑顔で答える。



「申し訳ありません。ここの都市ではやった事がないのですよ。故郷にいる時に少しバイトをしていました。」


「えー、お兄さんの作った飲み物が飲みたい。」


「そうね。シェイクとかやってる姿みたいなー。」



 明らかに年上と思われる女子から言われるが、首を横にふる。



「あちらで注文をうけていると、お嬢様方のお話をゆっくり聞くことが今日は出来なそうですからね……。今日はこちらの担当で良かったです。」



 ユーリアがニコニコとすれば、女子達も喜んでキャッキャしている。

 ルーカスはムスッとすると、ユーリアの目の前に食べかけのクレープを差し出す。



「今は食べれませんよ。それより、今お嬢様方のご案内をしているところですから、視察が終わったならご自分のお仕事に戻られてはいかがですか?」



 ユーリアが断れば、ルーカスはクレープを口元にくっつけてくる。



「どうせ、学校行事だ。甘いの好きだろ? 一口やるぞ?」



 ユーリアは目の前に甘い物をチラつかせるルーカスを睨むと、パクッと一口食べる。


 またもや女子からきゃーという声が聞こえてきて、廊下がざわざわしている。



「お前は本当に食うのが雑だな。」



 口元についたクリームを指で拭われ、それをぺろっとすると、一段と大きい悲鳴が聞こえて、失神者が出る寸前だ。



「もう、私に構わないでください。お嬢様方あまりお話が出来なくて申し訳ありませんでした。冒険への準備が整いましたので、中へどうぞ。

 どうかご無事でお戻りください。お帰りをお待ちしております。」



 ルーカスをほっといて女子グループを中に入れ、次のグルーブにゲームのやり方を教える。



「なんだか、その格好でその説明やるとつまらんな……。騎士の服とか着たらいんじゃないのか?」


「そんなにすぐ用意できませんよ。ああ、アベルさんなら貸してくれるかな……。今日非番って言ってたし」


「アベルって騎士団のか? どういう知り合いだ。」



 ルーカスがユーリアを問い詰めてくる。


 女子達の中で三角関係勃発ですわという声が聞こえる。


 ユーリアはため息をつくと、夏休みに遠出した時にお世話になったんですと教えた。



「そうか……。俺の貸そうか? 体術の講師室にあるぞ」


「衣装のチェンジはティナに相談してきてください」



 ルーカスは再び中に入ると親指を立てどこかに消えた。

 戻ってきた時にはこの都市の騎士の服を手にしている。



「いいんですか?」


「仮装だ問題ない。俺がしばらく変わってやろう。きてこい」



 何故か案内をルーカスが買って出て控え室で着替える。若干ぶかぶかだったので、身体強化を使い筋肉を活性化させごまかし、ズボンの裾はブーツに押し込んだ。



「これで案内するわけ……」



 ユーリアがポツリとこぼしていると様子を見にきたティナに抱きつかれる。



「髪型も変えてイケメン風にしてー。お、いいね!」



 サラサラヘアだった髪をワックスでかきあげ前髪を右に大目に流し左は耳にかける。



「最高。ルーカス先生ナイスだわ。さ、言ってらっしゃい!」



 ティナに背中を押されるとまた案内役のところに行く。



「ルーカス先生どうですか? 浮いてませんか?」



 女子達がきゃーと言っているその反応を見れば最高であろう。



「ルーカス先生私の新しいキャラ作らないでくださいよ」



 その声に何故か並んでいる女子から否定的な言葉が出た。



「いいえ、店員姿もさる事ながら騎士の服を着て、ルーカス先生の隣に立つとより一層いいです」


「そう感じてくれてるならいいかなー」



 ユーリアは話しかけてくれた女の子の頭をポンポンと撫でる。


 頬を真っ赤にさせた女の子が、頬を押さえながら俯いてしまった。



「ごめんごめん。弟いる癖でつい……嫌だったかい?」


「いえ……至福の時間でした……」


「そっかーなら俺もよかった」



 ユーリアは女の子のそばから離れる際に再度頭を撫でると女の子はとても恥ずかしそうにする。



「で、ルーカス先生。これで何をさせたいんですか?」


「執事が冒険に案内するとか変だろ、冒険なら冒険者だが、騎士のほうがカッコいいじゃないか!」



 ルーカスの持論でユーリアの服装はきまったらしい。

 ユーリアは気を取り直して次の番の子たちを送り出す。



「それじゃあ、次は君たち。中には怖い魔獣がいるから気をつけてね。俺が見守ってるから安心して冒険してきて! はい、どうぞ」



 ユーリアは口調もしっかり変えて役になりきっている。先ほどからずっと並んでいる子達は騎士様も素敵と喜んでくれている。



「成功しただろ?」



 ユーリアは少し顔をムスッとさせるが、騎士がやる膝を合わせて握手すら動きをとりあえずした。



「じゃあ、頑張れよー!」



 ルーカスは一通りの流れを見たと自分の持ち場に帰っていった。


 ユーリアは一息つく事なく。どんどんと人を案内するのであった。





 2日目が終了すれば、足りなくなってきた食材の確保や明日の下ごしらえをして帰宅となる。



「ユーリアなんかいつもより体つき男っぽいよね」


「ん。身体強化で筋肉を活性化させたんだ。下手したら完璧に男に見えるかもよ……」


「あのおっきなおっぱ……」



 ユーリアはティナの口を塞ぎ、想像に任せるよと言った。

 本当は胸はそこまでいじっていない。腕や肩背中などの一部の筋肉だけだ。


 ルーカスの服を着こなすため骨格を男性に似せる努力した結果がこれだ。



「明日な午前中休憩かー楽しみ」


「私も楽しみ! 魔術コースの発表に参加する予定だからよろしくね!」


「うん。そのために無理言ってやすまとったんだから……」



 ルーカスから借りた服は一応文化祭中は借りて後日返すこととなった。


 明日のコース別の発表全ては見れないが楽しみである。

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