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確信と軟禁

「冗談ではないのですけれどもね。

 まあ、貴方の娘なら、この建物とは別のところにいますよ。

 従順ですから、傷つけるつもりはありません。

 あ、猪の子供は何匹かは、痛めつけられてる頃合いじゃないですか? 血の匂いを出す為にね」



 ラディムが黒い笑みを浮かべると、アモンもウルトも威嚇し始める。



「貴様、それでも魔獣か? 魔石がそんなに必要なのか?」


「貴殿たちはおかしい。同族である魔獣、人間すら魔石としか見ていないとは……。それ程までに世を混沌に満ち溢れさせたいのか?」



 ウルトの問いに、ラディムは頷く。



「世の中は混沌に溢れているではないですか?人間同士、魔獣同士争っているではないですか。

 絶対的な神さえいればこの世には安寧がもたらされるそうですよ……。

 あのお方はこの世に争いがある事を、嘆いてらっしゃる。

 その為には犠牲が出て仕方がないのです。

 本当にあの方の考えは愚かで面白い。その先に何があるのか私は楽しみにしているのです。

 絶対的支配者となるのか、あるいは世界に破滅を招くのか……。面白くないですか?

 私にはこの世がどうなろうと構いません。何も守る者もないですからね。

 ただ近くで結末が見たいだけです」



 ウルトもアモンも、狂気じみた答えに呆れている。



「お前は昔からそうだ。なんでも面白そうだと、手を出しては厄介な事をする。

 クラウディア様が居なくなって、非道の道へと行ったか……。

 だが他の者を巻き込むな……。破滅を望んでいない者が、たくさんこの世にはいるのだ。

 細々と仲間と生きていくだけでいいと言う者が、沢山いる」



 ラディムはウルトの檻に雷魔法を叩き込むと、ウルトは倒れ込む。



「うるさい子犬だ。そうだお前はクラウディア様のご遺体や魔石のありかを知っているのか?

 ユーリアの頭をいろいろ弄ったのだが、結局何も出てこない。

 もう少しで壊せそうなんだが、そろそろ精神も体も持ちそうにない。

 なあ、お前が知っていればユーリアは返してやってもいいぞ? まあ、どんな状態かは分からんがな?」



 ウルトはラディムを睨みつけ、必死に体を立て直す。子犬の姿から大きな姿へと、檻いっぱいに変化する。



「ユーリア様に手を挙げただと? 貴様万死に値する。彼女はクラウディア様の娘だ分かっておるのか?」



 ウルトは檻を破るべく、体を鋼にし体当たりを繰り返す。



「ご老体で無理をなさる。これは私が丹精込めて作った魔獣用の檻だ。抜け出せるわけがないだろう。

 それにしてもあなた方は、本当クラウディア様クラウディア様って、ユーリアの事は認めてないって事でしょう? なら要らないではないですか」



 ウルトはラディムの言葉に動きが止まる。

 確かに幼いとは言え、クラウディア様の娘としてしか見ていない。

 彼女単体の力など、何も考慮していなかった。



「図星ですね。まあ、クラウディア様の事を言わないなら、これからでも玩具にして差し上げましょう。

 どんな状態でここに連れてこられるか、楽しみにしてて下さいね。

 それともここで玩具にしますか。まあ、どちらでもいいですよね。

 お二人はここで大人しくしていて下さいね」



 ラディムは立ち上がり、扉を開けようとした。



「止めろ。あの嬢ちゃんはダメだ。

 俺の知ってることはお前も知ってるかも知れねぇが、あいつとずっと一緒にいたのは白虎だ。

 あいつなら何か知ってるかも知れねぇが、それが賢いお前にはすでに分かってるんじゃねぇか?

