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マッチョエルフ英雄譚~千年間ひたすら筋トレをして究極のマッチョボディーになったエルフの伝説(サーガ)~  作者: よしぞう


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第10話 灼熱のスカルト砂漠

魔倒歴1013年 エルフ王国王都美しい森の都


 灼熱のスカルト砂漠。


 正式名称はスカルト砂漠なのだが、人々はよく灼熱砂漠と呼んでいる。


 この砂漠は大陸中央部を東西に広がっており、砂漠の北側にあるアイスノース山脈に並ぶ難所として有名だった。


 大陸において南北の貿易をするには、海路を使うか、この砂漠を踏破しなければならない。


 海路の方が安全で大量に物資を運べるのだが、内陸部の場合、港がある海岸部まで出るだけで一苦労である。


 さらに、高い船賃を払い船に乗っても、海賊や海の魔物に襲われる可能性もそれなりにある。


 というわけで、過酷と分かっていても、この砂漠を縦断するキャラバンはかなりあった。


 ラクダに荷物を積み、長い列を作って砂漠を移動していくわけだが、実は不毛な砂ばかりの地であっても、ところどころに休めるオアシスがある。


 さらに広大な砂漠ではあっても、その中央部にはマジネという名の山岳地帯があり、そこから湧き出した水が大河となって流れていた。


 その川沿いには緑があったのだ。


 砂漠を旅する人達は、ひとまずそのマジネ山脈から流れている川を目指して進んでいく。


 このオアシス地帯がなければ、この砂漠を踏破できる人間は今より遥かに少なくなっていたことだろう。


 50頭のラクダと、それを操る40人の人間からなる、かなり規模の大きいキャラバンは、大陸南部からガラス細工や香辛料など、高価な品々を運んでいた。


 そのため、40人の人間のうち半分は護衛の傭兵達だ。


「暑いな」


 キャラバンのリーダーである初老の男が、頭に巻いたターバンの隙間から雲一つない空を見上げ、恨めしげにそう言った。


 スカルト砂漠は一年を通してずっと暑いが、それでも今の時期は、北のアイスノース山脈から冷たい空気が流れ込んでくるため、砂嵐が起きやすい反面、少しは涼しいはずなのだ。


