金髪美少女のユーリア
今日はティナとのショッピングという事で、テディに夏服の私服の中から見立ててもらい、髪型を整えて待ちあわせ場所の噴水広場へと向かった。
前回は制服で向かったので、今回は私服で挑戦である。ティナにはこちらの姿を見られてもいいと思ったのだ。男子は嫌だけど、女子なら問題ない。
ティナはまだ噴水広場に来ておらず、待っている間はドキドキである。
ちなみにテディはホルストのカフェのバイトがあるため別行動だった。
*
「ティナー」
ティナが辺りをキョロキョロ見渡していたので、手を振る。
ユーリアだと分かっていないのか、顔をよく見て記憶を探っている。仕方がないので、そばに行き、名乗った。
「ユーリア」
すると、目を丸くしてティナが驚く。
今日は茶髪のショートカットのウィッグを外し、色素の薄めな金髪のフワフワとしたロングヘアーに、シフォン素材の白のオフショルダーの服に薄いハイウェストの薄いピンク色の花柄スカートを着ている。
一目みただけでは分からない。身長も年の割には少し大きいので大人びて見える。
「ユーリア、変わったわね。声聞かなかったら全然わかんないお姉さんだよ」
「お父さんの好みの服」
テディの事をまだティナは知らないので、とりあえずお父さんと言っておく。
ティナは頭から足まで舐め回すように見る。
「ユーリア似合ってる。可愛い!」
ギュッと抱きついてきた。ツインテールがフワフワとしてフワフワワンピースを着たティナに言われると嬉しい。
「この前は制服。もう嫌。可愛い服も着たい。けど、あの髪型には似合わない。ウィッグとってきた」
とりあえず簡単に説明する。背伸びしてユーリアの髪を触るティナが首を傾げながら聞く。
「どうしていつもウィッグなの? こっちの方が断然可愛いのに」
「テディ……お父さんに目立つからやめる。言われた。本当は目の色も違う。こっち青。こっちピンク」
なるほど、と手を打って納得して「ただでさえモテてるのに大変だね」と言われる。
「って、ベネディクトとお隣さんって言ってたよね。もしかしてその姿見られた?」
遠い記憶だが、確かに見られていたような気がする。
「2ヶ月前。風呂上がり」
あちゃーっと、ティナが額に手を当てる。
「そりゃ、インパクト大だわ。ベネディクトの挙動不審ぶりと中身が変わらなきゃって意味がようやく分かったよ」
ティナはその後もブツブツと言って、一見男の子だから女の子ってギャップは……とか、他には見られていないかとか言われたが、誰かに会うときはこの格好はしていないので、会っていないと伝えた。
テディとのお出かけした時くらいだ。テディを思い出しティナに言う事も思い出した。
「お父さんにこの姿で外出る。ユーリアじゃなくユウって呼んでもらいなさいって言われた」
「過保護なお父さんなのね。いいよ。ユウ。なんか愛称みたいでいいね。もっと仲良くなれた気分」
快く快諾してくれたが、テディに言われたのだ。なるべく同一人物だとバレない方がいいと。
テディは本当に過保護だ。
女性である事を隠しているつもりは自分ではないが、テディの助言によって全て女らしさを失わされている気がする。
それから、噴水広場から移動し、初めにティナと可愛い服が売っているお店に行く。
今日は資金が潤っているので、可愛い洋服とボーイッシュの服を両方買うつもりなのだ。
「これ似合うー」と沢山の服をティナに選んでもらい、試着して何着かは購入した。ティナも何着か購入した。
「ねえ、これ色違いでどう?」
ティナが見つけたのはイヤリングだ。小花が入ったひし形のイヤリングと雫型のイヤリングだ。
もちろん即決で購入しすぐに耳につけた。雫型がティナでひし形は自分用だ。
「可愛いねーこれ。今回もお揃い買えてよかった」
ニコニコとティナが満面の笑みで手を繋ぎ、ユーリアを引っ張って行く。
前は行けなかったランジェリーの店にも入った。可愛いモノがいっぱいで購入だ。
サイズを見られて胸をジッと睨まれたが、「ティナはこれから成長期」としか言えなかった。
それからはティナに際どいモノばかり勧められ、そこまでの大人なモノは求めていない。嫌がらせではないかと思う。
他の店ではボーイッシュな服も適当に見繕い、買う物も買ったので、カフェへと入ろうとすると、見知った顔があった。
「あれー、ティナちゃん。いっぱい買い物したんだねー!」
女のコが数人取り巻きが付いてきている。イーヴァルとシェルトだ。
「ティナちゃんの私服可愛いね。あれお友達も可愛いねって……」
やっぱり魔力の隠蔽がバレているようだイーヴァルにはユーリアである事が一発でバレた。
イケメンの顔が固まってしまった。シェルトにはバレていないようだった。
「ティナがユーリア以外の者と一緒にいるのは珍しいな……」
シェルトにじろりと見られ、目が合うと目を背けられた。