 俺ら末端の魔獣ではたどり着けないその先に答えがあるんだろう。

 命が欲しいなら関わるべきじゃねえ。

 殺生が嫌いだとはいうが、死ぬよりも辛い事になるぞ?」



 アモンはラディムを睨みつけ、ウルトは力なく付け加えた。



「クラウディア様であれば、確かに彼らが関係しているでしょう。あの魔力量は世界に影響する。

 関わりを持たない方がいい。

 我々もクラウディア様の最後のお姿を見れなかった事に嘆いたものだ。

 ご遺体すら見れなくて彼女の死を確信できなかった……。だが、彼女は間違いなく亡くなったのです。

 その証拠にユーリア様が、血の魔法を継承されていた」



 ラディムは二人の言葉を聞きながら、扉を開けた。



「有意義な情報でした。この都市での作戦が終わったら、解放しましょう」



 ラディムはその場を去ると、ユーリアを匿っている宿屋へと向かった。





 *


「まだ寝てらっしゃるのですか? 朝食は食べたようですが、寝過ぎですよ……」



 布団を引き離されそうになったユーリアは、布団をギュッと握る。



「あんたのせいで、具合が悪いのよ……。思い出そうと思うと、頭がガンガンするし体が動かないの」



 ラディムはユーリアの頭を撫でると、体を抱き上げる。



「さ、ユーリアさんお昼ご飯ですよ。具合悪いなら余計に栄養つけなくては……。食べさせてあげますか?」


「そのくらい大丈夫よ。しっかし魔力すら回らなくなるなんて、変な爆弾抱えてたんだ私……。

 そりゃ思い出そうともしたくなくなるよ……」



 ユーリアは、ラディムが用意してくれた昼食を、パクパク食べる。

 その様子に安堵したのか、ラディムも一緒に食べ始めた。



「ユーリアさん。もう思い出さなくてもいいですよ。ある方から情報もらってきました。

 だいたい検討が付いたので、これ以上無理する必要もないですよ?」


「え、あの苦労はなんだったのよー。てか、私も知りたいのに……。でも、気持ち悪いのはもう無理……」



 ユーリアの顔色は本当に悪い。ギリギリのところまで記憶を戻そうと、頑張っていたようだ。



「あなたは本当に純粋に育ったのですね……。私今敵ですよ?

 敵のために気分が悪くなりながら、思い出そうとしたり、一緒にご飯食べたりって、普通警戒しませんか?」



 ユーリアは首を傾げると考える。そして大きく頷いた。




「本当にそうだった。怪我させられてるし、記憶覗かれたし……。

 耳と尻尾を撫でさせてくれたから、悪い人認定が消えちゃった……」


「全く本当に中身は子供ですね……。外見で騙されますが……。

 いいですか。敵が言うのも何ですが、甘い言葉には裏があるんです。特に男とかについてっちゃダメですよ。

 あそこのカフェの特製パフェを奢るからとか、うちで猫飼ってるんだけど見に来ないとか、その手の話についてくと絶対後悔しますからね! いいですか?」


「はい」



 何故か敵であるラディムにまで、説教をされる。私の危機管理能力はダメらしい。



「後、一応言っておきますが、ここの結界は外からは私しか入れませんが、中からは誰でも出れますからね……。逃げたい時はいつでも逃げて下さい。

 ただ、昨日来ていた服が一応洗ったのですが、ボロボロなので、洋服を準備するにはお時間をいただきます。

 いかに怪しまれないで、女の服や下着を手に入れるかは考え中です。男物の服でいいなら、私の服をお貸ししますか?」


「つまり、下着をつけずにって事だよね……。スカスカで外出るのは嫌だな……」


「左様ですか……。面倒な……。あ、ちなみに私は逃げる時、手助けしませんからご自分の力で逃げて下さいね。

 最近はいろいろな町から魔力持ちの実力者が集まって暇してますからね……。

 せめて体調が戻ってから、逃げることをお勧めします」



 なんだか、ラディムは随分と素で話してくれているようだ。威圧感が全くないが、逃げる隙を与えない巧みさは感じられる。

 ユーリアは椅子から立ち上がって、文句を言う。



「今面倒って言ったでしょ! そもそもラディムが悪いんだからね。服ボロボロにして母さんの事思い出せとか……」



 ユーリアは口にして、少し母親の事を考えてしまったため、力が抜けてへたりと椅子に戻ってしまう。



「わかりました。私の魔法では心許ないですが、私のした話の一部を忘れてもらいましょう」



 ラディムはユーリアをベットに運ぶと、まぶたを手で覆う。

 ユーリアは眠りへと落ち、ユーリアの首元から血をもらうと魔法を使う。母親の魔石や遺体の関係の話部分を、すべて記憶から刈り取る。



「ふふ。あなたの魔力ですから、滅多な事がない限りはまたこの事を思い出す事はないでしょう。

 それにしても手がかかりますね。

 もう少し魔獣たちが暴れるまでお待ちくださいね。

 あなたを解放する時には最高のショーを楽しみにしていますよ」



 ラディムはまた部屋から居なくなり、今度は売買人の姿となり、街の闇へと身を染めていくのであった。

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