 しかし、今年はかなり異常だった。


 砂漠の暑さに慣れているはずのラクダですら、かなりバテ気味で、中継地点であるマジネ河で少し長めの休養をとらなければ、旅を続けられなくなるかもしれない。


 一応、キャラバンは北を目指しているため、進めば進むほど、少しは気温が下がるはずなのだが。





「今日中には、川沿いに到達する。そうすれば街もあるぞ」


 彼がそう言うと、ラクダよりも疲弊している人間達が弱々しく頷いた。


 砂漠では、夜は星の位置で進行方向は分かるが、微妙な距離感は分からない。


 それを測るのは経験と勘だけだ。


 キャラバンのリーダーは、過去に10回もこの砂漠を縦断していたので、なんとなくその勘が養われている。





 彼の経験から判断すれば、そろそろ中継地の河に着くはずなのだ。


 そして、それは間違っていなかった。


 昼を過ぎたころ、地面が固くなる。


 砂に覆われているが、その下に土の大地がある証拠だ。


 さらに前方に細長い緑色のラインが見えてきた。


「川だ!! 着いた、本当に着いたぞ」


 皆が喜ぶが、リーダーは「前進速度と隊形を維持しろ!!」と怒鳴った。


 実は、広大な砂漠のど真ん中より、この川沿いの方が盗賊に襲われやすいからだ。


 スカルト砂漠を旅するキャラバンは必ずこの河にぶつかり、ここで休養と補給をしてから河を渡る。


 そのため、盗賊達が待ち伏せをしていることが時々あった。


 ただし、それに備えて川沿いにある街や村には兵士の詰め所があるため、滅多に襲われることはなかったが。


 河に近付くに従って、ポツリポツリと草や木が生え始める。


「ん? なんか変だな?」


 それを見てキャラバンのリーダーが違和感を感じた。


「あ~、きつかったなぁ」


「ああ~、河に飛び込みたいぜ」


 仲間達が周囲を警戒しつつ、そう言い合っている。


「リーダー、どうしたんです?」


 怪訝そうな表情の彼に気付いた仲間の一人が、そう声をかけてきた。


「ん? ああっ、今の時期はもっと木や草が青々しているはずなんだが」


「えっ? そうなの?」


 そう言って、近くに生えていた木に目を向ける。


 確かに、何となく枯れかけているように感じられた。


 しかし、彼等のほとんどは、それを異変とは受け取らなかったようだ。


「まあ、これだけ暑ければ干からびもするだろ」


「そうかもしれないが……何となくな」


 その後、盗賊の襲撃を受けることもなく、川沿いにあった村に入っていった。





 村の周囲には畑や放牧地があり、それに加えて、キャラバン相手に物資の補給をする商店も兼ねた宿もあった。


 彼等にしてみれば、たまに来るキャラバンは貴重な収入源だ。


「何だって?!」


 村にある宿屋でキャラバンのリーダーが大声をあげる。


「いくら何でもぼったくり過ぎだろう?!」


「違う違う、本当に食料が足りないんだよ」


 宿屋では、旅人やキャラバンが宿泊するだけではなく、砂漠越えに必要な食料や消耗品の補充もしてくれる。


 その依頼を宿屋の主人にしたところ、普段の3倍以上の金額を請求されたのだ。


 それは補給物資だけではなく、宿泊代や食事代も同じだった。


「何かあったのか?」


 よく戦争が起こると、似たような現象が発生した。


 食料などが軍隊によって徴発や略奪されたり、畑や村そのものが焼かれたりするからだ。


 しかし、このような過酷な場所で大規模な戦争など起こるはずがない。


 人間同士が戦う前に、少しでも油断をすれば自然によって簡単に命を奪われるからだ。





「ちょっと、こっちに来てくれ」


 宿屋の主人がそう言うと、裏口から外へと出た。


 そこからはマジネ河が見える。


 キャラバンのリーダーも彼について行き、そして何かに気付いた。


「河が……」


 そう、砂漠を切り裂くように流れる大河の水面が、小川のように細くなっているのだ。


 とてもではないが、大河とは言えない。


「ご覧の通り、1月ほど前から急に川の水が減ってしまったんだ」


「何があったんだ?」


 そう言って河の流れに沿って上流に目を向けると、遥か彼方に標高の高いマジネ山脈の尾根の連なりが見えた。


「分からない。領主様が調査隊を派遣したとか言っていたけど、まだ原因は判明していないらしい」


 灼熱のスカルト砂漠に生きる人間達にとって、このマジネ山脈から流れる大河は、まさに生命線である。


 この河が干上がれば、川沿いの街や村は誰も住めなくなり、貴重な中継地が失われてしまうだろう。





 その時、宿屋の方が騒がしくなった。


「どうした、喧嘩か?」


 もしかしたら、キャラバンの仲間が村の人間と揉めているのかもしれない。


 そう思い、リーダーと宿屋の主人が慌てて戻っていく。


「た、大変だ、マジネ山脈に魔獣が棲みついたらしい!!」


 それは伝令の兵士だった。


 領主の命令で、早馬で各村や町に異常事態を知らせて回っているのだ。


「魔獣だって?!」


 集まってきた村人やキャラバンのメンバーが、それを聞いて驚く。


「ああ、領主様の調査隊がやられたらしい。生き残りが言うには、炎に包まれたバジリスクだったそうだ」


「炎……炎のワーム、マグマバジリスクか?!」


 そう言ったのは、キャラバンのリーダーだ。


 その魔獣は超有名で、千年前の魔王との戦いの時から、人間界に甚大な損害を与えていた。


「マグマバジリスク? あの昔話のか? あんなの吟遊詩人の作り話だろ」


 宿屋の主人が呆れながらそう言うが、


「いや、そうとも言い切れないぞ。あの暗黒竜ヴァルドラゴンがエルフの樹海を襲った話は聞いているだろ?」


「そう言えば……」


 一月ほど前に、エルフ王国にあるプラウナ大樹海に暗黒竜ヴァルドラゴンが襲来し、エルフの勇者によって討伐されたという噂話が大陸中に流れていた。


「あれって、本当なのか?」


「エルフは見栄っ張りだが、そんなすぐにバレる嘘はつかない」


「一月前……ちょうど川の水が減りだした頃と同じか……」


 暗黒竜、炎ワーム・マグマバジリスク、そして氷の巨人・グランシエールは、魔王の下僕としてかなり有名だった。


 しかし、実在するかどうか確かめようがなかったが。


 なにせ、千年前の魔王討伐以降、人間界に一度も姿を現していなかったからだ。


「もし、本当だったら、大変だぞ。伝説の魔獣なんて、どうやって倒すんだ?」


 彼等は、暗黒竜ヴァルドラゴンは、エルフの王子が率いる軍勢によって撃退されたと考えていた。


 まさか、ムキムキになった王子によって殴られまくって降参したとは夢にも思わない。





「皆、よく聞け!!」


 伝令の兵士が馬上から大声でそう言った。


 集まってきた人達が一斉に彼に注目する。


「領主様は、マグマバジリスク討伐のために戦える者を集めている。参加をすれば銀貨十枚、討伐に成功すれば、貢献度に応じて報奨金を出すと仰せだ」


「本気だな」


 もしマジネ山脈に住み着いたのが、本物のマグマバジリスクだった場合、数千人、いや数万人規模の軍勢が必要になるだろう。


 伝説級の魔獣に普通の剣や槍や弓は通用しない。大型の攻城用の武器や、魔力を帯びた武器が必要になる。


 攻城用兵器を運ぶにも使うにも人手が必要だし、それを守る兵士も一人でも多くいる。


 マジネ河沿いの街や村をたどっていけば、かなりの人数を集めることができるだろう。


 なにせ大陸で一番長い川だから、その流域に居住している人間はかなりいる。


 問題は、居住エリアが細長すぎるため、人集めをするだけで何カ月もかかるということだ。


 その間に河の水は完全に干上がってしまうだろう。そうなれば、もう戦うどころではなくなってしまう。





「あんた達も、ぜひ参加をしてくれ」


 伝令の兵士がキャラバンのリーダー達に向けてそう言った。


「今のままでは、旅を続けられないだろう?」


「それはそうだが」


 確かに、キャラバンは盗賊の襲撃に備えて皆武装をしている。さらに言うと、半数は戦闘のプロである傭兵だ。


 しかし、彼等はあくまでも護衛である。


 もしここでマグマバジリスク討伐に参加をして、死傷者が出れば、灼熱のスカルト砂漠の残り半分の旅が難しくなるだろう。


 しかし、ここで補給を受けることができなければ、そもそも旅を続けることすらできなくなる。


「無理強いはできないが」


 炎のワーム・マグマバジリスクは、たまに人里に出てくる雑魚魔獣とはレベルが違う。


 軍勢でも勝てない可能性すらあるのだ。

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