何故だか距離を置かれている。この姿では初対面だからだろうか……少し耳が赤い気がするが。
「ユウと一緒に今日はお買い物に来てたんです。楽しくて買いすぎちゃいました。バイトその分頑張らなきゃ!」
ティナが止まってしまった会話を繋げようとする。こういう時のティナはすごい。
「ユウちゃんっていうんだね。こんな可愛い子と会えるなんて今日はラッキーだね。ね、シェルトー?」
「そういう軽い事を……」
ポンポンとあたまを撫でられる。取り巻きの女性からの視線が痛い気がするが、手を払いのける事もできない。
「2人はこれからまた買い物するのかなー? 良かったら近くのカフェでお茶でもどう?」
「え、いいんですか? これから行こうと思ってた所で……そのご予定は大丈夫なんですか?」
ティナは取り巻きの女性陣を見る。
イーヴァルはそれを気にせずに話す。おそらく、勝手に付いてきただけなのだろう。
「ん。2人でブラブラしてただけだから、特に予定はないんだ。ね、シェルトー。じゃ荷物持つから案内よろしくね。ほら、シェルトもティナちゃんの荷物持ってあげて」
イーヴァルはサラッとユーリアの荷物を持つと肩に手を置いてきた。
ティナの荷物をシェルトが持ちカフェへと向かう。
取り巻きの女性たちが怖いので後ろは振り向かないようにした。
スッとイーヴァルがユーリアに耳元で話しかけてくる。
「ユーリアちゃんだよね? 今日はどうしたの?」
しょうがないのでユーリアもイーヴァルの耳元で話す。
「そう。解禁日。いつもウィッグ」
「そっか、じゃあ、いつもが仮初めの姿でこっちが本当の姿って事だね」
イーヴァルがクスッと笑う。
「変?」
ユーリアにはめずらしくもじもじと少し照れたように聞く。イーヴァルは肩に乗せた手をパッと手を離す。
「全然変じゃないよ。とても綺麗」
最後に優しい声で告げる。ユーリアは顔を真っ赤にさせ、イーヴァルは視線を前へと移す。ティナへ話しかけているようだ。
「今日はお洋服買ったのかな? あそこのお洋服可愛いよね」
「分かりますか? あそこに置いてある服は他のお店にはないような物も置いてあって、心が弾むんですよ。このイヤリングもユウとお揃いで購入したんですよ」
ティナは振り返り後ろ向きで歩くと、耳についたイヤリングに触れた。
イーヴァルはユーリアの髪を耳にかけイヤリングを見ると微笑む。
「本当だ。2人とも似合ってるね。可愛らしいよ」
ティナがイーヴァルの行動に頰に手を当て顔を赤らめていると、後ろ向きで歩いていたのでバランスを崩す。
シェルトがそれを支える。
「前を見て歩かないと、危ないぞ」
一言、言うとさっと支えていた手を離した。ティナはお礼を言い、ツインテールの髪に手をやり顔を隠す。照れているのだろう。
「あのカフェかな?」
イーヴァルが指差す先には大衆向けのカフェがあった。
「はい、行きましょっ!」
と、足早にティナはカフェへ向かうのであった。
*
テーブル席に4人でかけ、デザートと飲み物を注文する。
「それにしてもティナちゃん。私服だと雰囲気が変わるね。女の子って見た目で印象変わっちゃうね。シェルト」
「俺にいちいち振るな」
シェルトは怒ったように口を尖らせ、そっぽを向く。
「だって、シェルトがいつにもなく怖い顔するし、声も出さないんだもん。いつも女の子いてもいない者として、僕に話しかけてくれるじゃない?」
「私がいつも女性といるような事を言うな、あれはお前に付いてきているだけだろう? それに、こうして一緒のテーブルについた事などないだろ」
自分の取り巻きもいる事に気がついていないのか、サラッと流してしまう。基本女の人は空気なのであろう。
「シェルト、シャイだからね」
またもや、シェルトはむすっとしてしまう。イーヴァルはそれを気にせず肩を竦め、ユーリアに一応の自己紹介をする。
「それにしてもユウちゃん。初めましてって言ってなかったね。よろしくね。僕はイーヴァルだよ。体術コースの4年生」
「私はシェルト。錬金コースの4年生だ。何か日用品で魔術具として必要な物があれば教えてくれ」
シェルトの自己紹介に何かサラッと、魔術具の話が出ている。優秀な人はいつでも情報収集をして、アイディアを練っているのかと思うと最近の事のようだ。
「最近、後輩が色々と発明してるらしくてね。先輩として色々作らなきゃって張り切っているのさ」
「後輩ってユーリアの事ですか?」
「ああ、あれは授業の度に何かしら新しい物を考えてくる。面倒くさがりだからと言っているが、なかなかに着眼点が生活に密着していた」
シェルトの情報収集はユーリアに敵対してであった。時間を短縮もしくは有効活用できるのであれば、魔術具に頼れるところは頼っておきたいのである。
「最近はシェルトも寄ってくる女の子に話しかけらようになったと思えば、そればっかりなんだよね。少しシェルトを取られた気分さ」
「ふん。取られたも何も最初からお前のものでも誰のものでもない」
「はいはい。分かってるけど、ユーリアちゃんの事ばっかりじゃ、僕嫉妬しちゃう」
わざとらしくイーヴァルは目を伏せ目を潤ませるような仕草をする。その仕草にティナが反応した。
「その気持ち分かります。ずっと私としか話さなかったユーリアが、他の子の話ばかりしていると私との時間が減ってる気がして……」
決してそんな事はないし、ティナは喜んで周りの子たちとワイワイ話しているのだと思っていたが、実際は違うらしい。
「分かってくれるー? 一緒にいるのはいるけど、何か違うんだよね。シェルトも無防備に女の子に話しかけるし、いつか彼女ができて僕のことなんて放置されるんじゃないかって思うよ」
「分かります、最近周りにユーリアを狙ってる人ばかりで、本人の自覚が薄いから、心配です」
「モテない」
ユーリアは即答した。周りの男子は友達という感じで男女間の好意があるように思えないのだ。
自分が同年代の子たちを子供すぎて、同世代の異性として見れていないのもあるのだが……。
「ユウは気づいてないだけだよー。鈍感なんだから。ユーリアはモテてるよ」
「ふふ。そうだね。ユウちゃんは好意に鈍感そうだね。シェルト大変だねー」
「な、何を急に言うんだ」
急に話を振られたシェルトは顔を赤らめ反論する。そんなに、魔術具の事で思い悩んでいたのだろうか。
「シェルト大変? ユーリアの事ばっかりなの?」
「大変なんかじゃない。ユーリアの事なんて別になんとも思ってないからな」
「くくっ。ティナちゃんこれは楽しいかもね」
「面白いことになりそうですね。ビックリ仰天でしょうね」
デザートと飲み物が運ばれてきたので皆で食べる。
その後もワイワイとどんな服を買ったのかとか他愛もない話をした。
「そうそう、夏の演習のチーム大丈夫かそうかい?多分難ありチームを組まされたんだよね。
力はあるけど、協調性ゼロのチーム」
「はい、最初はまとまりなかったんですけど、ユーリアが怒ってまとまったんですよ。珍しくいっぱいしゃべってました。単語じゃない言葉がいっぱいでしたよ」
「あのユーリアが普通の言葉を話したのか?」
シェルトやイーヴァルが驚いた顔をしている。そんなにも私が普通に話すことは珍しいのだろうか。
「一体どんなイメージ……あの話は怒る」
「片言って感じかな。あの話ってどんな話?」
ユーリアは自分のことを思い返し、よく考えればあまり話していない事に気がついた。手をポンと一人で打っている。
ティナはユーリアのその可愛い行動にクスリと話題ながら話を続けた。
「ステンが何回ユーリアがその考えはダメって言っても聞く耳を持たなかったんです。その、自分が全て倒すから陣形が崩れようと問題ない。と」
「あー、ステン君ね。それは確かにストレスが溜まりそうな話だ。流石のユーリアちゃんでも頭に来たか」
イーヴァルが頭を抱えた。何か思い当たる事があるのだろう。イーヴァルを超えるとステンが言っていたのだ。恐らく実技の授業の時にイーヴァルに絡んでいるのだろう。
「ユーリアを怒らせると怖いと思いました……」
「何かあったのか?」
シェルトは眉を寄せ、イーヴァルは興味深々という感じで目を輝かせている。
「いや、ただ怒るのでなく、ステンを上げて落として、簡単に言うと阿呆じゃないんだよね。皆の憧れの魔力持ちなら人のサポートや言う事分かるよね、当然できるよねって感じですかね……。あれからステンの扱い方が分かるようになりました」
「クククッ、ユーリアちゃんでもを怒らせちゃいけないね。」
別に面白い事ではないのに、シェルトもイーヴァルも吹き出す。私はただステンの自尊心を利用しただけだ。
ユーリアは気分転換にも席を立ちお手洗いに行った。
ユーリアが席をたった後、シェルトも席を立つ。
イーヴァルはティナに話しかける。
「ユーリアちゃん。怒ったのかなー。あまりに面白い話だったんだもん」
「大丈夫ですよ。ユーリアはこのくらいじゃ怒りません。相当理不尽じゃないとあの怒りは見れませんよ」
ティナはクスッと笑い、デザートを口に含む。
イーヴァルも微笑むとデザートを食べた。ユーリアよりシェルトが早く席に戻ってきた。
*
テーブルの横を知らない女生徒たちが通る。
「ねえ、あの子なんかヤバイ雰囲気じゃなかった? トイレの前で怖い男二人に声かけられてたけど……」
「知り合いって感じじゃなかったよね」
ティナとシェルトの顔に焦りが見え、席を立ち上がろうとするが、イーヴァルがそれをとめる。
「僕が様子を見てくるよ。腕なら自信があるからね」
「ああ、分かった。頼んだ」
「イーヴァル先輩よろしくお願いします」
イーヴァルは爽やかな笑顔を残し、速やかに席から立ち上がると、足早にトイレへと向かった。




